ササガキ

広告系デジタル制作プロダクション・やっかみおじさん

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  • 感想

    bookレビューなど

  • Small talk

    どこかで外向けにしゃべった内容のまとめ。

  • neta

    いい意味で時間の無駄。

  • 思考

    毒にも薬にもならない

最近の記事

【感想】黄色い家

良い悪いの前に、自分の中にバチッとはまってしまう小説だった。 たまにこういう事があるから油断ならない。 いや自分はおっさんで、10代の女の子とはかけ離れた存在なんだけど。 そこは御免だけど。 だって物語の最初の場所が1999年の、東村山の崩れかけの古い文化住宅なんだ。 その情緒感をよく知ってる。大体どのあたりにあるのかも分かる。 自分も幼少期そのあたりで過ごしたから。 そこで、ネグレクト気味の片親のもと、食うや食わずでほとんど何の文化にも触れずに育ち、高校も中退し、年齢を

    • 【感想】東京都同情塔

      生成AIが使われたことで話題の芥川賞受賞作。 しかしこれは感想むずいなー。結構ファンタジーというか。存在しない人たちの存在しない状況下のはなしで。 人間の内面を深く描写しているかと言うと、でもこんな人はいないしな、となってしまい、自分の中にないコンテキストによって成立しているようで、疎外感が終始あった。 それなりに純文学好きなつもりなんだけど。まだまだ至らないものだなあ。 芥川賞作品が理解できないのは経験が不足しているからだ。悔しい。 こういうの読む際に意識して排除しな

      • 制作現場でよく起こる齟齬。双方に生まれる「裏切られた」という体感について。

        制作の現場にいると、全員が物事を良くしようと動いているのに、お互いに「裏切られた」と感じてしまう状況がしばしば発生する。 自分の場合はデジタル制作業界だけど。 はじめに約束したのに。何度も同じことを言ってるのに。 全然話を聞いてもらえない。蔑ろにされている。 こちらは誠意を持って対応しているのに、裏切られ続けている。 という感覚が関係者の双方に生まれてしまう状況。 これの当事者になったこともあるし、仲裁する立場になったこともあるのだけど。 主には、利害の異なるステークホ

        • 【感想】動物たちは何をしゃべっているのか?

          すごい。全ページ面白いし、人に言いたくなるような話が満載の、 鳥類研究者と霊長類研究者の対談。 シジュウカラのさえずりには文法があって、相当複雑な状況を遠くの仲間に伝えることができる。 ものの色や数などもかなり正しく認識し、伝え合っている。 ゴリラは身体言語も含めてコミュニティのための親密な対話を行っている。 ゴリラの喧嘩に勝敗はなく、弱い方に加勢が入り仲裁され、群れの和が保たれる。 一方サルの喧嘩は強い方に加勢が入ることで明確な勝敗がつき、ときに群れのボスが交代する。

        【感想】黄色い家

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          10本
        • Small talk
          6本
        • neta
          14本
        • 思考
          7本

        記事

          レコードエコノミー 履歴で変わるモノとヒトの関係・未来の経済について

          もうじき、あらゆる商品に生い立ちが記録されるようになる。 誕生から自分の手元にやってくるまで、どのような経歴をたどってきたか、商品ごとにデジタルデータとして記録されるんですって。 モノのパスポート(デジタルプロダクトパスポート / DPP)などといって、今はおもにSDGsの観点で語られることが多いのだけど。 ようは製造や流通の過程で、環境破壊や非人道的な労働を強いていないかどうかをチェックして、良くない経歴を持った商品は売っちゃダメ。というトレーサビリティの考え方が欧州を中

          レコードエコノミー 履歴で変わるモノとヒトの関係・未来の経済について

          人生の主人公を降板すること。親になること。

          そういえば、 長男が生まれる前、自治体がやってるパパママ講習(両親学級)で、 妊婦体験とか沐浴の練習とかをやったんだけど。 会の最後にパパチームママチーム5人ずつくらいに分かれてディスカッションするコーナーがあり、それぞれ子が生まれた後は育児家事をどう分担するかという話を順番にして行く感じになった。 パパはパパ同士で、それこそ膝が付くような距離で話し合う、結構真摯な空気だったと記憶している。 うちは実家が頼れないんで、なんとか夫婦でやっていくしかないんです。育児ではママが

          人生の主人公を降板すること。親になること。

          興味の作り方 あるいはアイデアの出し方

          ちょびっと、広告やデジタルクリエイティブについて 学生向けに講師の真似事みたいなことをする機会が毎年あるんですが。 ここで学生から、広告アイデアを出すために大事なことはなんですか?と 聞かれることがあって。 情報のインプットだよーと答えてるんですけど。 これ、もうちょっと言うと、 ・受動的に受け取る情報 ・能動的に取りに行く情報 の2種類がありまして。 みんなが "良いな" って思う企画を出すためには 自分もちゃんと「みんな」の一員である必要があって。 流行り物とか、

          興味の作り方 あるいはアイデアの出し方

          歯医者の解雇

          1年以上通い詰めていた行きつけの歯科医院の担当医が言うにはですね、 「私、解雇になります」とのことで。 ここへきて初めて左手上げそうになりました。 いた、いたたたた。心が痛いんですけど麻酔効いてます? ちょっ、いったんドリルで歯削るの止めません? いやあの、治療中に主治医が解雇って。そんな事ある? 開いた口が塞がらないんですけど施術中だからですかね。 あ、唾液吸引お願いします。ずぞぞぞぞ。 確か記憶によると、いま僕の口の中、全歯仮歯の状態だと思うんですけど。 思い返せ

          歯医者の解雇

          【感想】正欲

          行きつけの美容院の兄さんとね、まあ、最近どうすかみたいな話するじゃないですか。 なんか映画とか見ました?って。話題がないから毎回なるんですけど。 そんで兄さんが、「正欲」って映画、なんか話題だし見てみようかなと思って。というので。 お、今原作読んでますよー。 そうなんですね、面白いですか? あー、まだ読み始めたばっかりで、よくわからないですねー。ははは。 なんて返してたんですが。 危ねえー!これ土曜の昼下がり髪切りながらよく知らん人に勧めるような話じゃないじゃん! いや、素

          【感想】正欲

          挨拶のマウント

          あっ・・・たかっ! 高い高い!まってなにこの高さ、怖っ! っていうね。 まあー、ほんと、高くて。 意識が。 僕の意識がね、天を衝くようなんですけど。 なんだろ、 この高さから落ちたら即死だなーくらいの高度感ある。 で、まあそんな意識が最高に高まった人間が 週末することと言ったら、 それはもう、ね、ほら、当然あれですよ。 山に登ってきまして。 まあ、なんというか、ここまで意識が高まると、 自分の意識の高さと同等の標高まで上がっておかないと 高まり過ぎた意識が暴走して、

          挨拶のマウント

          【感想】自由が上演される

          とても興味がある題材で、示唆に富んだ話が多いと思うのだけど、 ちょっと自分にはハイコンテクスト過ぎたかもしれない。 この本を読むために前提として必要な知識が結構たくさんあって。 フーコーが何者かとか知っていないと意味が理解できないし、 言葉も難解で、ちょっとしんどかった。 哲学とか心理学をある程度学んだ人が読むものなのかな。 しかし演劇による教育は必要だと感じていて。 他者になりきって演じることでその人の気持ちが実感できるし、 共演者から投げかけられる台詞に対してどう感じる

          【感想】自由が上演される

          【感想】目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

          タイトルから想像する以上に、人との関わりや、人間の認知と心の挙動に深く迫ることになる素晴らしい読書体験。 目の見えない白鳥さんに言葉で説明しながらアート作品を見て回るわけだけど、白鳥さんはその作品を写実的に理解したいわけではなくて、それを見た人の認識や、それが説明していくうちに変化していくこと、得体のしれないものに向かい合う人の様子からその気配を感じることをアート鑑賞の軸においているような感じがする。 その感覚は次第に説明している方にも伝播していって、目で見ている以上の何

          【感想】目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

          【感想】自閉症の僕が跳びはねる理由

          これはもう全人類に読んでほしい、素晴らしく価値のある本。 重度の自閉症の作家、東田直樹さんが13歳のときに書いた、自らへ向けられる視線への真っ直ぐな回答。これが驚きの連続で。 障害者の人権とか多様性がどうとかいう前に、読み物として、自分の認識が崩れていく心地よさというか、知的冒険を体験させてくれる良作になっています。 もちろんそこには東田さんの苦悩の蓄積があるわけなんですが。 など。読後しばらく思い出しては考えてしまう。 自閉症という病気がどんなものであるのか、通常は当

          【感想】自閉症の僕が跳びはねる理由

          最新の宇宙理論を仏教のフレームワークで理解する

          先日、5歳の息子のために宇宙図鑑(小学館の図鑑NEO / ドラえもんのび太のびっくり宇宙DVD付き)を買ったんですけど。 これがめちゃくちゃ面白くてずっと読んじゃう。 ドラえもん良いこと言うなーって思いながら、最近はずっと宇宙のことを考えています。 宇宙が生まれる前には何があったのか、宇宙の果てには何があるのか。 重力で空間が歪むってなに?膜状の多層宇宙って?次元を越えるってどういうことなの?とか。 とにかく考えても考えても分からないことが無限にある。 ことに「次元」って

          最新の宇宙理論を仏教のフレームワークで理解する

          内覧だけずっとしていたい

          そういえば今の家を買うときに、いくつか売出し中の戸建てを内覧させてもらったんですけど。 中古ってことで、まだ人が住んでいて、 アポ取って不動産屋と一緒に上がらせてもらうやつ。 なんかあれ、ひとんち土足で上がる感すごくない?いいの?ああいうもん? もうこれほぼ内臓じゃん。パーソナルスペース0距離から臓物の内壁見てるじゃんっていう。 間取りが気になって内覧した某郊外の家とか、とてもハイテンションのおばさんが出迎えてくれて、ここの住み良さをマシンガンのように話すんだけど、部屋は

          内覧だけずっとしていたい

          行動経済学と新しいお金

          もちろんにわかなんですけど、行動経済学っていうのを少し調べると、 人間って価値を相対的に認識してるんだなと、思いますね。 その相対を測るための幅が場合によって変動するんですけど、 とにかくその外側にあるものは上手く認識できない。 一方、経済の主役である価値の記号「お金」は絶対値管理なので、 相対の認識とズレが生じる。 結果、不合理な決断が生まれてしまう。というような感じかなと思います。 時間や大きさが極端に自分の相対認識レンジから離れると、いまいちよくわからなくなる。

          行動経済学と新しいお金