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売れる本は具体と抽象のチューニングがうまい
先日、ある方とお話ししていて、
「なるほど、売れるコンテンツはこれがうまくできているんだな!」
「私も本をつくるときにこれをすごーく考えて微調整しているつもりなんだけど難しいんだよね〜」
と改めて認識したことがあるので、今回はそのお話をしますね。
キーとなる「具体」と「抽象」
![](https://assets.st-note.com/img/1717388611000-gYIuDnOzYz.jpg?width=1200)
私たち人間が動物と大きく違うのは、言葉を操れることです。
言葉は、抽象概念の最たるもの。たとえば「愛」「夢」「心」。
これらはたった一文字にもかかわらず、人や場面によってさまざまな解釈ができる言葉ですよね。
それだけ抽象度が高いということです。
細谷功さん著の『「具体⇄抽象」トレーニング』(PHP研究所)という本では、人間の知的能力をピラミッドで表現しています。
底辺にあたる「横軸」は、長くなればなるほど知識や情報の量的拡大を意味します。
一方「縦軸」は、上にいく(↑)につれて抽象度が上がり、下にいく(↓)につれて具体化されることを意味します。
どうでしょう。頭の中に「具体と抽象のピラミッド」を描けたでしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1717390920431-S3d58VIygo.jpg?width=1200)
上記の例でいうと、「抽象度が上がる」というのは、「ゴールデンレトリバー」から「犬」、「犬」から「哺乳類」へと、上位概念のカテゴリーへ移行することです。
抽象度が上がるにつれて、包含する情報が増えます。
私たち人間も「哺乳類」であり、「生物」なので、抽象度を上げると、「ゴールデンレトリバー」と同じフォルダに入るということですね。
上位概念になればなるほど、含まれる情報が増えるので、個別情報の輪郭がどんどんぼやけていきます。
でも、抽象化した1つのまとまりとして全体の性質や特徴を捉えたほうが、法則を見出したり、問題解決の方法を考えたりするときには効率的です。
たとえば、企業を建て直すときは、個別の支店ごとに対策するよりもエリアごとの支店、全支店と、範囲を拡大して考えたほうが、抜本的な対策を講じやすいはずです(たぶん、ちょっと想像で書いています)。
反対に抽象度を下げていくことによって、物事はどんどん具体化していきますし、問題解決の方法もより具体的なものになります。
本を書ける人は抽象度が高い
![](https://assets.st-note.com/img/1717391179441-mSHOaOrdID.jpg?width=1200)
タイトルと導入にあった「売れる本」の話からちょっと遠ざかりましたが、ここからが本題です。
編集者が探している「売れる本を書ける人」とは、
自身の専門分野において豊富な知識や経験を持ち、それをもとにした独自の考え、哲学を持っている人
です(ビジネス書や自己啓発書、子育て本など一般書の場合)。
自身の知識、経験、事例を抽象化し、「◯◯とは××である」と言える人。
抽象化されたそのメッセージは、今まで見たことも聞いたこともないのに、なぜか「本質を捉えている」と感じられる、そんな人。
つまり、その人がどれくらい高い抽象度で物事を捉えているかがポイントになります。
先ほど挙げた参考書籍、『「具体⇄抽象」トレーニング』に書いてありますが、抽象度が高いところから見ている人の景色は、下にいる人からは見えません。
しかし、抽象度の高い世界にいる人は、具体の世界までしっかり見えています。
そういう人だからこそ、本が書けるわけですね。
本をつくるときに、著者さんと編集者が一緒に取り組むべき最も重要で最も難しい仕事が
☑️その本で伝えるメッセージの抽象度のチューニング
☑️それをどこまで具体化するかのチューニング
だと私は思っています。
「その本で伝えるメッセージの抽象度のチューニング」は、企画を考える際にある程度確定しています。
でも、それをどう定義し、どういう言葉で説明するかは、つくりながら一緒に考えていくことが多いです(同時に抽象度も調整する)。
特に「どういう言葉を使うか」はとても重要です。
本のタイトルにも関わってきます。
「どこまで具体化するかのチューニング」は、具体と抽象のピラミッドでいうと、抽象度のトップである頂点から、どのあたりまで下に下ろすか、つまり「どこまで具体化するか」ということですね。
この調整がうまくいかないと、読んだ人から「わかりにくかった」「腑に落ちなかった」という感想をいただくことになります(もちろん全員からではありませんが)。
この場合、抽象度のレベルが高い位置のまま終始してしまい、多くの人にとって「腹落ちしないコンテンツ」になってしまったということです。
ピラミッドの頂点から、読者の目線の高さまで具体化することができなかった、ということ。
専門書であればそれもありですが、「売れる」が正義の一般書籍では、多くの読者が「わかった!」と腹落ちできるまでの具体化が求められるわけです。
情報にもエネルギーがある
![](https://assets.st-note.com/img/1717392623147-pUHqIQaw0m.jpg?width=1200)
物体には位置エネルギーがあります。
高い位置にあるものほど、物体は大きなエネルギーを持ちます。
2階から物を落とすより、20階から落としたほうがその物体が持つエネルギーは大きくなりますよね。
それは、本などのコンテンツも同様だ、というお話を聞いたとき、「なるほど、そうか!」と腹落ちしました。
つまり、抽象度の高いものを読者にとって見えるか見えないかの位置までうまくチューニングすることができたコンテンツは売れる(エネルギーが高い)。
抽象度が高いまま終始しているコンテンツ、抽象度がそもそも高くないものを具体化しているコンテンツ、つまり「具体と抽象の段差」が小さいコンテンツは売れにくい(エネルギーが低い)。
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その本やコンテンツがどれだけ高い抽象度を潜在的に持っているか。
受け取る人の目線ギリギリか、ちょっと上のところまで抽象度をうまく落として、具体的に伝えることができているか。
この「具体と抽象の段差」が大きければ大きいほど、売れるコンテンツになる。
企業や人のコンテンツも抽象度をうまくチューニングして提示することができると、ブランディングがうまくいく。
しかし、この具体と抽象のチューニング、恐ろしいほど難しいんですよね……。
私にとって永遠の課題です。
それこそ今回のnoteがかなり抽象的な話になってしまったので、「よくわからん!」という感想をお持ちになった方も多いかもしれません。
抽象的な話をわかりやすく伝えるのって本当に難しいですね……。
具体と抽象について、より詳しく知りたい方は、今回大いに参考にさせていただいたこちらの本(↓)をぜひ読んでみてください。
編集思考の実践的な教科書としておすすめです!
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