【小説】恋の幻想

嫌な時間は慣れるとか人が言うのを聞いた、自分もいつかなれるんだと思っていた。

行為を天井から見つめる自分は悲し気に見つめている、これがいつまで続くんだろう。

終わりが来そうにない時間と抜け殻の毎日を家族と定義される人たちと過ごしていた。

家族って何だろう、何時もそう考えて、自分の中に有る記憶を探っても、それは心で繋がっている物とは思えなかった。

学校に行くと話しをする時間がある、殆どの子供は家族に話をする、子供の世界は家族と学校で出来ているからだ。

「ねえ、忍のお父さんやお母さんってどんな人なの?私にばっかり言わせて無いで言ってよね。」その言葉は自分を戸惑わせる。

私の父や母と云う名前の女は、どんな人間なんだろう、判断できるほど言葉を交わさない、食べ物を食べさせてくれるとか服が小さくなったら仕方なく買ってくれる存在と言っていいんだろうか。

それとも、あの女は兄に生贄を捧げるために、家に居て出て行かない様に見張っている看守なのだろうか。

疑問を払拭するには聞くのが一番だ、私は学校で聞いてみる事にした、家人には解らない様に、内緒で。

「ねえ、弘子のお父さんやお母さんってどんな人なの?」聞かれたことをそのまま返すのは変だとは思っていなかった。

私は答えるのが困難で、彼女はいつも家族の話をしていたからだ、何ぞやが理解できている筈。

「さっき私が聞いたんじゃん、私のお父さんはあまり話さないけど、偶に遊びに連れて行ってくれたりして優しいよ、お母さんはいつも五月蝿く怒っているけど、お菓子作ってくれたり、ご飯も美味しいの作ってくれたりして、いいお母さんだよ。」やはり彼女には家族の定義が有った。

食べ物が美味しいのなら、スーパーの総菜でも美味しいだろうし、お菓子もスーパーで買える、お父さんが遊びに連れて行ってくれるって何処に行くのだろう。」疑問は有ったが、私にも親の定義が出来た。

親は先ずは食べ物を食べさせてくれる人だ、美味しい食べ物を与えてくれるなら親と考えてよい。

自分の周りは一応食べ物は食べさせてくれる、美味しいかどうかの評価は人によって違うから、そこは良いとしよう。

優しいかなんて判断基準が解らないものはどうでも良いんだ、まだ子供で自分を持って居ない時期の私はそう思っていた。

只、その家族と言われる一緒に住んでいる人間の中に、獣が一匹混じっていて、母と云う名の女はその獣を、私よりも大事にして可愛がっているのだけが頭に張り付いていた。

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