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12ヶ月間、パパ育休を終えて


育休を頂いてから、早いもので1年の月日が流れました。僕自身は大きく何かが変わった気がしませんが、子どもの写真を見返すと、1年って長かったんだなと気付かされます。

育休取得の経緯、育休生活についてはコチラ↓


日本では、2020年度に男性の育休取得率が初めて1割を越えましたが、スウェーデンの88.5%など欧米先進国と比べると、まだまだ課題は山積。

実は日本、世界一長く男性育休が取れる国とも言われていますが、5日間以下の短期取得が3割近くを占め、男性が長期で育休を取得するハードルは、まだまだ高いのが現状です。


そんな中、学校の暦を活かして2021年4月〜2022年3月まで丸々1年間育休を頂いた身として、育休にどんな意味があったのか、ライフログとして残しておきたいと思います。


1.父として

育休を取得したことで、当然ですが子どもと関わる時間が圧倒的に増えました。

育休前には、ママとじゃなきゃ寝ない!みたいな時期もありましたが、単純接触効果は本当みたいです。ただ、ママの壁はあまりに高いのですが…(笑)

自分に余裕がなかったときは、待ったり、問うたりしないで、答えを出して、与えてしまう。そんなことも、ゆったりとした時間の中で、じっくり考えることができました。

問題は育休明け。急激に一緒に過ごす時間が減ってしまうので、そんな生活に慣れてしまうのは寂しいものです。

それでも、少なくとも1年間はどっぷり共に過ごしたということは、後になっても素敵な思い出になるはずと信じています。


2.夫として

ここは見逃しがちな視点かもしれません。そもそもパートナーとは、「夫婦」の関係として始まりますが、子どもができた瞬間から、別の関係性も生まれます。

そして、別の関係性が生まれてからリタイアするまで(良くも悪くも笑)こんな長い時間を共にすることは、よっぽどのことがない限り、なかっただろうと思います。

生活リズムの急変から、お互い細かいことが目につき、育児観や仕事観でぶつかったりもしました。

でも、超絶大変な夜泣き期なんかも、もし仕事をしていたら「忙しいから、寝る!」で済ませていたかもしれません。

怖いことは、価値観がぶつかることではなく、価値観をぶつけることを棚上げして逃げ続けること。

ちなみに、母親層から圧倒的にシェアされているママリを運営するコネヒト株式会社から、男性育休の「質」に関する調査結果も公開されています。


母親のリスク管理能力やマルチタスク能力、何よりも無償の愛とは何たるやを近くで見ていて、純粋に尊敬の念を抱き、父親としての自分は、意識的に親にならなきゃいけないなと思わされました。

正直、どれほどの戦力だったのか分からないし、鬱陶しいと思われたことの方が多いかもしれませんが(笑)、それでも元気な子どもたちを2人も生んでくれたことに対して、せめてもの感謝は伝わっていて欲しいと願うばかり。

そして育休中も、育児にコミットする傍ら、さまざまなチャレンジを応援してくれて、本当に有り難く思っています。


3.教師として

育休を取るということは、働き盛りの時期のキャリアに穴を開けることにもなります。何より、部活動の生徒たちには突然いなくなったことで動揺を与えてしまい、今でも申し訳なく思っています(今日も夢に出てきました…)

さらに、僕の知らないうちに学校のICT化はどんどん進んでいるし、新しい若い先生たちも増えているし、浦島太郎感は否めません・・・(笑)

でも、立ち止まってみたことで、向こう見ずに走り続けていた時には見えなかったものが、いくつも見えた気がします。

たとえば、心理学を勉強し直したり、地域社会と繋がったり、ビジネス最前線の方とのプロジェクトなどを経験したり…学校教育を巨視的な文脈の中で捉え直す機会となりました。

今までも「学校と社会をつなぐ」は教師としての重要なテーマでしたが、今後はより組織的に、体系的に、継続的に、社会全体として実現できるように、考えて行動していきたいと思っています。

学校と社会をつなぐ素敵な仲間たちにも出逢いました!


4.齋藤亮次として

最後に、育休の1年間は「自分とは何たるや」について、深く向き合う時間を提供してくれました。

元来、走りながら考えるタイプではありましたが、一旦立ち止まったことで、家族以外には「誰からも求められなくなる自分」になりました。

給与をもらって働く以上(自分のやりたいことがベースにあったとは言え)誰かのニーズや期待を満たす生き方を知らぬ間にしていたのです。

他者から照らされるスポットライトが消えたとき、齋藤亮次という人間の輪郭が、ふっと消えた気がしました。当たり前ですが、自分がいなくても、世界は回っているのです。

自分が何をしたいのか、何ができるのか、何をすべきなのか、イチから考え直す期間になりました。

原体験ワークや人生曲線


もう一つ。従来、日本では子育て世代の女性労働率はガクンと下がるM字型でしたが、平成30年の時点でほとんど台形型へと変化しています。裏を返せば、当然ながら今まで以上に男性にも育児を担う役割が求められ、仕事とのバランスが求められるようになります。

言うまでもなく、子どもは本当に宝物です。生まれてきてくれただけで、本当に幸せです。

それでも、父親は自らの体から子を出産する訳でも、ホルモンバランスが変化する訳でもありません。育児への不安や生活状況の変化、仕事と育児のバランスへの悩み、男性の産後うつ「パタニティ・ブルー」なる言葉まで誕生しているようです。

総務省統計局より


人生の転機(トランジション)への対処を理論化したブリッジズによると、「終焉(何かが終わるとき)」「中立圏(ニュートラル・ゾーン)」「開始(何かが始まるとき)」に分けて乗り切るべきだとしています。

また、シュロスバーグはキャリアの転機に対処するためには、「4S」が必要だと述べています。

1.状況(Situation):原因や一時的かどうかなど状況を把握して理解する
2.自己(Self):自分の気持ちや興味、地位など把握する
3.支援(Support):家族、周りの人、公的機関、民間団体など支援の把握
4.戦略(Strategy):方向性や期限など行動計画を考える

育休期間は、まさに「中立圏(ニュートラル・ゾーン)」であり、じっくりと転機に対処するための「4S」について検討する余白を与えてくれるものでもあります。つまり、父親にとって、今後のキャリアの指針を考えていく上での重要なモラトリアムとも言えるのです。

僕は、良くも悪くもストレートに教員になるという夢を叶えたことで、学生時代、ろくに自己分析もしませんでした。教育に関わる者として、どんな立場で、どんなことを、どんな人たちに届けたいのかを(ある程度)明確に出来たというのは、今後のキャリアを考えていく上でも大きな収穫だったと思っています。


5.最後に

12カ月の育休期間は、経済的価値には換算できないものでした。余談ですが、育児休業給付金は非課税のため、僕の場合はトータルでの収入としては前年比67%となりました。ただし、この給付金は「所得」扱いにはならないため、次年度の住民税や保育園料が安くなるというメリットもあります。

将来的に子どもを授かったら育休を取りたい!という方は、今のうちから育休中の所得減も含めて計画に入れておくと良いかもしれません。

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高校から大学、大学院、そして就職と、常に最短距離を走ってきた僕にとって、立ち止まって考える時間がどうしても必要だったのだと思います。

4月から、僕は父親であり、夫であり、教師である齋藤亮次に戻ります。

この期間で出逢った方々とのご縁や、学んできたことを、世の中に精一杯還元していきたいと考えております。今後とも、どうぞ宜しくお願いします!


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