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【徒然草】いづくにもあれ(第十五段)

【現代語訳】

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どこであれ、しばらく旅に出るのは目が覚める気持ちがする。周囲やあちこちを見て歩き、田舎びたところや山里などは、まったく見慣れないことばかりが多い。都へ手紙を出し「これとあれを忘れずに」などと書いてやるのもおもしろい。
そうして旅先では、あらゆるものに気が向くようになる。持ちものなども、良いものはさらに良く見える。才能ある人や美しい人も、普段以上に魅力的に見える。
寺や神社などにこっそりと籠るのもいい。

【意訳】

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旅はいい。行き先がどこであっても、ちょっとした旅に出ると目の覚めるような、新鮮な気持ちになる。
出かけた先々で、あちこちを気ままに見て歩く。田舎や山里などは特に、見知らぬことばかりだ。
そうしたところから都へ残してきた家族へ手紙を出して「これを忘れずに、あれをひとつよしなに、都合の良い時に」などと事細かに書いてよこすのも良いものである。
旅先では、普段以上にあらゆる感覚が研ぎ澄まされる。人の持ちものなども、良いものはさらに良く見えるものだ。才能ある人や見目麗しい人は、いつも以上に素敵に見えてくる。
お忍びで寺や神社にこもって祈願をするなんていうのも、なかなか乙なものである。

【雑感】

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コロナ禍で、なかなか自由に旅に出られない世界になりました。遠出するのに人目が気になることもあるし、海外旅行なんて行けるのはいつなのだろうかと暗い気持ちになったりもします。

そんな今こそ、この徒然草 第十五段。旅の楽しみを語る段です。旅行の楽しさをきわめて肯定的に、そして大げさでなく語る兼好。筆の運びがとても自然で明るくて、読んでいて気持ちが良い文章です。

コロナ禍が落ち着いたら、うんと遠くへ行きたい。そんな気持ちを新たにします。

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