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【小説】恋の幻想

裕子はふふんと言った顔をしてこっちを見ている、解って貰えると思っているのだ。

「あのね、良平とは婚約破棄したけど、私はまだ繋がっているんだよね、良平が良い人と結ばれるの見守りたいんだ。」誰にも理解できない理屈だ。

「俺そんなに頼りなくないだろ、自分で出来るさ。」と答える、ずっと一緒に居る前提なのかな。

「そうかもしれない、でも私は見ていたいんだよね、良い人過ぎるから。」自分が親だと思っている様だ。

「大丈夫です、良平さんはしっかりしているでしょ、裕子さんが心配しなくても。」おっとりと忍が口に出す。

「忍ちゃんが良い子だって思ってるけど、人間は解らないからね、私が必要なんだよ。」忍は首を傾げている。

「本当に何で婚約破棄しちゃったんですか?相手の事を思っているのに。」誰もが疑問に思うところだ。

「良平は私の親族みたいなものなんだよ、だから結婚には向いていないんだ、だけど親族だから心配になる、それがここに来る理由なんだよ。」理由に成っていないけど。

「嘘つけ、男と上手くいかなくなったら、ここに来るくせに。」優しい声音で話してみる。

「確かに他の人と付き合って居る時期は来ないけど、気にしてるのは本当だよ。」こちらも優しい。

「仲いいんですね、また付き合ったりして。」忍が諦めたようにこちらを見ている。

「だからー、そんなんじゃ駄目なんだって、そんな風に諦めてしまえるんだったら止めてしまいなよ、本当に好きだったらそんなこと言わないでしょ。」賛成しているのか反対しているのか解らない言葉が出てくる。

「恋愛ってさ、好きだったら突き進んでいく気持ちなんだよ、覚悟ある?って言ってんのはそういう話、拾って貰ったから好きに成るって、猫じゃ無いんだから。」言い放つ。

「拾われたから好きに為ったんじゃないですよ、こんな穏やかな人知らなかったから、好きに為ったんです、それじゃ駄目なんですか?」忍が珍しく大きな声だ。

「分かった、私時々来るからね、本気を見せてよね。」裕子も負けてない。

「俺の意見は如何なの?俺は裕子とは付き合う気無いし、忍は大事にしたいと思っている、裕子は親族でも無いしね。」これを言っていなかったのは、自分の罪なのかも知れない、ぼんやりとそう思う。

「親族では無いけど、他人よりは近いんだよ、私はそう思っている。」裕子はまだ言っている。

俺と忍は呆れた顔をして、二人で裕子を見る、裕子はこれが普通とばかりに俺たちを見ている。


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