『創造的な習慣』林 尚志 後篇
OKAZU brand を2007年に立ち上げて以来、日本のアナログゲームシーンを引っ張ってこられた林尚志(はやし・ひさし)さんは、いまや海外の出版社からも数多くのゲームをリリースされている日本を代表するアナログゲームデザイナーです。
主な作品リスト
『ひも電』『EKIDEN』『Trick of the Rails』 『Trains』『デカスロン』 『セイルトゥインディア』『ISARIBI/漁火』『Rolling Japan』『ミネルウァ』『ゴー・ダッ・チーズ』『はんか通骨董市』『横濱紳商伝』『ジャングリラ』他多数
優れた作品を創作し続けているアナログゲームのデザイナーに対して、Saashi & Saashi が定型的な質問を用意し、それに回答してもらうという、このインタビュー企画『創造的な習慣〜アナログゲームデザイナーはいかにしてクリエイトするのか』においてまず初めにお話をお伺いしたかったのが林尚志さんでした。
緻密に練りこまれた大きなスケールのボードゲームから、遊び心に溢れた小さなゲームまでを手掛けるそのクリエイティヴィティは、林さんのどういったところから生み出されているのか。ロングインタビュー記事の後篇をお届けします。(前篇、中篇はこちら)
ディベロップ
── 数学的な計算を立ててゲームデザインをなさいますか。それとも経験や感性に頼りますか。
林 数学的な計算はしていますね。ぼくはゲームを作る時に、まず数式から考えるので、カード効果を変えるとしたらその数式から調整し直さないといけないということがあります。最近は、大きなサイズのゲームを作る時は、評価式をゲームごとに毎回作ってるんですよ。「これと、あれと、それを組み合わせて、こうすると評価ポイントが何ポイントだから」とか考えていくんです。
── ひとつのカード効果の数値を大幅に変更しようとなると大変そうですね。
林 ある数値がちょっと強いからといって根本から変えようとすると、数式まで全部変えなきゃいけない‥‥ということはありえますね。
── プログラマーのお話みたいですね。でも逆に、数式に則っている限りは、調整が簡単になるという利点もあるわけですよね。
林 そうです。たとえば『横濱紳商伝』だったら、注文書のカードをもっと増やして欲しいというリクエストがあれば、わりと簡単にすぐ作れますよ。
── 数式を作る作業はものすごく大変に思いますが。
林 数式を作りあげるまでの「チューニング」が大変なんですよ。実は数式から作る方法は『ミネルウァ』からやり始めたことなんです。
── もともと数学系の脳で考えていらっしゃった林さんが本格的に数式を導入なさったのが『ミネルウァ』からだったというのは逆に意外ですね。
林 それまでは結構感覚でやってました。たぶんそこまで大きなスケールのゲームではなかったので、感覚だけでも作れていたんでしょうね。ただ『ミネルウァ』くらいのスケールになってくると感覚だけ乗り切るのはちょっときつくなってきたので「評価式を作らなきゃダメだな」となったんです。
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