雨の日に

ポツリ、ポツリと雨が降る。少しずつ激しさを増していく雨。

雨の音。君の声をかき消すようなそんな強さを伴う雨。雨のおかげで嫌なことを綺麗さっぱり流せるそんな気がした。

雨に打たれ、立ち尽くす私に、傘をさしながらそっと微笑む君。微笑みの数だけ君に救われて、要はいつまでも君にすがっていたかった。

相合傘の数だけ距離は深まり、雨粒の数だけ私の思いが君へと募るばかり。

時間は巻き戻し不可。リセットボタンなんてものは存在しないのが現実世界のルール。

かつてはお互いの心を愛する権利が2人にはあって、温もりの数だけ君を愛していた。でも愛の延命措置は惜しくも実らず、もう2度と戻れない2人になってしまった。

君との思い出はもう思い出せない。なんてね。思い出してしまうと心が痛くなってしまうから、思い出さないようにしているだけだった。強がっちゃってバカみたい。

君に溺れていたのはいつだって私だった。雨に打たれる自分を見て、君に溺れていたあの頃に少しだけ戻りたいと思う自分がいることに気づく。戻りたいと思う自分がいることに気づいても君はもういないから、なんだかやるせない気持ちになる。

行き場のない関係性に、かつては2人だった私たち。

本当は脳の中に君との思い出が鮮明に残っていて、君の目、君の声、君の温もりも全部全部覚えているんだよ。あの時掛けてくれた言葉は全部嘘だった。いや、あの頃は本当だったんだけど、全てを終わらせた私が全部嘘に変えてしまったんだよ。

願わくば出会う前からやり直して、2人が出会わないようにやり過ごしたい。2人の時間がもう2度と交わらないように、あんなに切ない思いと嬉しい思いを2度としないように。

君との思い出を思い出すのは雨の日にしよう。そうすればもしも感傷に浸ってしまったとしても雨のせいにできるから。

嫌なことは全部雨のせいにしよう。雨には悪い気がするけど、それで私の気が晴れるなら、もういっそのこと全部雨のせいにする。

雨の日に君のことを思い出す。楽しかったことも悲しかったことも全部雨の日に思い出してしまおう。

涙を雨に変えて、泣かなかった自分を褒めてあげよう。

ああ、いっそのこと君の神様になりたかった。

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