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「いまを生きる」に想いを馳せる

COVID-19による緊急事態宣言が出て1カ月半が過ぎました。世の中は、with/postコロナの方にシフトし始めているものの、未曾有の事態に対する出口戦略はハッキリせず、ヤキモキしている人も多いのではないでしょうか。

毎日のように「ヒマだ」「不自由だ」「いつ登校できるんですか?!」という声を生徒たちから耳にします。そうだよね、大人だって困ってるんだから。うんうん(*-ω-)

さて、「春休みは突然に」と題して、いま考えて欲しいことを綴って、2カ月半・・・(はやっ!)

今回は、僕がオンライン授業のために駆け回ったり、(今まで十分に取れなかった)家族との時間を過ごしたり、本を読んだりために立ち止まったりした中で考えた、「いまを生きる」ということについて書きたいと思います。


①with/postコロナ=課題先進「期間」

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福島県浪江町。2019年9月、福島県観光課が主催した「教員向け・福島ホープツーリズム」で訪れた地。

浪江には、ほとんど何もありませんでした。正直、ショックだったなぁ・・・。津波被災地というだけでなく、原発事故によって、震災前に約21,000人だった人口は、1,238人になったのです(2020年2月末)。人口が94%減ったことになります。

震災から9年が経ったいま、「今さら浪江に戻るなんて・・・」という人も多いといいます。(皮肉なことに、動物にとっては楽園になっているらしい。)

浪江の方にお話を伺っていたら、思いもよらない言葉を耳にしました。

浪江には、来るはずだった30年後の未来が、いま、訪れただけなんです。

この言葉を絞り出すに至るまでに、計り知れない葛藤があっただろうと思います。それでも、僕はこの言葉を聞いてハッとさせられました。

俗に言う「課題先進地域」です。遅かれ早かれ、人口減少が続く自治体には共通する課題です。もっというと、日本は世界に先駆ける「課題先進国」ということなります。

「福島ホープツーリズム」という名称にも、課題先進地域としての決意が垣間見えました。「この問題を、どう解決するか?」なんて簡単にできる議論ではなく、「自分自身のあり方」をどっぷり問われるツアー。12月には、勤務校の生徒たちも参加させてもらい、大きな衝撃を受けたようです。

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福島県浪江町立請戸小学校


さて、「人生100年時代」となったいま、いつか、誰しもに「ヒマだ」「不自由だ」が訪れる可能性はあります。そういう未来は、他人事ではないのです。

歳を重ねれば、誰だって、どこかしら体のどこかが痛くなったりして、「不自由」を感じます。仕事ばかりに精を出す人間なら、定年後は「ヒマだ」と感じるでしょう。

つまり、「with/post コロナ」は、誰しもにとって、いずれ訪れる課題先進「期間」になり得るのです。


②人生最後の日のように生きる

「いやいや、老後のこと考えて、その予行演習しよう!なんて無理あるやろ!」なんてツッコミが聞こえてきそうです。

でも、いつだって、「いま」を悔いなく精一杯生きることが、唯一、人生を輝かせる秘訣なんだと、古今東西の先人たちは教えてくれます。教えてもらえるって、ある意味めっちゃラッキーなことです。笑

有名な引用ですが、スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式のスピーチで、以下のように述べました。(まだ見たことがない人は、英語の勉強にもなるし、ぜひ見てみて下さい!)

17の時に、こんな名言に出会ったよ。“毎日を人生最後の日のように生きれば、間違いなく最高の人生を送れる”ってね。それ以来33年間、私は毎朝鏡を覗き込んで、こう自問し続けた。“もし今日死ぬなら、今日やろうとしていることを本当にやるか?”そして、その答えがNoである日が続いたときは、何かを変えなきゃいけないんだってわかったよ。

そうは言っても、コロナで学校にも外食にも旅行にも行けない。友達にも、恋人にも会えないし、「推し」のライブにも行けない笑。でも、それらは、自分にコントロールする術はないのです。

それでもなお、今日が人生最後の日だったとしても、後悔しない生き方を選ぶことは、果たしてできるのでしょうか・・・?


③希望をなくして消えていくか?それとも残された時間に最善を尽くすか?

難病であるALS(筋委縮性側索硬化症)に侵されたモリー教授との「最終講義」を記録した実話です。平易な文で、中高生にもオススメの本。

部屋のベッドに横たわるモリー先生は、「最終講義」の中で、こう語ります。

いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる。

正直なところ、28歳の力士・勝武士(しょうぶし)さんの死は大きなショックでした。もしかしたら、彼は「いかに死ぬか」を考える間もなく、病魔に侵されたかもしれません・・・。

人生、いつ、どうなるか分からない。なかなか実感できないかもしれない。けれど、人は、生まれた瞬間から「死」というゴールに向かって走り始めています。だからこそ、過ぎゆく一瞬一瞬の風景から目を背けずに、酸いも甘いも、しっかり噛み締めることが大切なのではないでしょうか。

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④「○○になりたい」だけを追わない

ここまで書いてきて、実は僕が言いたいことは、たった1つです。

「○○になりたい(become)」だけじゃなく、「○○でありたい(be)」を考える

いやいや、「○○になりたい」があるから、頑張れるんでしょ。「○○大生になりたい」「県大会ベスト○○になりたい」とか。そりゃあ、目標があるからこそ、人は頑張れるし、輝けるのは間違いないと思います。

だけど、じゃあ、目標がなくなったら、どうしよう・・・?たとえば、いまのみんなにとって、部活動はそういう状況かもしれない。大学入試で、目標が達成できなかったら、努力の日々って意味ないの・・・?

「○○になりたい」って、めちゃくちゃ「未来思考」です。未来は、自分だけでコントロールできるものじゃない。自分にコントロールできるのは、「いまここ」だけなのです。

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なんとなく察してもらえたかもしれませんが、「○○でありたい」って、とても「現在思考」なんです。

「努力している自分でありたい」は、いますぐにでも実現できるし、「周りの人を大切にする自分でありたい」も、できるはず。

「人に流されたくない」んなら、常に複数の視点から物事を見るべきだし、「ラクしたい」なら、「人生ラクし続ける」ために、いま、何をすべきかを考えればいいのです。

そうやって、「いまやりたいこと/やるべきこと」に集中して生きていけば、それは、やがて自分らしさになり、「いまを生きること」につながります。


最後に、いつも「ばかものよ」と教えてくれる、自戒の詩を贈って締め括ります。


自分の感受性くらい   茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ



⑤「いまを生きる」オススメ本&映画

1.「いまを生きる(Dead Poets Society)」:まんまのタイトル(笑)型破りの指導方法の教師とともに、生徒たちが自分の信念に。社会に迎合せず、自分の信念に愚直に生きる。


2.『嫌われる勇気』岸見 一郎・古賀 史健:悩みの種はすべて人間関係の中にあると喝破する哲人と青年の対話。「勇気づけ」のアドラー心理学で、「いまを生きる」を学べる。


3.『道元―いまを生きる極意』栗田勇:修業なんて仰々しいことしなくても、日々のあらゆることが修行。「人生は自分探しの旅」を仏教の視点から説いてくれる。


4.アリストテレス入門山口義久:「エネルゲイア」という概念を用いて「いまこの瞬間にやりたいこと、やるべきことに集中せよ」を説明します。変化が激しい時代だからこそ読みたい一冊。


5.『時は流れず』大森荘蔵:「いま」ってなんやねん!という哲学徒へ。「過去はない」ということを学ぶには、中島利恭さんにご紹介いただいた『時は流れず』がオススメ!




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