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付加音の消滅、限定進行音の例外進行 一歩進んだ和声学 Part 41

今回は内部変換における付加音の消滅、和音交替における限定進行音の例外進行についてを紹介していきます。内部変換において特定の和音は付加音を置き換えしなくてもよいことになっています。また和音交替において特定の進行に限り限定進行音が限定進行しなくてもよい場合もあります。では詳しく見ていきましょう。


1 付加音の消滅

内部変換において、付加音が他の声部へ置き換えられることがされないで、他の音へ進むこと付加音の消滅といいます。

以前V7の和音(根音省略形含む)→Vの和音という内部変換では、第7音の置き換えがなされないので認められないという話をしました。

形体変換と低音位変換ができる時、できない時 一歩進んだ和声学 Part 39|Ryo Sasaki (note.com)

しかしV9の和音(根音省略形含む)→V7の和音(根音省略形含む)の連結に関しては、第9音の置き換えをすることが無く、他の構成音へ進むことができます。

比較的多いのが第9音が第7音へ進むことです。もちろん他の構成音へ進むことも可能です。

第9音→根音への移行は、限定進行に準ずるものとみなされます。

2 限定進行音の例外進行

和音交替において、限定進行音が限定進行、保留、増1度進行以外の進行をすること限定進行音の例外進行といいます。特定の和音の連結において、導音が2度上行しなかったり、第7音が2度下行しなかったりするものです。

すでに第7音の例外進行についてはいくつか紹介しています。

V7の和音根音省略形体 一歩進んだ和声学 Part 11|Ryo Sasaki (note.com)

D諸和音の総括 一歩進んだ和声学 Part 14|Ryo Sasaki (note.com)

新たに例外進行が許される場合を見ていきましょう。

(i) 第9音の例外進行

第9音の例外進行についてはvV9の和音根音省略形→V9の和音根音省略形の連結において先行和音の第9音が後続和音の第9音へ完全4度上行することが認められます。

第9音の例外進行はもう一つあり、vV9の和音根音省略形第2転回形→V7の和音の連結において先行和音の第9音が後続和音の根音への3度上行が認められます。

(ii) 第7音の例外進行

一つ目は和音交替ではなく内部変換においてですが、V9の和音根音省略形→Vの和音における先行和音の第7音の2度上行が認められます。

基本的に内部変換において第7音が2度上行して根音へ向かうこと、そして第7音の置き換えがなされず消滅することは避けなければいけません。この例外進行は例外中の例外といってもよいでしょう。

続いては和音交替において、vV9の和音根音省略形第1転回形→V7(9)の和音(根音省略形含む)第3転回形において先行和音の第7音が後続和音の第5音へ2度上行することが認められます。

vV9の和音根音省略形第1転回形→V7の和音第3転回形において先行和音の第7音が後続和音の根音へ5度上行することが認められます。

vV9の和音根音省略形第1転回形→V9の和音根音省略形第3転回形において先行和音の第7音が後続和音の第9音へ6度上行することが認められます。

(iii) 導音の例外進行

導音の例外進行は既に紹介したものもあります。
ひとつめはV(7)の和音第5音高位の密集配分→VIの和音第3音高位の密集配分という配置に限り、アルトに存在する導音が2度下行できるというものです。

新たに紹介するものは
・Vの和音→Iの和音第1転回形
・I2_Vの和音→Iの和音第1転回形
・V7の和音第3転回形→Iの和音第1転回形

のいずれかの連結において、ソプラノにある導音が6度上行して後続和音の第5音へ到達するものです。

3 修飾音としての限定進行音

基本的に限定進行音は修飾音として認められませんが、ここではその例外となるものをいくつか紹介します。この場合修飾限定進行音に関しては、一時的な重複と消滅が許容されます。

(i) 修飾音としての第9音

V7の和音・V9の和音(根音省略形含む)において原音が第7音の時に、修飾音として第9音を用いることができます。その際は修飾音の第9音は原音に戻らなければいけません

修飾音としての第9音は、形体変換とはみなしません。

(ii) 修飾音としての第7音

vV9の和音根音省略形(第5音下方変位も含む)に限り、修飾音としての第7音を使用することができます

(iii) 修飾音としての導音

修飾音として導音を用いる場合は、原音から下行し、つぎに更に下行することが望ましいです

(iv) 修飾音としての第5音下方変位

vV諸和音(第5音下方変位)において、下方変位された第5音を修飾音として用いることができます。

4 終わりに

以上で内部変換は終了です。
次回からは構成音の転位というものを紹介していきます。
構成音の転位というのはとある和音の構成音からその和音の構成音以外の音へ向かうことです。構成音の転位はかなり長い時間をかけて説明していく予定です。これを終えれば大体の和声分析はできるようになります。

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