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【感想】動物たちは何をしゃべっているのか?

すごい。全ページ面白いし、人に言いたくなるような話が満載の、
鳥類研究者と霊長類研究者の対談。

シジュウカラのさえずりには文法があって、相当複雑な状況を遠くの仲間に伝えることができる。
ものの色や数などもかなり正しく認識し、伝え合っている。
ゴリラは身体言語も含めてコミュニティのための親密な対話を行っている。
ゴリラの喧嘩に勝敗はなく、弱い方に加勢が入り仲裁され、群れの和が保たれる。
一方サルの喧嘩は強い方に加勢が入ることで明確な勝敗がつき、ときに群れのボスが交代する。

とか!

とかくコミュニケーションは人間の得意分野と思いがちだけど、色々な動物がその身体的特徴に合わせた独自のコミュニケーションを行っており、ある部分では人間より遥かに高度な情報を、瞬時に伝える術を持っていたりする。

渡り鳥は地図もなく何万キロを正確に移動できるし、
犬は人間の一万倍もの嗅覚で世界を認識しているわけで。
彼らの間でどんなコミュニケーションが行われているか、考えるとワクワクする。
僕らが伝えられないものも伝えている可能性があるし。
少なくとも優劣で語るべきものではないんだな。

後半にはそんな人間の特性についても言及してくれていてありがたい。
これがまためちゃくちゃ面白いんだけど。

恐竜が絶滅してから、恐竜の生き残りは鳥類となり木の上を住処とした。
そして同じく木の上に住み始め、生活環境を共にした霊長類、サル。
後者は人間となり、前者はならなかった。
なぜか。

その仮説。
鳥類は飛ぶことができるので、敵が近づいたときに大きな鳴き声で警告し、逃げることができる。だがサルは、大声を出してしまうと敵に見つかり、逃げるすべがない。だから小声とジェスチャーでコミュニケーションを取ったのではないか。これが今日の言語の起源かもしれなくて―・・・という。

いや、おもしろ!!

ぜんぜん違う種類の研究者同士の対談かと思っていたら、最後にこの対比がやってくる構成の妙もある。
これまで読んできた内容の解像度が、人間に照らすことで最後にぐっと上がる感じがする。

さすが、いまをときめく「ゆる言語学ラジオ」出演編集者の仕事よ。


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