カメムシ(を)レスキュー911

空気があまーく金木犀の香り、秋の訪れを感じるね。私は食欲の秋も実感中で、色んなものがおいしく食べられる! ああそれから、家ではカメムシシーズンも到来中。家族の洗濯物についてうっかり家の中に入ってしまったカメムシをレスキューするのが私の係。名付けて「カメムシレスキュー911」ナイン・ワン・ワンと読む。アメリカの救急の電話番号)。

毎年この時期、家のベランダに多く訪れるのは大型のカメムシで、どうやらキマダラカメムシのようだ。私はカメムシに詳しくなかったが、昨年あたりから彼らが何者かを特定すべく関東圏に出る大型カメムシでサーチしていた結果、クサギカメムシかキマダラカメムシのどちらかだろうと見当をつけていた。内心、クサギだったらいいなぁ……と自分の好みを保持していたのだが、これまでに目視で把握した大きさを考えると、より大きなキマダラの方が当てはまるのだった。
模様を見たらすぐわかりそうだよ、と思う人がいるかもしれないが、過去にはそこまで強い関心を持って観察していなかった上、相手が動いていたりもしたし、クサギとキマダラはまあまあ似ているのだ。カメムシの種類を気にするぞ、という意識を持たずに漫然と見ていたら、「どっちだったか?」と後できっと混乱するであろう程度には似ている(つまりこれまでの私)。

キマダラカメムシ - Wikipedia(写真は同ウィキペディアページより)

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クサギカメムシ - Wikipedia(写真は同ウィキペディアページより)

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ほうら、なかなかに似ている。どうですか。一度キマダラの特徴を捉えたら間違えないだろうけど(黒と黄でけっこう派手、顔に走るライン、お腹側もクサギとは違うなど。興味のある方は調べてね)、カメムシ意識の低い状態でぼやっと見ていたら……ね。

カメムシのにおいを初体験。カメムシフレンドリーな記録、一旦絶たれる

私はカメムシのにおいをかいだことがなかった。
噂には聞いていたし、家族は私の不在時にカメムシを追い出そうと床を拭くワイパーで突くなどしてしまい、「くさかった! においが広がって大変だった」との顛末を証言していたが、自分では体験したことがなく、どんなにおいなのか想像できなかった。
しかし、においの体験のためにわざとカメムシを脅かす気にはならない。
これまでそっと捕獲して屋外に逃がす行為を繰り返していても一度もにおいを出されなかったのだ。であれば、このままカメムシフレンドリーな(カメムシにやさしい)人間として、そのにおいを知らずに一生を終えるのも悪くない。私は、そう思っていた。

ところが。
この間、母が自室から大声で私を呼んだ。即、カメムシだと察しがついた。
私が駆けつけると、虫が苦手な母が得意げにミニちりとりとミニほうきを持ち、「自分で捕まえた! これからベランダから出すところ」と、私に空のそれらを掲げた。

……何もいないよ、と指摘すると、「うそっ。あれ? 逃げられた? いつの間に?」と困惑する母。この部屋のどこかにいるね、さっきまではどこにいたの? と尋ねると、ベッドの隙間にいたという。ベッド上には、取り込んだ洗濯物が置かれていた。
母が再びその箇所を覗くと、ミニちりとりとほうきですくい上げたと思っていたカメムシはそのままそこにいた。けれども、私たちの気配を感じ取るや否や、ベッド下の、畳んだ衣類の詰まった引き出しの中へとワタワタと入り込んでいった。

虫が苦手な母でなくとも、衣類の引き出しの中に入ってしまったカメムシをそのまま放置する気持ちにはならないだろう。母が見守る中、私はすぐさまカップ法を実施。カメムシ救助に取りかかった。
(カップ法とは2020年6月の記事◆「ゲジが教えてくれたこと・虫と鳥と私の恋と」内の最後のセクション、「室内に入った虫を傷つけずに外に出す、簡単な方法(虫が苦手な人にもおすすめ)」で説明した虫の捕獲方法。直近では◆「黒ごきへの微妙な対応【全生物に I love you】」に登場。)

生物とテレパシー的につながるアニマルコミュニケーションを日常的に実施している私は、どういうわけかこのとき直観的に「このカメムシはメスだな……」と感じつつ、カメムシに声かけをしながらカップ内に誘導した。
しかし、折りたたまれた衣類の隙間や、ベッド下の引き出し内という条件の中でカメムシを優しくお運びするには、少々難しいシチュエーション。なるべく丁重に扱うつもりが、わずかにカップで追い詰め、強引にすくうように持ち上げる場面が生じてしまった。

すると……何か出してる?
明らかに、私にとって初体験の瞬間が訪れた。
カメムシから液体が噴出された感がある。そしてそれは、パクチーの香りだ。

カメムシは危険を感じるとにおいを出すという。「大丈夫、今そこから放すからね」と声をかけながらベランダに出て、ぱっとカップの口を離した途端にカメムシはぶるるんと飛翔して行ったから、「やん、もう、やめてっ!」という感じだったのに違いない。
今までのカメムシは、同じ方法でお放ししてもにおいを出すことはなかった。このカメムシの気持ちを考えると、家の中ですでに母に追い立てられた後、よくわかんない場所(ベッド下の引き出し、衣類)にはまってしまったピンチ! があったのに加え、母と私二人で詰め寄る空気も感じ取っていたかもしれず、「脅かされた!」と判断するのはふさわしい。
こうして当カメムシから「危険」と判定されたことにより、私の「カメムシフレンドリー」な記録は破られたのだった。

改めて、残っているにおいをかいだ。これが、カメムシのにおいか……。
種類にもよるのだろうが、それは私にはパクチーのにおいにほかならず、噂ほど強烈でもなく、不快とは感じられなかった。私はパクチーは好きな方。
しかし、このにおいを吹きかけられたら、簡単に雲散霧消していくものではないのだということもまた、学習したのだった。

To be continued……私のカメムシアルバム

まだしばらく今年も、我が家でのカメムシレスキュー911は続くだろう。
家族にも注意を促し、このごろはカメムシの話題で持ちきりだ。
「ほのかにカメムシ臭」などの名言も生まれた。ある日母が、取り込んだばかりの洗濯物をすんすんとかいで、そうつぶやいたのだ。
最近の母は私の注意喚起に従い、目視で確認のほか、洗濯物を取り込む際によくはたくようにしていたのだが、姿は見えないのにカメムシのにおいだけが服からかすかに漂う、というややミステリアスな状況で生まれた言葉だ。

この家でのカメムシの侵入経路は決まっている。母が取り込む際の洗濯物(これまでカメムシが洗濯物につくということに対し無自覚だったとのこと。私はこのシーズンは目を皿のようにして洗濯物を取り込む)か、網戸にとまっているカメムシが、私たちが窓を開閉する際に家の中に入ってしまうかのどちらかだ。
カメムシクラッシュ(網戸やガラス戸のレール上にカメムシがいて、知らずに潰してしまうこと)にも注意したい。昨秋は、それが起きた形跡を認めたのだ。

しかし……夏の間にもこのカメムシはいなかったわけではない。あるとき、外に置いて乾かしていた傘を持参した私は、思いがけずカメムシを運搬していたことを知った。小雨が降り出したので道の途中で傘を開いたら、傘の上に軽い重量と気配。見ると、カメムシが乗っかっていたのだ。今夏の話だ。

カメムシが止まっていたのは傘の外側だったので、近くの草の茂みに降ろしてあげようとそのまま傘を傾けたところ、カメムシは降りまいとし、傘の上を逆方向にダッシュ。そっちじゃないよ、こっちにおいでと言いながら私は傘を動かすが、カメムシは私が案内したい方向と逆に一生懸命走った。
まるで、傘の上のカメムシと私とで「おめでとうございます~」と傘回しをしているような事態になり、道端でひとり、しばらくカメムシの誘導に取り組んだのであった。

私のカメムシアルバム。今後はどんなシーンが加わるのだろうか。
To be continued……。

あなたのカメムシアルバムはいかがかな?

★カメムシアルバム、続編。
「振り返れば、カメムシ【ポエティックに2021年】」
「クサギカメムシさん、いらっしゃぁい」


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