『創造的な習慣』カナイセイジ 中篇
カナイセイジさん(カナイ製作所)は、日本のアナログゲームシーンにおいて長く活躍され、いまや世界中でその作品が多くのファンに楽しまれています。長きに渡る製作活動によって得られた経験と、真似のできない鋭いセンスを掛け合わせた作品を得意とするアナログゲームデザイナーです。
主な作品リスト
『いばらの姫と4人の騎士』『イカサマージ!』『Chronicle』『RR』『舞星』 『大商人』 『成敗』 『ラブレター』 『Lost Legacy』『Gods' Gambit』『シノビアーツ』『Eight Epics』『ウニコルヌスの騎士たち(共作)』『文絵のために』他多数
優れた作品を創作し続けているアナログゲームのデザイナーに対して、Saashi & Saashi が定型的な質問を用意し、それに回答してもらうという、このインタビュー企画『創造的な習慣〜アナログゲームデザイナーはいかにしてクリエイトするのか』。
センスと経験とに裏打ちされたカナイさんの豊富な知見は、日本のアナログゲームシーンにとってのひとつの財産だと思いますし、また日本を代表するデザイナーとなった彼の日常的なクリエイトから垣間見える創作への取り組み方や考え方は、作品を外から見るだけではわからない多角的な奥深さを提供してくれることでしょう。ロングインタビューを敢行してまとめた全記事を三分割し、中篇をここにお届けします。(前篇、後篇はこちら)
ストック
── いますぐにテストプレイに漕ぎつけられる新しいゲームアイデアというのは、どのくらいの数あるのでしょうか。
カナイ いますぐにテストプレイにこぎつけられる‥‥、期間としての「いますぐ」というのがどのくらいの幅かにもよりますけど。テストキットのカードリストまで仕上がっているという話になると、ぼくの場合はストックはゼロですね。
── たとえば、ある期日までに新しいゲームを作ってくださいと言われたら、その要請がきっかけとなって、ゲームアイデアたちが動き出して固まっていくという感じなのですか。
カナイ むしろ、逆ですね。アイデアはいろいろあるんだけど、あと2週間でなにがしかのものを見せなければならないとなったら、もうその2週間で仕上げる。と言うか、ぼくの場合は、完成度70%のアイデアをたくさんストックしてあるというよりは、15%くらいのものをストックしてある感じなんですよ。それを期限に応じて、急速的に成長させるみたいな。
── なるほど、完全なストックゼロなのではなくて、まだ花や実は成っていないけれど、すぐに育つ可能性のある球根のような状態のアイデアがストックされてあるんですね。では一度お蔵入りして放置しているアイデアが後で活きることはありますか。
カナイ なにかの機会があった時に、たとえばパブリッシャーの関係者などに見せたいなと思うような時ならありますよ。
── そういう場合に見せるものというのは、以前に作って置いてあったものをそのまま見せるわけですか。
カナイ これはあんまり言いづらい話なのかもしれないんですが、以前ある筋から作ってと言われて、作ったんだけど結果ダメになったものなんかが、いくつかあるわけです。だから、そういうものはいつでも出せる状態で置いてますよね。
── それは単体のゲームとしては、ちゃんとした内容のものに仕上がっているわけですね。
カナイ そうです。なので、さっきはストックしているアイデアはだいたい完成度15%くらいと言いましたけど、そういった理由で過去にポシャったゲームなんかは、いくつかストックとしてはあります。
── なるほど。カナイさんの場合は、15%のアイデアの根か、ほぼ100%に近い形のゲームがストックされてあるということなんですね。
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