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KIZUNAWA

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#絆

【小説】KIZUNAWA③        誓いの葬列

【小説】KIZUNAWA③        誓いの葬列

誓いの葬列
 
 翌日の日曜日、太陽は練習に向かう途中、茉梨子の家に寄った。「心配かけてごめんね」茉梨子の母親は恐縮して言った。
「昨日から部屋に閉じ籠ってしまい、ご飯も食べないのよ」本当に心配している様子だ。
(今、家の前にいる)
太陽はM・ラインを送ったが既読にはならない。
(飯ぐらい食べないと駄目だぞ)
既読にはならない。
(また帰りに寄るから)
やはり既読にはならない。
太陽は茉梨子の母親

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【小説】KIZUNAWA⑨            テザー・二人を繋ぐ絆

【小説】KIZUNAWA⑨            テザー・二人を繋ぐ絆

 放課後、雅人は村田先生を訪ねていた。
「ご厚意を、無下にお断りする事になり申し訳ありませんでした」
雅人は礼儀を尽くした。
「無下ではありませんね。現に君はここにいるではありませんか」
「しかし、チャンスを頂いたのに」
「全国大会頑張りましょうね。陸上部はクリスマスを京都で過ごす事にしましたので、協力出来る事は何でもしますよ。サッカー部だけでは心許ないでしょう」
「ありがとうございます」
雅人は

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【小説】KIZUNAWA⑱        牛丼の戸沢家・無口な親仁の一言

【小説】KIZUNAWA⑱        牛丼の戸沢家・無口な親仁の一言

 戸沢家の店内は静まり返っていた。白いコックコートに黒のエプロン姿の親仁はやはり無口で腕を組んで窓の外を見ていた。「京都に戸沢家さんはないからね」遠くに、キコキコキコ、茉梨子の自転車は何時もの声を響かしていた。
「あの子たち、全国高校駅伝競走大会に出場するんだって」
「……」
「長野県予選でキャプテンを失って、諦め掛けた出場を救ったのが視覚障がい者の彼なんだってさ」
「……」
「凄いよね? 諦めな

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