【徒然草】奥山に猫またといふものありて(第八十九段)
【現代語訳】
山奥に猫又というものがいて人を食らうのだそうだ、と誰かが言うと、「山でなくこの辺りでも、猫は年月を経ると猫又になって人を襲うことがあると聞く」と話す人がいた。
何阿弥陀仏とかいう連歌をする法師で、行願寺の辺りに住む人が聞いていて、一人で歩く時には気を付けようと思っていた。
そんな折に、ある場所で夜遅くまで連歌をして一人で帰ってきた。小川のそばで、噂に聞いた猫又が一目散に足元へかけ寄ってきた。そのまま飛びついて、首のあたりに食いつこうとする。恐れおののいて防ごう