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博士卒が重宝されない理由はこれしかない

こんにちは、りょーです。

今回は博士課程にいる中で、博士号を取得しようとしている身にも関わらず、「博士はスゴい!日本はドクターを評価しなすぎだ!」という風潮に違和感を感じています。今回はそのことについて書こうと思います。

日本企業は博士号を持っている人に対して、そこまで高待遇なポジションを多くは提供できてはいないです(一部を除いて)。しかし、海外に目を向けると博士卒の人間は重宝されるという話をよく聞ききます。

この日本の現状に対して「研究を"頑張ってきた"人にひどい扱いだ」とかこういう言葉が出てくるのが不思議に思っていました。

博士課程真っ只中にいる私からすれば、「がんばった」とかどうでもいいし、別にすごくもない博士課程卒の待遇が抜きんでていないのはもっともじゃないかな、、、と思ってしまいます。

今回は、そんな世間とのずれというか、博士卒が美化されているこの状況をうまく伝えられればいいかなと思っております!


博士過程で何をしてる?何かすごいの?

単純に、「博士卒の人間はそこまでもてはやされるべき存在なのか?」と疑問を持っています。

そもそも博士課程で何をしているのか、というところがピンと来ない人もいると思うので一度明確にして起きます。抽象度はかなり高めですので、悪しからず。

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博士課程では、1つの研究に注力し、様々な手法を試したりしながら結果を論文としてまとめ上げることになります。

特に博士課程の卒業には、認定に値する「査読付き論文」が必要であることがあります。
「査読付き」とは研究論文を、論文を書いた人とは別の人で、同じ分野の人が、論文の内容に科学的信憑性があるかどうかを吟味し、疑問点がある場合は再度質問を著者に投げて、著者はそれを修正するなり論破するなりする手順を踏んだもの、ということです。
この過程を踏んで、論文をより価値のあるものに仕上げていくわけです。

この論文化、という作業が研究者にとってはメインの仕事になり、これがこなせるレベルの人間に与えられる称号が「博士(ドクター)」であるわけです。


では、この作業内容を聞いて、こいつうちの会社にほしい!なんて要素ありました?

大丈夫です、「ない」が正解です。笑

これだけ博士課程で行なっていることを抽象的に見たとき、「博士=すごい」と言っている人はアホに見えてきませんか?
なので、広い意味で「博士を積極的に採用しない日本企業はだめだ!」はかなり的を射ていない議論になります。

とりあえずこの段階で、この抽象化と定義づけをしたことで「博士=すごい」はなくなりました。


「博士号」が担保するのはたった2つの能力

分野を全く括ることなく考えると、博士が持つ共通した能力は「高い論理的思考力」と「それらをまとめる力」の2つです。

これは上に書いた博士号取得のために培われる力です。"論理的"に論文に研究内容を"まとめ上げる"。これで無事博士号です。これらの能力に加えて、それぞれの研究分野に特化した「専門性」が付随してきます。

もちろん博士課程を修了するための論文化には、様々な問題にぶち当たり、それらを乗り越えていく「発想力」「問題解決能力」など、付随してくる力がいくつもあります。

ここまで書いたら、なんとなくすごい人間が出来上がりそうな気がしますよね?
しかし、上にあげたような専門的な部分に関しては「プロフェッショナル」ですが、それ以外は「ズブの素人」です。


例を出して考えてみましょう。

メジャーリーガーってめちゃくちゃすごいですよね。年俸数億もらってるメジャーリーガーは野球のプロフェッショナルです。この人がプログラマーになりたい、というからって数1,000万出せますか?

今回の話はこれと同じ。人工知能の研究を博士課程までしていた人は、人工知能のスペシャリストです。そんな人にAI開発の会社が何千万と払うのはわかります。
しかし、応用が効く可能性があるにせよ、この人が例えば営業職とかになりたがったら、その人に1,000万円以上出しますか?

さすがに出せないですよね。

つまり、博士課程まで極めた研究分野の延長や派生の仕事に着くのであれば、VIP待遇をするべきですが、物理をやっていた人間が化学をやりたいとか言い出した時に、優遇してもらおう、優遇してあげよう、はおかしな話だってことになりますね。


「頑張った=すごい」はおかしい

「博士課程を出た人はすごい!研究をやり遂げるぐらい頑張った人を評価しないなんておかしい!」
なんて言う人は博士課程というものから縁遠いバカだろうと容易に想像がつきます。

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どんな仕事でもそうだとは思いますが、「結果」が全てです
別に頑張ったから博士号をもらえるわけじゃないんですよ。博士として認めるにふさわしい研究成果とそれをまとめ上げる力があるから獲得できる称号です。

逆に言えば、早期に結果を創出できれば3年も経たずに博士号を取得できるし、論文審査のみで博士号を取得できるシステムも存在ます。

研究を乗り越えたことがすごいのではなく、博士号を与えるにふさわしい成果を残しているからすごいんです。

だから、「研究室というのはブラック企業みたいなものだから。。。」とか「研究を頑張ったなんてすごい!」みたいなのは論外なんですよ。
(もちろんそれがしんどいことは自分が身をもって体験中です笑)


博士学生や博士卒が嘆くなんて言語道断

このような「成果への意識」や、「博士課程のシステム」を把握できていない人から、「博士卒の待遇改善」の話が出るのは、まぁ仕方ない(仕方なくない!笑)です。

しかし、色々な意見を見ていると、実際に博士課程にいる学生が、就職を考えた時に「待遇が悪い!」と言っていることが多々あります。

何様だこいつって話ですよね笑

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実際に私が仕事で会うIT系の会社の人や、会社の採用担当の人と話をしていると、博士課程卒業者の扱いが修士や学部卒と大きく差別化されていないと、興味を失うことが多いそうです。

博士課程を終えた、というプライドがあるんでしょう。しょうもないw。まぁそういう人をとったところで、圧倒的な成果は残さないだろうからいいでしょう。


これまでの博士課程での研究で、成果が一番大事だと言っているのに、就職したらそうではないと思っているんですかね。

博士課程にいながらこれまでフリーランスでライターやエンジニアの仕事をしてきている自分からすれば、大きな差はないと思っています。
依頼された内容に対して、それをクリアする成果を収めることで給与が支払われる。シンプルです。


「社会経験不足」とか言うネガキャン

大学に入って、大学院(修士課程)に行き、博士課程を終えるまで全てをストレートに終わらせてもまぁ大体27歳とかです。

博士課程にいくときによく言われるのがこの年齢の話。結局ずっと学生をしてきた場合、「27歳まで社会経験がない」というネガティブなレッテルが貼られるわけです。

けどこれはまぁしょうがないと思ってます。ないもんはないし、事実を突きつけられて狼狽して、文句を垂れているパターンではないかと私は思っています。

かく言う私自身も、「27歳まで社会経験がない」というダサい称号には別に目をつぶっていればいいわけですが、かくいう私もこう言われるのがすこぶる嫌なので(笑)、自分の得意分野や、研究で身につけた技術を活用してフリーランスの仕事をするようにしています。

個人的にコミュニケーションをとってフリーの仕事を獲得してきているので、自分を売り込む力もあり、継続して仕事がもらえる成果創出能力もあり、「社会経験」ってやつも積んで、少しはこういうことから離れることができたのではないかなと思っています。

こうやって黙らせればいいんです笑。黙ってたら言われ放題なので。博士課程の皆さん、社会経験って言ってもらえるような成果出しましょ。研究と同じです!


そもそも企業に入ろうとしている場合、自分がしてきた研究の道を突き進むのではなくて、分野を変えようとしていることが大半なわけだから、経歴をリセットするようなものです。

そこまでに経験していない分野に突入するのであれば、そこまででどんなに研究を進めていても「社会経験」どころか「未経験」なので、割り切ってやっていくしかないのではないかなと思います。

そしてこれは決して博士卒の人間にだけ言われることでもないと思うので、「27歳で社会経験ウンヌン」の話はスルーでいいかもしれないですね笑


まとめ

実際に博士課程にいて、フリーランス等で会社とも関わってきた私だからわかる、博士号に対する世間と会社の認識のずれについて書いて見ました。

今回は博士号を持ちながら、研究ではなく企業就職であったりに飛び込む場合の話で、実際に研究に邁進している方は、やはり専門家としてすばらしいし、尊敬です。

海外の企業で博士号をもつ人が重宝される理由はきっと、過去の博士の人が圧倒的な成果を創出したからではないかと思っています。

単純に世間的に、「博士のやつは使えるな!」ってなっているということです。

しかし日本ではこの印象だけあって、たぶん使えない人が多いのでしょう笑日本のこの環境を変えるには、博士課程の人口が増えた30-40代が圧倒的に社会を変えるほどの成果をあげてこなかったことに原因があるかと。なら、私たちの世代の博士卒が、この環境を変えられればいいなと思いますね!

なんだかんだで自分は博士課程に進んで、研究を集中してする時間があってよかったと思ってるし、後悔もありません。ここでつけた力のおかげで違う仕事もできてるし、成果にストイックになれるという点では最高な選択だったと思います!

今後の人生で、ここでの経験と博士号がプラスに作用してくれるよう、自己研鑽は続けていこうと思います!


抽象的な話になり、理解しづらい部分があったら申し訳ありません。コメントにご意見いただけるとすごく嬉しいです!よければスキ、フォローもお願いします!!

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