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書籍・論文

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「海の民」とは一体何者だったのか?―B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊【読書感想】

「海の民」とは一体何者だったのか?―B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊【読書感想】

古代史上最も謎に満ちた出来事の1つが、紀元前12世紀頃に起こった文明崩壊の連鎖でしょう。これらの要因は、長らく「海の民」の侵略のせいだという説明がされてきました。私自身、高校時代に世界史Bの教科書に載っていた海の民侵略説を読んで、「海の民って何?」と疑問に思ったことを記憶しています。

B.C. 1177、ラムセス3世率いるエジプト軍が激戦を繰り広げたとされる「海の民」。彼らは一体何者だったのか?

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【読書感想】ミュケーナイ世界 (ジョン・チャドウィック著)

【読書感想】ミュケーナイ世界 (ジョン・チャドウィック著)

線文字Bをヴェントリスと共に解読した言語学者ジョン・チャドウィックの著書「ミュケーナイ世界」を読み終えました。本書は、おそらく既に絶版されてしまっていますが、豊富な線文字B粘土板史料を元に、ミュケーナイ文明の文化や社会について、推測も交えながら、多くを教えてくれます。

ミュケーナイ社会では女性も要職に就けた?特に興味深かった点としては、ミュケーナイ社会では女性でも行政の要職に就けた可能性が高いこ

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【読書感想】ギリシア哲学30講 人類の原初の思索から

【読書感想】ギリシア哲学30講 人類の原初の思索から

非常に刺激的な本を読み終えました。日下部氏著作の「ギリシア哲学30講 人類の原初の思索から」です。副題に「存在の故郷を求めて」とある通り、古代ギリシアの伝統的深層意識であった「存在」を軸に古代哲学史を論じていきます。私は哲学者でも、哲学を勉強しているわけでもないので、理解が不十分なところだらけかとは思いますが、頭の中の整理も兼ねて、感想を書いてみたいと思います。

「存在」とは?日下部氏が本書で解

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