さつきち

東京大学4年生。映画とムーミンについてちまちまと考えるのが好きです。

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軽妙な逸脱|『LETO』(キリル・セレブレンニコフ,2018)

ヴィクトル・ツォイを初めて目にしたのは、映画『ASSA』(セルゲイ・ソロヴィヨフ,1987)だった。エンディングで「変革を待っている(Мы ждем перемен.)」と…

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3年前
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Greenからのリスタート|映画ログ『Daughters』(津田肇, 2020)

親友という関係は、実に曖昧で、意外と緊張する。「境界」を超えてしまったのではないかと、ドキリとすることが度々ある。 親友、ベストフレンド、マブダチ。これの肩書き…

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3年前
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エゴが希望を紡ぐ。|映画ログ『うつくしいひと/サバ?』(行定勲, 2016/2018)

望郷の念というのは、侘しいエゴである。自分を中心に回っていた世界がまだそこにあると、あって欲しいと、切に願うことである。 行定監督、高良健吾、橋本愛、姜尚中…熊…

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3年前
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"understand"を諦めた先に|映画ログ『名もなき生涯』(テレンス・マリック, 2019)

映画について語る時、大学で聞きかじった映画理論を小賢しくも使ってみたくなる。この構図はこんなモチーフだとか、精神分析学的にはこんな無意識下を表現しているだとか……

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3年前
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春よ、来い。 |映画ログ『四月物語』(岩井俊二、1998)

時は、一年を通して変わらず流れているのに、 四月になると、人は楔を打って、変わろうとする。 お尻がムズムズする忙しさと、時の手綱が波打つ高揚感。 そんな日本の四月…

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3年前
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中学3年生、ムーミンとの出会い

『ムーミン、好きなんです。』 そう言うと、ちょっと年配の人は「私、カルピスこども名作劇場の世代なのよ」と小鼻を広げ、ちょっと若めの人は「だからスマホケースがミイ…

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4年前
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軽妙な逸脱|『LETO』(キリル・セレブレンニコフ,2018)

軽妙な逸脱|『LETO』(キリル・セレブレンニコフ,2018)

ヴィクトル・ツォイを初めて目にしたのは、映画『ASSA』(セルゲイ・ソロヴィヨフ,1987)だった。エンディングで「変革を待っている(Мы ждем перемен.)」とマイクを握る姿が文化的革命の寵児そのものに見えて、大学二年生のウブな私はころりと惚れてしまった。

『ASSA』に感化されていた私は、もちろん熱を帯びた眼差しで『LETO』を見たのだが、良い意味で腰が抜けた。ツォイ含めるロッカー

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Greenからのリスタート|映画ログ『Daughters』(津田肇, 2020)

Greenからのリスタート|映画ログ『Daughters』(津田肇, 2020)

親友という関係は、実に曖昧で、意外と緊張する。「境界」を超えてしまったのではないかと、ドキリとすることが度々ある。

親友、ベストフレンド、マブダチ。これの肩書きは、曖昧な関係を「仮置き」できるから本当に便利だ。だけど、この枠組みは、ほんの些細なきっかけでヒョイっと超えられてしまう。

小春(三吉彩花)と彩乃(阿部純子)のルームメイトという関係も、「境界」を溶かしながら少しずつ変わっていく。仲睦ま

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エゴが希望を紡ぐ。|映画ログ『うつくしいひと/サバ?』(行定勲, 2016/2018)

エゴが希望を紡ぐ。|映画ログ『うつくしいひと/サバ?』(行定勲, 2016/2018)

望郷の念というのは、侘しいエゴである。自分を中心に回っていた世界がまだそこにあると、あって欲しいと、切に願うことである。

行定監督、高良健吾、橋本愛、姜尚中…熊本ゆかりのメンバーが熊本の地で撮影した短編映画『うつくしいひと』(2016)『うつくしいひと サバ?』(2016)を見ながら、妙に腑に落ちてしまった。

誰もが誰か/何かの「亡霊」
18年間を過ごした熊本から上京し4年が経とうとしているが

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"understand"を諦めた先に|映画ログ『名もなき生涯』(テレンス・マリック, 2019)

"understand"を諦めた先に|映画ログ『名もなき生涯』(テレンス・マリック, 2019)

映画について語る時、大学で聞きかじった映画理論を小賢しくも使ってみたくなる。この構図はこんなモチーフだとか、精神分析学的にはこんな無意識下を表現しているだとか…

そんな小賢しくちっぽけな私をすっぽりと包むほどに、この映画は「大きな」経験であった。

『祈り』のさざめき本作は、実在したオーストリアの農夫であるフランツ・イェーガーシュテッターの物語である。第二次世界大戦下、ドイツに併合されたオースト

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春よ、来い。 |映画ログ『四月物語』(岩井俊二、1998)

春よ、来い。 |映画ログ『四月物語』(岩井俊二、1998)

時は、一年を通して変わらず流れているのに、
四月になると、人は楔を打って、変わろうとする。

お尻がムズムズする忙しさと、時の手綱が波打つ高揚感。
そんな日本の四月を味うには、この一本だと思う。

初主演を務めた松たか子の瑞瑞しさもさることながら、オープニングのクレジットタイトル直後のシーンに心奪われる。

霞むほどに降りしきる桜の幕から現れるのは、
おごぞかにタクシーに乗り込む花嫁一家。
あたふ

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中学3年生、ムーミンとの出会い

中学3年生、ムーミンとの出会い

『ムーミン、好きなんです。』

そう言うと、ちょっと年配の人は「私、カルピスこども名作劇場の世代なのよ」と小鼻を広げ、ちょっと若めの人は「だからスマホケースがミイなんですね」とオタク心をくすぐってくれる。

ほんとうは『どうしてムーミンが好きなのかというと…』と続けたいのだけど、ちょっとした立ち話では到底足りない。だから、じっくりと、言葉を紡ために、このnoteを立ち上げた。

これから読む人にお

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