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エッセイ

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ただのエッセイです。好きなことを好きなように。思ったことを思ったように残しています。
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2021年2月の記事一覧

始まりは終わりの始まり

※「花束みたいな恋をした」ネタバレ含むかも。支障ない方だけ読んで。

映画を観た。菅田将暉と有村架純のW主演「花束のような恋をした」だ。何となくSNSに流れてくる感想を見ると「リアルすぎる」といったものが多かったように思う。実写の日本の恋愛映画を観るとき、ぼくは限りなく現実に近いものを好む。たまにSF要素などが入ったものもあるけれど、そういうものより現実にある街が舞台のありふれた何てことのない恋愛

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言葉にならない瞬間にちゃんと言葉を充てられる人になりたい。

言葉にならない瞬間にちゃんと言葉を充てられる人になりたい。

感情のボーダーラインがあるとすれば、その線をやや下回ったところを停滞気味に泳いでいるのがぼくだ。喜びとか楽しみとかそういうポジティブな感情を表現するのが苦手。あと感動系の映画とかドラマを観ていても、涙することはほとんどない。そして怒りを人にぶつけることも苦手だ。この時点で喜怒哀楽のうち、喜と怒と哀と楽は欠如している。全部だ。感情欠落人間。

そう思っていたけれど、ちゃんと嬉しいとか楽しいと感じるこ

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ワイプで抜かれたときにちゃんとリアクションできる人になりたい。

ワイプで抜かれたときにちゃんとリアクションできる人になりたい。

夜、ボーッとバラエティ番組を観ていた。芸能人がワイプで抜かれて「すーごっ!!」と言っていた。きっと自分自身がワイプで抜かれていることに気づいて、「ちゃんとリアクションしなきゃ」と思ったのだろう。あれは、間違いなくそれ用のリアクションだった気がする。

もしぼくが芸能人でテレビ番組の収録をしていて、ワイプで抜かれたとき、同じようにちゃんとリアクションできるだろうか。内心では、「わざとらしいリアクショ

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トンカツ弁当のトンカツの下に敷かれたスパゲッティみたいな人になりたい。

トンカツ弁当のトンカツの下に敷かれたスパゲッティみたいな人になりたい。

スーパーで割引の値札が貼られたトンカツ弁当を買った。電子レンジで温め直している間に、作り置きしていた緑茶をグラスに注いだ。何も食材の入っていない冷蔵庫は、ただ時折ゴウンゴウンと音を立てては、自分の存在価値をアピールしてくる。

「ピッピッピッ」と等間隔に音が鳴る。トンカツ弁当が温まったことを電子レンジが知らせた。「熱っ」という独り言を小さく言いながら、できるだけ触れないように、爪を立てるようにして

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誰かを好きになるということ

誰かを好きになるということ

思えば、ぼくたちは、生まれてからこれまで何度誰かを好きになっただろうか。自分より好きになって、自分より大切だと思える人に何度出会えただろうか。「好き」なんていうシンプルな感情に「利害」や「損得」、さらには「嫉妬」や「不安」、「期待」といったものを混ぜ合わせては複雑化してしまう。いつの間にか誰かを好きになることを面倒に感じてしまうほど、恋愛というものに距離を取るようになった。

「もう恋なんてしない

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