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【感想】夏物語

ささやくように語られる絶叫を聞いているような。
どうしてこんな物が書けるのか。

小説家というのはいったい。自分の傷口から吹き出す鮮血を浴びながら、冷めた目でそれを見ている。そういう特殊な能力者じゃないのか。
子を産める体に産まれた人の、自分の意思にかかわらず生じる責任と、苦痛と、
きっとあるはずだけどもうひとつ信じきれない喜びの話。

男性としてこれになにか感想を持つこともおこがましいような気になるけど。

なのでとにかく、第二部から登場する作中ほとんど唯一まともに思える男性、逢沢さんに期待してしまう。
頼むよ、逢沢さん。この子駄目なの、いや駄目じゃないけど、いろいろあって、とにかく誰かの支えが必要なの、あなたしかいないのよ・・・。

しかし当然、なにもかも都合良くはいかない。
果たして生命を生み出すことは原罪なのか、祝福なのか。


いや最後、逢沢さんさあ、それじゃあさあ、あんた。それじゃ、結局さあ。
周辺のいろんなこと全部どうでもいいから、いろよ。最後の局面に。
いて、見るんだよ。自分の行動の結果を。
たのむよ。もう。

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