モテたい自分
いやー、モテたい。
イケメンに、モテたいのである。
急に肌寒くなった土曜日の昼間、私は近所で長崎ちゃんぽんをずるずると食べていた。ふと顔を上げると、店内の装飾が目についた。いや、もはや鼻についた。
そうかいそうかい、もうクリスマスですかい。
私は今、近所用の手抜きメイクをし、ジーパンに黒いフーディ、その上に深緑のウルトラライトダウンを着ている。植松さん風に言うと、「おブス〜〜!!」なファッションである。
この状況で「いやー、イケメンにモテたいなー」なんて思う私を、脳内で深キョンが鼻で笑う。くぅっ・・・!!!こっちを見るなぁッ・・・!!!
家路、心の涙を拭った私は、買い物に出かけることにした。
「クリスマスまでに、彼氏を作る」。
この使い古されたテーマを掲げ、私は今から、買い物にゆくのである。モテるために。
電車に乗り、有楽町に着いた。
マルイに入る。たくさんのお店を、チャキチャキと回る。
ほぅ、アイスブルーのニットかぁ。モテそう。宮田聡子ちゃん、可愛いなー。
へぇ、このブーツ、ヒールあるけど履きやすそうだな。
全身花柄はちょっとやり過ぎだけど、スカートだけなら、意外にいけるかも。こじはる、可愛いし。
ちょっと待って、このパールのネイル、可愛いじゃん・・・!買い!!!
なかなか可愛いもの、買えたんじゃない?
心が「ルン♪」という音を立てているのを聞きながら、家に帰る。
いつもより早めに、お風呂に入る。
PLAZAで買ったボディクリームを塗り、フェイスパックを貼る。
肌がプルプルになるのを待っている間に、買ってきたネイルを塗る。ベースも、トップコートも、いつもより丁寧に塗ってみる。
うん、可愛い。なかなかに、可愛い手をしてる。
気づけばお肌も、いつもよりモチモチとしている。
ソファに転がりながら、思う。明日は、日曜日だ。今日買ったお洋服を着て、出かけよう。
予定は・・・・・・・・・ない。
そうか、と思う。
「モテたい」って、誰にモテたかったんだろうか。
「イケメン」って、誰だ。
たぶん、自分にモテたかったんだな。
自分で自分のこと、「なかなか可愛いじゃん、やるじゃん」って、思いたかったんだな。
「モテ」は、異性に媚びることに価値があるんじゃない。自分を爆上げできるところに、意味がある。
今年の冬は、自分史上最強に、モテる冬にするぞ。
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