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龍と虎 武田氏館跡【武田神社:伊東忠太2】 山梨県甲府市

前回は米沢・・の上杉家のお話でしたが、上杉神社の神様となった越後の龍こと上杉謙信の地元は、越後春日山(新潟県上越市)。次世代が奥羽に移封されてしまったので、越後に残る上杉氏(長尾氏)の足跡は限られています。
一方、の好敵手筆頭は、甲斐の虎こと武田信玄。信玄が信濃に進出したことにより、春日山城を圧迫されるコトになった謙信にとってはとってもメーワクなヤツでしかありません。でも甲斐の国においては、武田家滅亡後もなぜか我らが殿さまは武田家。視点を変えるとそのヒトやモノの価値が変わるコトは珍しくありません。




鎌倉以来甲斐の国の守護を務めた武田家が、室町時代後期に拠点を置いたのが甲府。甲府市は山梨県の県庁所在地で、人口は184,000人と県内最大の市。甲府市を地図でながめると、甲府盆地にあって山梨県の真ん中あたり(南北に細長い)。文字通り甲斐の国(山梨県)の中心なのですが、甲府市には山梨市、甲斐市、甲州市とヨソ者を惑わす名前を持つ市が近接しています。司馬遼太郎さんがご存命であればさぞやご立腹のコトかと(笑)
今回はそんな甲府市にある武田家ゆかりの場所を。


武田氏館:躑躅が崎館から武田神社


武田氏館跡 パンフ2022年版
 

山梨県甲府市古府中町2611


武田氏の祖は義光よしみつ(新羅三郎:1045-1127)で、のちに甲斐源氏と呼ばれる大ファミリーを形成します。小笠原氏(豊前小倉や肥前唐津の殿様)や南部氏(陸奥盛岡の殿様)は分家筋。義光の子義清が暴れん坊過ぎて甲斐の国に配流されたのが始まり(ちょっと情けない歴史の始まり)。

躑躅が崎館は、武田信玄の父信虎のぶとら(1494-1574)が石和(山梨県笛吹市)から拠点を移し築きました。以降、信玄、勝頼の居城となりましたが、その歴史は100年弱。
武田神社は信玄を祭神に1919年に創建。本殿の設計は伊東忠太いとう ちゅうた(1867-1954)。なんと上杉神社を設計した米沢の人。越後の龍の国の人が甲斐の虎の神社を手掛けています。明治・大正期は、川中島ははるか昔の過去のコトに。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」は武田信玄の言葉とされていますが、躑躅が崎館はなかなかの堀と石垣です。武田家滅亡後の織田方の仕事でしょうか。

神社本殿は上杉神社に似ています(神社建築の様式はいろいろありますが、神殿の配置程度ぐらいの知識しかありません)。
 

武田神社 パンフ2022年版


武田菱の家紋は基本



宝物殿では武田家ゆかりの刀剣や文書類を展示。

武田神社宝物殿 パンフ2022年版
奉納された虎ではなく猫 なぜキティ? @宝物殿


甲府盆地を見渡すロケーションにある武田神社(一望できる程ではありません)。甲府駅までは下り坂の一本道。


武田信玄:館の主 甲斐の虎

武田信玄像 @塩山駅前

武田信玄たけだ しんげん(晴信:1521-1573)は、風林火山を旗印に用いた甲斐の人、ではなく虎。ドラマでの母は若尾文子(消えないイメージ)。
信玄さんは父信虎のぶとらをクーデターで追放し家督を相続します。本国の甲斐を拠点に法整備を進め、金山開発や治水対策等で国力をつけていきます。信濃、駿河、三河と領国を拡げていきますが、都への西上作戦途中の三河で病没。僧形で坊主頭の肖像画や銅像のイメージなので高齢かと思いきや、結構若くして亡くなり享年53才。合掌。
写真は信玄さんの菩提寺恵林寺えりんじのある塩山駅前のモノです。高野山所蔵の信玄さん肖像画がベースと解説に記されています。肖像画は長谷川等伯筆の寿像(重要文化財)。シブいチョイスです。
甲府駅前にある信玄像(高名な彫刻家の作品)の方が、THE信玄というカンジで知名度は高いと思われます。


信玄ミュージアムという決定版的な名称のミュージアムが武田神社の向かいに2019年開館しています。

無料展示スペースに一部有料スペースが併設、映像系あり。展示品についてはやや弱い印象です。武田家関連の道具類は武田神社恵林寺の宝物館に収まっていて、新規オープンのミュージアムにはつらい環境。初めての方でもパネル展示は楽しめますが、コンテンツ不足でリピートは厳しいかも。映像系コンテンツを利用したミュージアムがここ数年増えてきていますが、同じモノを見たがる人は少ないのでは。心配なのがハードも含め陳腐化の早さ。

信玄ミュージアム パンフ2022年版


信玄と謙信

越後の龍と甲斐の虎は、互いの能力や人格を認め合った関係だったと言われています。それぞれの次の世代(景勝&勝頼)では同盟を結ぶ関係になりますが、武田家は織田家の侵攻を防ぎきれずに滅亡。上杉家も同じ運命を辿るかと思いきや、信長の横死によって生き残ります(その後のピンチもなんとかクリア)。

@長野市立博物館


お互いに神様となり、地元民に慕われている点でも甲乙つけがたい2人。
ただし生き残らなければ、伝来のお宝や道具類は散逸してしまいます。この点について軍配が上がるのは上杉家。


虎と龍の一騎打ちの図

武田神社前の土産物屋で入手したピンズ。最近は缶バッジが幅を利かせていてピンズのような手の込んだモノが減っている気がします。


今宵はここまでにいたしとうござります。


虎と龍の一騎打ち @川中島古戦場史跡公園




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