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正欲

20240216@kino cinéma 新宿 朝井リョウの同名小説の映像化。 朝井リョウ作品はとにかく現実だけがただそこにあり、それが残酷でもあり救いでもあると感じる。 "アップデート"だとか"多様性の時代"だとか言って(喜ばしいことではあるけども)理解や思いやりをもった気になってるけど、そもそもヒトやモノゴトは元来多様でしかなく、好き勝手カテゴライズしてみたりすること自体が野暮なだけだということが社会に知れ渡ってきたというだけ。 多様性を声高に掲げる社会の動きの中

    • 怪物

      20230717@ユナイテッド・シネマ浦和 【ネタバレ?あり】 いくつからの視点から、子どもたちの間で起こった出来事を描き、それぞれの登場人物が「怪物」に対峙する。 この映画に興味を持ったきっかけとしては、この映画に対する是枝監督のインタビューの中で、LGBTをテーマにしていながら「そのことに特化した作品だと自分としてはとらえていない」と発言したことに一部で批判が上がっていたのを目にしたため。 この発言に対しては実際に作品を観てみて、決してマイノリティ当事者を蔑ろに扱

      • エゴイスト

        20230408@テアトル新宿 「愛するということが分からないんです」 「私(たち)が愛を感じていればいいんじゃない」うろ覚えだけど、そんな会話が印象的だった。 自分自身含め、セクシャルマイノリティであることが故の不自由さから、自己表現や愛情表現が不器用な人って多いのかもなぁなんて思った。 学生時代に「オカマ」とイジメられていた浩輔は、"鎧"として服やメイクを纏う。龍太と互いに愛し合っているのに、屋外ではキスはもちろん手を繋ぐことさえ人目を気にしなければならず、愛する人

        • モアザンワーズ/More Than Words

          20221230@Amazon prime video 人と人とを繋ぎ止めるものってなんなんでしょうね。 家族だったり、友人、恋人…、このドラマのキーとなるセクシャリティの有りようだけに限らず、単に人同士の関係性にも様々あって、本来は他者がそこに介入すべきではないし、他者によって壊されるものであって良いはずがなくて。 こういったっ作品が軽々しく、雑にBLとかいうカテゴライズで消費されて欲しくはないと強く思う。実際にそうした扱いを目にしたんではなく、自分自身こそが、(ウホ

          SWALLOW/スワロウ

          20221227@Amazon prime video 大枠のストーリーは面白い雰囲気あったけれど、後半で方向転換、その先でいつの間にか結末迎えた感じで、前半の何やかんやはなんだったんだという印象。 金に物言わしてる家庭の裏事情みたいなところでいうと、パラサイトに通ずるような部分もあって、そういうところは好みではあったけれど。 アマプラだとカテゴリがサスペンスだけど、そのカテゴライズはちょっと強引すぎるぜ〜 どうせなら前半のノリのまま、由緒正しい家庭に嫁いだ女の疎外感や

          SWALLOW/スワロウ

          ゲハルト・リヒター

          20221209@豊田市美術館 写真を基にして描き写すことで、主観的判断を出来るだけ働かせずに描かれるフォトペインティングという手法を用いた作品。絵画を否定することで却って絵画性が強調される結果をもたらす。それはリヒターは「純粋なイメージに接近することができる」と言う。 グレイ•ペインティングの手法で描かれた、無を示すのに最適だという灰色で塗りつぶされた作品群。さまざまな筆致で描き分けることで有と無の境目を見定めようとしている。無の概念についてジョンケージ語った「私には何

          ゲハルト・リヒター

          私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ

          20220811@東京都現代美術館 4人の作家によるグループ展。 高川和也による《そのリズムに乗せて》。 言葉として表出させることで、自分でも思いもしない方向に展開され・読み取られ・自分のものでなくなっていくその言葉。 映像作品の中の登場人物の「他人の語りを聞くことは他人事として聞き流してしまうけれど、ラップとしてリズムに乗せられることで自分事として捉えることができる」という発言にはなるほど、と思わされた。 ラップとして発する、所謂ラッパー側としては、「自分としてただ語る

          私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ

          2022年武満徹作曲賞本選演奏会

          20220529@東京オペラシティ コンサートホール 1 奇祭の奇妙さの空気感が十分にあった。バルトーク的な土俗的なリズムのパートはとても好き。 特に打楽器だけど、ホールの音響のせいか座席のせいか、管と弦との解離が少しあったように思う。面白そうな音響が次々にあらわれるんだけど、そのどれもが少し消化不良に終えた感があり、セクションの羅列感が否めないかも。 テーマとしては面白くて表現しようとしていることは伝わってくるように思えた。 2 シンプルに好み。武満の透明感に近いものを

          2022年武満徹作曲賞本選演奏会

          HEART STOPPER

          20220508@Netflix Twitterで話題になっていて気になっていたので一気見した。 "秘密の関係" なぜ秘密にするのか、しなければならないのか。 カミングアウトしたら周りの反応が変わってしまったという、タラとダーシーの関係。わざわざ公にしないまでも、隠すことはしないとうスタンス。 大切な人には伝えたいというニック。 ゲイを公言しているチャーリーに対して、ハリーのようにあからさまな侮蔑的な発言やイジメの言動をとるような人というのは、それこそ少数派になりつつあっ

          HEART STOPPER

          「空白」

          20220223@Netflix なんともヘビーな作品だった。事の発端となる、女子中学生が万引きから逃れる途中に車にはねられてて亡くなる、その責任の所在を巡って展開されるという、まずそのスポットの当て方すごいな。 娘に対してまともに向き合いもしなかった父親(添田)が、娘を亡くしてようやく娘のことを知ろうとする。物語の終盤に元嫁から言われる「許せないのは自分自身のくせに」という、父親自身もそれを自覚しているようで認められないような葛藤や混乱から、不器用なあまり感情を露わに、

          「空白」

          さがす

          20220130@テアトル新宿 twitterで話題になってるっぽかったので行ってみた。指名手配犯を追ったと思われる父が行方不明となり、娘が追ううちに真実が明らかになっていく…的な大枠のストーリー。 テーマとして並行しているのは死生観・愛情といったところ。ALSを患った妻が自ら死を望み、それを通じて父は死への観念を改めさせられたり、金に目を眩ませたり、しかし最終的には委託殺人の依頼主と妻への情を重ねてみたり、自分を探しに飛んできた娘への愛情を改めて感じたりと、鑑賞者へメッセ

          ユージーン・スタジオ 新しい海  EUGENE STUDIO After the rainbow

          20220111@東京都現代美術館 同日、クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]の後に鑑賞。さっきのマークレー展比較しながら考えていた。 多くを解説されてしまうと一方向にしか意識が向かなくなってしまう。マークレーは音楽と美術との間での翻訳を作品としているけれど、美術→言葉への直接的な翻訳もとても難しいな。音楽も美術作品も、鑑賞される時って、何も無いまっさらな状態で突発的に鑑賞されることってあまり無い。でも、創作の意図や過程や思考を十分に表明してから鑑賞

          ユージーン・スタジオ 新しい海  EUGENE STUDIO After the rainbow

          クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]

          20220111@東京都現代美術館 まず初めに目にするのは【リサイクル工場のためのプロジェクト】。廃棄扱いとなったPCのモニタ自身がスクラップされる様子を映し出し、10数台が円形に配置されている。それぞれ異なる周期で映像が再生され、それぞれの音声がランダムに絡み合って偶然性を伴ったサウンドを鳴らしている。モニタ最後の役目が自身の死を映し出すことで、生と死を感じさせるような儚さや、皮肉めいた表現となっていた。円形の内側に無造作に配線やスピーカーがむき出しになっていて、作品とし

          クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]

          はじめに

          芸術全般に展示や音楽や映画なんかの作品を観て感じたこと書いたり書かなかったりしていこうと思います。自分の創作に活きるようにインプットした色々を、文字としてアウトプットしながら自分の思想を理解できたらいいな 文章でまとめることが苦手なので、その練習も兼ねて。といいながらあんまり文章として仕上げることにはこだわらず、とにかく思いを言葉に変換して書き留めておくことを目的に、メモというか日記というかレビューというか、自分のためです。

          はじめに