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【感想】目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

タイトルから想像する以上に、人との関わりや、人間の認知と心の挙動に深く迫ることになる素晴らしい読書体験。

目の見えない白鳥さんに言葉で説明しながらアート作品を見て回るわけだけど、白鳥さんはその作品を写実的に理解したいわけではなくて、それを見た人の認識や、それが説明していくうちに変化していくこと、得体のしれないものに向かい合う人の様子からその気配を感じることをアート鑑賞の軸においているような感じがする。

その感覚は次第に説明している方にも伝播していって、目で見ている以上の何かを共有することになる。だから白鳥さんとアートを見ることは楽しい。

というのが大筋なのだけれど、話が進むうちにやがて
見えている人が、見えていない人をどう「見てしまって」いるか。とか。
他者を理解しようとすることの傲慢さとか。
人が人と関わる事をどう捉え、振る舞うるべきなのかというかなり深い思索に導かれていく。

目の見えない白鳥さんが見ている夢が僕らには想像がつかないように、
他者の認識や心は本質的に理解できない。
人を理解できると考え、それを前提に振る舞うことは時にしずかな暴力となって相手を締め付けている事がある。
こわい。
こわいけど、人を分かりたい、自分を分かって欲しいという欲求とともにお互いをゆるやかに締め付けあっていくのが人間関係なのかもしれない。

そんなことを思ったし、
そういう中でブレずに立っている白鳥さんってすごいなあ。

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