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行政のためのサステイナブル参加型デザイン

私は労働組合の専門家です。すみません、間違えました。労働組合のいちフルタイムワーカーです。いわゆる労働組合専従です。

労働組合には職場をより良くするための活動として「職場改善活動」というものがあります。この職場改善活動は、職場の雰囲気や職場環境の改善を会社や管理職任せにするのではなく、組合員、すなわち実際に現場にいる人がその職場をより良くするために考え、実行する活動です。また必要に応じて管理職に情報を共有して改善の協力を仰ぎます。色々予算の制限や経営の方針もありながら、全員が納得する形で終わらせることができる現場をいくつも見てきましたし、自分は各職場の職場改善活動のサポートを何十もやってきました。そういう意味ではこの職場改善活動に関しては専門家と言えます。プロフェッショナルです。

一方で、少し話は変わりますが、先日行政のパブリック・コメント制度で、市の自転車活用推進計画について意見をしました。その回答がまぁ一般的な内容しか書いていなくて。でも、これって私にも問題はあると思うんです。私がこの自転車活用推進計画をまず読み込みが甘いですし、意見もちょっとぼやっとしている部分もあるんです。行政も行政で、この回答で納得するぐらいだったら、わざわざパブリック・コメントを出さないよ!ってことです。

この自分の「職場改善活動でうまくいっていること」、「行政とのやり取り」のギャップに違和感を覚えたというのが、このnoteを書こうと思ったきっかけです。

実は職場改善活動はもとよりあった活動でしたが、題名にもあるように「参加型デザイン」という手法に沿って、私がこの一年間、緻密に設計してきました。その結果、かなり改善の精度が上がっています。じゃあ自分が磨いてきた参加型デザインを行政に適応できないかなと思うんです。

参加型デザインとは

参加型デザインとは、デザインプロセスに非専門家であるユーザを始めとした多様な利害関係者を巻き込むデザイン手法のことを指します。デザインを主導するデザイナーとユーザ、メタデザイナーで説明されます。メタデザイナーはデザイナーが活動をしやすいように支える存在で、私がその役割になります。

デザイン基礎から、参加型デザインの詳しい内容まではぜひ下記noteを参照ください。(長文なので、参照するような感じで読んでもらえれば、と思います。)

簡単にサマリーしておきます。

この参加型デザインは70年代にスカンディナビアで勃興した労働組合と経営層の間の関係調整を目指す研究に端を発しています。参加型デザインは様々な分野への応用がなされ、その関与の強弱はあるものの、その根幹には、優れたデザインをもたらすだけでなく、デザインプロセスに非専門家を包括することによって、より多様な視点からデザインを検討することにあります。

パブリック・コメントも参加型デザインの一種ではあるとは思うのですが、上記で言ったようにいくつか問題があります。
①ユーザにフィードバックされるのはコメントのみ
②その先どのようにコメントが活かされるかわからない
③そもそも自分の意見が十分だったのかわからない
④もう少し突っ込んで聞くにしても自分の意見に価値があるかわからない

一方で、職場改善活動では、下記のようにデザインを見直してきました。つまりメタデザイナーとして愚直に一年間活動してきました。

サーキュラーにして、その回転にぎこちない部分を見直した"サステイナブル参加型デザイン"

今までの職場改善はなんとなくリニアというか、毎回毎回一年ごとに頑張っている感じでした。アンケートに始まりミーティングをする。

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まさにパブリック・コメントと同じ形です。パブリック・コメントの場合、すでに方針があるものから照らし合わせて回答されることが多いので、関係部署のミーティングをしてから本当に回答してくれているかについては少しハテナがつく場合もあるかなと言うことで(?)をつけています。

この形をとっている限り、始まりのアンケートの段階で、前回の情報が全く繋がりません。そのため、毎回情報がはっきりしないまま発言することになります。職場改善活動は1年のゆっくりしたループなのでもう去年のことなど普通は覚えておりません。本来ユーザは「自身の経験の専門家」(experts of their experience)でなくてはなりませんが、このぼやっと始まって、ぼやっと終わることではになりうることはありません。

※「自身の経験の専門家」(experts of their experience)については前出のnoteを参照のこと。

ということでこの取組みをサーキュラーにしました。ちゃんと同じプロセスを前回と今回をつなげるということをしました。今サーキュラーエコノミーが注目を集めていますが、これはエネルギーやマテリアルが循環すれば、安定的に持続可能になるからです。つまりサステイナブルにするためです。この職場改善活動も同じ。サーキュラーにすることで活動の持続可能性が高まります。

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しかし、もともとリニアなものをぐいっと円にしたわけですから、最初はガタガタです。というか四角です。プロセス間の繋がりも悪いです。そこで7つの施策を実行して、きれいなサーキュラープロセスになるように調整していきました。

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1.職場デザイナー間のスケジュール統一
2.職場
デザイナーのチームビルディングと相互の意見交換促進
3.
ミーティングに向けた意見整理テンプレート準備
4.管理職の対応事項の確実な整理
5.ユーザへのフィードバック徹底
5.デザイナー職場改善結果共有会
6.
ユーザへの課題感の埋め込み
7.
各プロセスで意味や仕組みの説明(デザイナー、ユーザ、管理職)

これら施策と各ステップでの細かく・多様なテクニックのおかげで、各職場デザイナーの職場改善をバンドルし、きれいなサーキュラーデザインとなり、デザイナー、ユーザ、管理職すべての満足感が向上しました。そして仕組みができてきたので、来年は私がガチャガチャやらずとも回ると思います。

行政がこの労働組合で培った"サステイナブル参加型デザイン"を適用すれば、行政の関係人口増加にも一役買えると思います。特に行政には短期と長期をバランス良く調和させる必要性があり、この継続性を生み出せる"サステイナブル参加型デザイン"が、今後の行政のサステイナビリティと親和性が高いと思います。

デジタル庁が立ち上がりましたが、DXはあくまでいちツールです。国民、市民に対する行政の透明性を高めるだけでなく、参加をデザインしていくことが必要だと思います。皆さんには、もう少し上位の参加型デザインに目を向けて、その実現のためのDXだということを理解していただきたいなと思います。そこまで構想していないと思いますが。DXで情報開示ができるでしょう。DXでより参加を身近にできるでしょう。それはこの参加型デザインを作るための前段だと思います。

欧米、特にスカンディナビアはその伝統が1970年代からありますから、もうそのレベルに達する日も近いのではと思います。

日本の次の時代はもうすぐそこかもしれません。



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