リクルートの1100万人労働者不足から考える、生き残る企業と、潰れる企業①

今回は、これから先に生き残る企業と潰れる企業を考えていきたいと思います。

まずはリクルートの1100万人労働者不足とは何かという話ですが、リクルートは定期的に未来の労働市場について予測しており、先日2040年の労働市場予測を発表しました。

一般に公開されているので、リンクを貼っておきます。
そこで、2040年には労働者は1100万人足りなくなると予測しました。

ある程度ボリュームのある内容なので、概要を簡単にまとめると、
①2023年から労働者は不足し、年々不足数は増えていく
②2040年には1100万人の労働者が不足する
③この予測は女性の活躍、お年寄りのさらなる労働参加、外国人労働者の確保も想定に織り込んでいる
④このままでは2030年ごろから、当たり前の生活の維持も難しくなる可能性が高い。道路や橋が壊れてもなかなか修理されない、電車の運休や遅れが多くなる、荷物が届かない、病院が常に混雑、介護サービスが受けられない、警察や消防や自衛隊が定員不足で質が低下する。
⑤それらの悲観的未来を回避するために、今すぐに、AIやロボットの活用の促進、女性や高齢者が働きやすい社会や制度の用意、外国人が働きたいと思う働き方の改革を政府、企業がしなければならない

今回のその1の記事では、この予測は本当に正しいのか?
次回のその2の記事では、今後、生き残っていく企業と、潰れていく企業を考察します。

この予測は本当に正しいのか?

結論から言うと、ほぼほぼ予測通りになると思います。
というのも、これから生まれてくる人口は大きく変動する可能性もありますが、労働者人口(15歳~64歳)の数は、これから15年間は大きく変わらないからです。(2040年時点の18歳以降の人たちは既に生まれているから)

また、高齢者の数もある程度予測できるため、リクルートは日本国内の必要な仕事量は今とそれほど大きく変わらないと予測しています。
これも正しいと思います。お年寄りでもご飯は食べるし、観光するし、遊びに行くし、髪も切るし、服も買いますからね。

この予測より、ひどくなる、もしくは良くなる可能性はあるのか?

じゃあ、これより良くなることや、もっと悪くなることはないのか?
もちろんあります。ただ、大きく予測が変動する状況や、要素がどれだけあるか?というと、そんなにないことが、今回のコロナウイルスによってわかってしまいました。

未知のウイルスによるパンデミックの影響は思ったより小さかった

これまで、こういった人口予測をする際に、大きな変動要因になりうるものとして、未知のウイルスの流行というものが常に念頭にありました。
しかし、今回100年ぶりに全世界を巻き込むパンデミックを引き起こしたコロナウイルスによる影響、結果によって、その考えは変わりました。

今回のコロナウイルスでわかったことは、
①未知のウイルスが発生しても想定以上にワクチンや治療薬を開発でき、想定より死者数は少なく済んだ
②公衆衛生の実践、リモートなどネットワーク技術の活用などにより、経済活動をある程度続けたまま、ウイルスの封じ込めを行えた
③パンデミック時に実践された新しい価値観、働き方などは根付かなかった

もちろん大勢の方が亡くなられており、それらの事実を軽視するわけではありません。ただ、事実として世界の食料、エネルギー、経済、ネットワークを崩壊させるのでは、という従来のウイルス危機ほどではなかったということです。

また③も予想外でした。これだけの被害を出した事態にも、終わってしまえば何もかも元に戻ってしまうということ。喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、まさにこのことで、働き方を変えることの難しさを痛感しました。

個人的には、これだけの出来事でも、特に日本は働き方を変えようとしないことからリクルートは今回の予測を出す必要性を痛感したのではないかと感じています。

もっと悪くなることはあるのか?

ざっと考えられる要素は以下の通りです。
①労働者不足にも関わらず、日本の中小企業を中心に多くの会社が、賃金や働き方(転勤や長時間労働など)を改善せず、若者を中心に海外に出稼ぎ、移住する
②上記のように改善しないことにより、お金に困っていない高齢者が予想以上に引退し働かなくなる
③賃金や働き方の面で、海外との外国人労働者獲得競争に負け、増やすはずの外国人労働者が逆に減っていく
④健康寿命が政府の想定より伸びず、通院や介護が必要な高齢者が爆発的に増加していく
⑤南海トラフ地震や富士山噴火、関東大震災など、予想されている大災害が発生し、莫大な復興需要が発生し、予想以上に必要な労働力が増加する

実際、リクルートの予測や、パーソルが中央大学の教授と共同で作った別の予測でも言及されていますが、働き方改革や賃金改善がなされないと、事態はさらに悪化するとしています。
⑤は起きるかわかりませんが、1~3は、企業が改善しなければ確実に起きる未来です。既に若者は全体では少数ですが、しかし着実に海外に年々出ていってます。

良くなることはないのか?

ここまで全く明るい話がありませんが、良くなる未来も当然あります。

①想定以上に、企業の賃金上昇、働き方改善が進み、労働者の流動性が高まり、それまで働いてなかった女性、高齢者、引きこもり、メンタル休職などの人たちが働くようになる。
②上記のような改善が行われ、外国人労働者も予想以上に日本に来る
③賃金上昇に伴い、それまで人を雇ったほうが安かった分野で、AIやロボット導入の流れが進み、生産性が向上する

ちなみにAIやロボットの活用というと、急に「ロボットに仕事を奪われる」という話が出てきて、「スキルのない人は仕事にあぶれて社会から必要とされなくなる」と脅す人や、「職を奪われて生きていけなくなるかも」と悲観的になる人がいますが、リクルートはそれを否定しており、私も同意見です。

現実として、今まで携帯電話の普及、インターネットの発展、Eメール、LINE、電子書籍などが生まれて、逆に、郵便事業、FAX、固定電話、印刷事業、書店、などが衰退しました。
しかし、大きな問題になるほどの労働者あまりにはなっていません。むしろ、発展すればするほど、全体の必要な労働者数は増えています。

まとめ

いろいろと書いてきましたが、これからの労働市場、日本社会を良くも悪くもするのは、結局、政府と企業です。
特に日本は、企業にいろいろと任せてきたこともあり、良いか悪いかは置いておいて、企業が変わらなければ日本は変わりません。

今回の賃上げについての考察は、別記事に書いていきたいと思いますが、企業の改革が想定以上に進むことを祈るばかりです。

その2の記事では、これから生き残っていく企業、窮地に陥っていく企業を解説したいと思います。

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