怪物

20230717@ユナイテッド・シネマ浦和

【ネタバレ?あり】


いくつからの視点から、子どもたちの間で起こった出来事を描き、それぞれの登場人物が「怪物」に対峙する。

この映画に興味を持ったきっかけとしては、この映画に対する是枝監督のインタビューの中で、LGBTをテーマにしていながら「そのことに特化した作品だと自分としてはとらえていない」と発言したことに一部で批判が上がっていたのを目にしたため。

この発言に対しては実際に作品を観てみて、決してマイノリティ当事者を蔑ろに扱っていたり描写に誤解や軽んじるような意図も特に感じなかった。
強いて言えば、校長が湊に声をかけた「誰かしか手に入れられないものは幸せではない。みんなが手に入れられるものが幸せだ」というような台詞、あれは少しよくわからなかった。
シーンの文脈から読み取ると、
誰かしか手にしれられない=マイノリティ
みんなが手に入れられる=マジョリティ•所謂「普通」
みたいに受け取ってしまったが、本来の意図としては…?

同性愛が重要な要素として機能はしていたけれど、テーマ自体は同性愛そのもの、というよりそれを囲む周囲の人間や社会の中での認識という部分だと感じたし、同性愛の要素があるからといって仰々しく丁寧に腫れ物のように扱うほうが残酷なような気もするし。
映画「彼女が好きなものは」でも描き方が雑だの言う意見があったけど、作品に同性愛要素が占める割合が少し多いだけで、全部が全部社会への提言や理解への呼びかけみたいな、大それたメッセージを込めてると思い込んだり過剰で見当外れな声を上げる人間こそ怪物とも言えるし、むしろそういう怪物を炙り出すことがその映画の存在意義ともいえるかもね。

作品としては
湊の母親の愛情がゆえの空回り
学校組織において、事実より優先されてしまう保守や擁護
マチズモな思想の依里の父の言動
など、それらのどれもが人として感情や愛情を持って社会で生きる上では誰しも怪物になり得る要素だし、互いに怪物にさせ合ってしまうこともあるのだろうと感じて恐ろしい。

子どもの純な気持ちや存在は尊いね。保利先生の何気ない「男らしく」のような発言で不用意に傷付けたりする事が怖いし、自分の過去の教育経験の中での言動も正しかったのだろうかと度々振り返ってしまうけど、子供や教育に携わるのって本当に慎重でいたいね。

「生まれ変わりとかそういうのはない、そのままだよ」(だっけ?)の最後の彼らの台詞、月並みだけど、常に確かで絶対的な自分を持つというか、フラットに中立に生きたいなぁ(語彙力)なんて思った。

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