石田龍之介(いしだりゅうのすけ)

レーゾンデートル  ― 存在理由 ― 探すんだ。もう一度生まれて。 僕の死んだ理…

石田龍之介(いしだりゅうのすけ)

レーゾンデートル  ― 存在理由 ― 探すんだ。もう一度生まれて。 僕の死んだ理由を。 生きる意味を。

最近の記事

【長編小説】レーゾンデートル

   ―存在理由― 巻末手記       ~俺の存在理由~ ああ、そうだ。 きっと世界はいつまでも同じじゃない。旧世紀でもそうだった。 人は戦いを止められなかった。あらゆる方法で人を殺し続けた。 でも、どこかで分かっていたんだ。こんな方法は、間違っている。 人が変わるには、まだ時間が必要なのかもしれない。 その道中で、たくさんの命が犠牲になるかもしれない。 それでも「いつか」目指していた世界がやってくる。 戦争のない平和な世界が。 人々が本当に分かりあえる世

    • 外伝 戦争について

      あとがきもどき みなさんこんにちは。やまねこです。 今日は、少しだけまじめな話。 「何故戦争をテーマにした作品を書こうと思ったのか。」 について、ちまちまと語っていきます。 先日。部活動で戦争小説を書いている旨を、某友達に伝えたところ、 「え、そんな重い小説書いてんの?(冷笑)つまんなくね?」 と鼻で笑われ、挙句 「え、そんなことよりさあ」 と話題を強制転換させられました。 ―ここまで端的に、かつ率直に否定されたのは初めてです。 いえ、別段そこまで気にしてないし、全

      • 【詩】 命

         ― 命をもらった 温かくて 寒くて 嬉しくて 悲しくて 混じりあった絵の具みたいな、音が見えるように 私は 命をもらった  ― 命をもらった だから 本当にたくさんのこと知った 楽しいこと  つまらないこと 嬉しいこと  悲しいこと すごいこと  辛いこと おもしろいこと 苦しいこと 私は 命をもらった  ― 命をもらった でも その時はじめて いらないと思った どうしてだろうか ああ そうか 命があるから 知れるものがある それならきっと

        • 【短編小説】シロ

          遠くで聞こえた体育の号令に、聴こえないふりをした。 八月の鬱陶しさがかすかに残る布団をのけて、窓から流れ込む冷ややかさに身をさらした。 ――こうでもしなければ、きっとまた夢に引きずり込まれてしまうから。 よれた制服の裾を手のひらではたいて、胸元の居心地の悪さを外して、一つ大きなあくびをした。 保健室の先生が開けていった窓から、ふと秋の匂いがした。 「また眠くなるわよ」 横合いからそんな声がかかって、彼女はようやっと目が覚めた気がした。窓の縁に前足までそろえて、しっぽをけだ

          【短編小説】式神様の思し召し

          「おい、君。ちょっと」 「―はい」 代り映えのしない、つまらないオフィスの一角。パソコンとにらめっこを続けて数時間。 どうにも頭が働かなくて、そんな自分に嫌気がさして。 深くため息をついたところで、奥の机から声がかかった。 ―嗚呼、この声のトーンは危険だ。神経がぴりつくような声色に、思わず身構える。 「この間の案件、どうなってるんだ?報告書は?」 眉間のしわが、内なる沸々とした感情を見せつけてくるようだった。 嗚呼、マズイ。 「あ、ええと、これです」 自信がなかっ

          【短編小説】式神様の思し召し

          【短編小説】オールドファッション

          どこか遠くに、鳥のさえずりが聞こえる。 これは、すずめだろうか 「二羽、いや三羽いるようだ」 相変わらず朝から高い声でよく鳴くものだ、 と思ってみる。 いや…まて…朝から? …朝? 瞬間、深浅を彷徨っていた意識が戻ってきて、慌てて飛び起きた。 ああ、またやってしまった。 どうやら、昨晩パソコンで仕事をしていて、そのまま寝てしまったらしい。たしか、シャワーすら浴びてなかったはず。 机上に散らばる書類の束をまとめて鞄へ突っ込むと、ベッドの布団に捨て置かれた昨日のワイシャ

          【短編小説】オールドファッション

          【短編小説】機械人間

          技術の進歩は、緩やかとは程遠いものだった。 劇的に、急激に日々進化するそれを、あたかも人は手足の様に扱った。そうすることに、彼らは何の躊躇いもなかった。 それがどんなに便利で、素晴らしいことかを知っていたからだ。 やがて人は、気づいた。 手足の「様に」しか扱えないのは、なんとも不便だと。 発想は、常識を凌駕する。皮肉にもその結論にたどり着いた人々は、機械と一体になった。 思い通りに動く。かつて手足にしかできなかったことが、次々とできるようになる。  機械の進化は、止ま

          【短編小説】人魚姫

          「お願いします。わたし、人間になりたいんです」 「何度言ったら分かるんだい」 遠い遠い海の底。人知れぬ人魚の城に、それはそれは美しい人魚姫がおりました。 「だめだと言ったろう」 「でも、私はもう一七になるのよ」 人魚たちは、十五歳になると海から出て、人間の世界へ行くことができるようになります。けれども、六人姉妹の末娘は、なぜか人間の世界へ行かせて貰えませんでした。 「五人の姉さんは、みんな陸へ上がって帰ってこなかったわ」 人魚姫は、魔女へそう言います。 「きっ

          【コラム】「後悔先に立たず」の先にあるもの

          後悔先に立たずとはよく言ったもので、ふと思い馳せると様々な失敗が頭を巡ります。 「あの時の選択は本当に正しかったのだろうか?」 「もしああしていていれば…」 なんて、これまでのことをずっと考えてしまいます。   これを読むあなたも、きっと私と同じ轍を踏むことになるのです。 避けて通ることはできません。 いずれ必ず、そうなるのです。   人はそういう生き物です。 思い通りにいかなかった時、自身をその状況へ導いた自分の選択を恨み、悔やむのです。   けれども、大事なの

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          【短編小説】再犯率 ゼロパーセント

          町の入り口、商店街中央通りはもう随分と寂れていた。なまぬるい風が吹くたび、シャッターの錆がうつろな呻き声をあげる。こういう通りには、杖を突いた老人あたりがお似合いなのだが、それすらもいない。白昼堂々幽霊でもでそうなくらい、鬱屈とした暗がりが四方に立ち込めていた。胡散臭い街だ、と思ったのは今日が初めてではない。引っ越してくる前から、この街の噂は聞いていた。なんでも、「再犯率ゼロパーセント」といわれているらしい。くだらない、どこぞの莫迦が、適当なことを言いふらしているだけだろう、

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          【短編小説】転送

          「―以上で、ご説明とさせていただきます。ご不明な点などございました ら、何なりとお申し付けください」  目の前に浮かび上がるホログラムがそう言って、にこやかに微笑んだ。機械とはいえ、その仕草はもはや人間のそれにしか見えない。 「―えっ、あっ。ごめんなさい。もう一度最初からお願いできます? 私、専門用語に疎くて・・・・・・」 「承知いたしました。では、もう一度説明いたします」  受付嬢は、嫌な顔一つせず快諾してくれた。人間だったらこうはいかない、とプログラムされた親切心

          【短編小説】「幸せのサンタクロース」

          吹雪が舞う、氷河の大地。 激しさと孤独に閉ざされた、極寒の地。 熱を奪われたその中に一つ、灯りがあった。 目をそらしてしまえば、もう見つけられないくらいに。 小さく、か細く、それでいて暖かな光。 目を凝らして近づいてゆけば、それが家だと分かる。 冷たい空へ白い息を吐く煙突。 白く雪をかぶった三角屋根。 途端、心臓が大きく跳ねる。 間違いない。 あれが、きっとそうだ。 末端まで冷え切った体に、熱が流れるようだった。 膝上まで積もる雪をかき分け、とにかく進んだ

          【短編小説】「幸せのサンタクロース」

          全国の文芸部のみなさんへ

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          高校数学の文学的表現

          【ショートショート】大正浪漫

          刻を知らす鐘が、夕陽に身を沈めた街にこだまする。 若草の袂は既に薄暗く、ゆうゆうとのびる陰が、少しずつ夜を誘った。鳥居の紅色も、幾分か暗い。 「今日の日暮れは、一段と綺麗やの。」 隣から、そう声が掛かる。 腰元が窮屈でたまらない、とうるさかった彼女なりの、精一杯の勇気からくる一声でもあった。 日が沈めば夜になって、また日がのぼって…を繰り返す無作為でモノクロームな日常に、ふと色がつくような感覚は、今でもぬぐえない。 夕日が落ちるまで、と言ったものの、もう半分も沈んでしま

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          【番外編】ヒューマンズ・レフュジア 博士と僕の会話編 ―子供について― 

          「先生には、ご子息がおられましたよね」 「ああ、息子と娘一人ずつ。でも何故?」 「高校の先輩に、子供が生まれるらしくて」 「それはおめでたい」  「ええ。ですが…」 「この間、飲みに行ったときに言ってたんです。「父の自覚、足りないかも」って」 「先生は、父親としての自覚って、どんなものだと考えますか」 「責任、だろうな」 「子供は弱い。だから、我々大人には、子どもを守る責任がある」 「立派な大人に育てる責任もあるだろう。  子供はいつまでも子供じゃない。  自

          【番外編】ヒューマンズ・レフュジア 博士と僕の会話編 ―子供について―