見出し画像

不死の狩猟官 第1話「クソったれな人生」

わたなべりょう

面接官「18歳。高卒ねぇ……資格は持ってる?」
霧崎「特にないっす」
面接官「うーん。君も知ってると思うけど、十六年前に東京に不死者が現れてから景気は最悪だからねぇ」
霧崎「つまり、正社員にはなれないってことすか?」
面接官「残念だけど。今後の活躍をお祈りしてるよ」
霧崎「そうっすか……」
霧崎はプリン色の頭を下げて一礼すると、肩を落としながら面接室を後にする。
外に出た霧崎の前には夜に輝く港区のオフィスビル、そして、足早に行き交うサラリーマンの姿が眩しく映る。
霧崎「はぁ。これで五十三回目のお祈りだ……神はいねえのか」
霧崎はため息をつきながら乱雑にネクタイを緩め、気だるげに駅に向かって歩きだす。
駅に着くとホームには人が溢れていた。
車掌「人身事故のため運転は当面のあいだ見あわせとなります」
霧崎「どうせまた自殺だろ。歩いて帰るか」
霧崎は仕方なく駅を出ると、駅前ビルの電光掲示板に人だかりができていた。
電光掲示板にはニュースキャスターの女性がひとりと速報のテロップが映っている。
ニュースキャスター「先ほど港区赤坂三丁目付近にて不死者の姿が確認されたとのことです。噛まれれば感染の可能性があるので、付近の方は外出を控えるようにしてください」
霧崎「俺ん家の近くじゃん」



霧崎は駅から少し歩いた先の自販機の前で立ち止まり、購入した冷たいアイスコーヒーに口をつけ一服する。
霧崎「不景気ねぇ……にしても、アイスコーヒーはブラックが最高だ」
霧崎は飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に放り投げ、再び自宅をめざして歩きだす。
しかし、それから少し歩いたところで霧崎は尿意に襲われる。
霧崎「やべぇ、もう漏れる」
霧崎はできるかぎり人がいない道を探し、うす暗い路地裏にたどり着く。そして、路地裏の電信柱の影でスラックスのチャックを降ろす。
霧崎「やっぱり立ちションは最高だぜ」
パンパンになった膀胱の痛みから解放された霧崎は鼻歌まじりにチャックを上げる。
その場から立ち去ろうとする霧崎の視界に人影らしきものが映る。
霧崎は路地裏の奥に誰かがいることに気づく。
霧崎「酔っ払いか?」
うす暗いなか街灯に照らされて見えるのはアスファルトにしゃがみこむ背広の男性の姿だ。飲み過ぎてゲロを吐いているように見える。
霧崎「おい、おっさん大丈夫か?」
背広の男「……」
霧崎が少し遠くから呼びかけても男から返事はない。
霧崎「こりゃ相当のんでるな。駅まで肩を貸してやるか」
男に近づく霧崎。近づくにつれ、男の輪郭と手元が街灯に照らされてハッキリ見える。
霧崎は男の異常な様子に思わず尻餅をつく。
霧崎「なんだよ、これ……」
男の前にはひとりの女性の死体が転がっている。そして、血だまりの中、男はまるで飢えた獣のようにその女性の死体の臓物に牙を立て食らっている。
背広の男「ア゙ァァ」
物音に気づいた男は振り返り、声にはならない声をあげながらゆっくり霧崎ににじり寄る。
男の顔はもはや人間ではなかった。顔の皮はめくれ、血管と筋肉が露出し、歯は獣のように鋭く尖っている。
霧崎「不死者がなんでこんな所に……」
男の不死者「ア゙ア゙ァァ」
男の不死者はうめき声をあげながらジリジリと霧崎に詰めよる。
霧崎「く、来るな」
霧崎は逃げようとするも腰が抜けて立ち上がることができない。
男の不死者は牙をむき、霧崎に飛びかかる。
男の不死者「ア゙ア゙ア゙ァァ」
霧崎「ぐわぁぁぁ」
男の不死者はまるでピラニアのように霧崎の腹に獰猛にかぶりつき、乱雑に臓物を食いあさる。
霧崎は血だまりのなか苦痛に顔を歪める。しかし、次第に身体の感覚がなくなり意識が朦朧とする。
霧崎「クソったれな人生だ……正社員にもなれない……彼女もいない……死にたくねぇ……」
男の不死者は霧崎の臓物を平らげると、満足したのか、地面に横たわる霧崎に背を向け、また新たな獲物を求めてゆっくり歩を進める。
男の不死者「ア゙ア゙ア゙ァァ」
一方、冷たいアスファルトに横たわる霧崎はピクリとも動かない。当たり前だ。臓物という臓物は食い荒らされ、おびただしい血が流れているのだから。霧崎は明らかに死亡していた。
霧崎「……」
しかし、不思議な事が起きた。霧崎の血がまるで意志をもった生物のように動き始めたのだ。そして、欠損した部位をカサブタのように蓋をしたかと思いきや、すぐに筋線維と肉を形成した。
霧崎は何事もなかったかのようにゆっくりと起き上がる。
霧崎「クソッ……そもそもお前ら不死者がいなければ、不景気じゃなかったし、俺も正社員になって彼女もできてたはずなのに……全部お前らのせいだ」
男の不死者「ア゙ア゙ア゙ァァ」
霧崎「この糞ったれが!」
背を向けて歩く男の不死者に向かって勢いよく飛びかかる霧崎。そして、男の不死者の顔を掴み、思いっきりコンクリート壁に叩きつける。
男の不死者「ギャッ」
霧崎「お前らは不死身なんだろ。じゃあ、ずっとこうして遊んでられるな」
霧崎は男の不死者が声を上げるたびに不気味な笑みを浮かべ、何度も何度も執拗に相手の頭をコンクリート壁に打ちつける。その様子は先ほどまでの霧崎とは明らかに違った。
夜が明け、朝陽が見える。
男の不死者はすでに動かなくなっていた。しかし、それでも霧崎は狂ったように相手の顔をコンクリート壁に打ちつけ続けていた。



路地裏に一台の黒塗りの高級車が停まる。
霧崎は車のライトに照らされて、ようやく不死者の顔から手を放す。
霧崎「なんだ?」
黒塗りの高級車の後部座席からすらりとした黒スーツの女性が降りる。朝陽に照らされてクリーム色のポニーテールと澄んだ青い瞳が輝く。風に運ばれてほのかに甘い匂いが漂う。
金髪碧眼の女「不死者を殺す奇妙な不死者がいるって聞いて来たけど、本当みたいだね」
霧崎「あんた……誰だ?」
金髪碧眼の女「へぇー驚いた。君、意識は人間のままなんだ。私は国家不死対策局 第三強襲課 一等狩猟官のレイ・アルトリア」
霧崎「狩猟官……ってことは不死者に嚙まれた俺は殺されるのか?」
レイ「君が本当に不死者ならね」
霧崎「どういう意味だ。不死者に嚙まれたら不死者になるんじゃないのか」
レイ「確かに不死者に噛まれた者は数時間以内に不死の獣と化して理性を失う。でも、君は不死の身体でありながら人の意識を保ってる。これは見たことない事例だよ」
霧崎「それじゃ俺はまだ人間なのか、それとも……」
レイ「さぁ、どっちだろうね」
不気味にくすりと笑うレイ。
レイは血だまりの中にたたずむ霧崎にゆっくり歩みよる。
霧崎は思わずいっぽ後ずさる。
霧崎「……」
レイ「君には二つの選択肢がある」
霧崎「二つの選択肢……?」
レイは霧崎の前で立ち止まり、そっと霧崎の耳元に口を寄せる。
レイ「ここで不死者として殺されるか。我々と一緒に不死者を殺し、奪われた東京十三区を奪還するか」
霧崎「国家不死対策局って不死者をぶっ殺す政府直轄の機関だよな……?」
口元に触れそうなくらい近くにあるレイの顔をまっすぐ見つめる霧崎。
レイ「うん」
霧崎「じゃあ、俺も国家公務員になれるのか?」
レイ「そういうことになるね」
霧崎「なる……なりたいです!」
レイ「そっか。じゃあ決まりだね。霧崎君」
霧崎「え? なんで俺の名前を知ってるんすか」
レイ「近くに免許証が落ちてたよ。はいこれ。私のことはレイって呼んで」
霧崎に免許証を渡してから片手を差し伸べるレイ。
霧崎「うっす。レイさん」
図らずも念願の正社員雇用を手に入れた霧崎は喜びながらレイと握手する。
レイ「それじゃあ、行こうか」
レイはスーツを翻し、先ほどまで乗っていた黒塗りの高級車の後部座席に乗りこむ。
霧崎も遅れてレイとは反対方向の後部座席から車内に乗りこむ。



後部座席に乗りこんだ霧崎は隣に座るレイの横顔を見つめる。
霧崎「あのー、行くってどこに行くんすか?」
レイ「もちろん、国家不死対策局にだよ」
霧崎「国家不死対策局……俺がまさか国家公務員になるなんて」
レイは運転席に視線を向ける。
レイ「出してくれる」
運転席に座る黒服の運転手はレイの指示に静かに頷き、車が走り出す。
レイは静かに車窓から流れる平穏な朝の都心の風景を眺める。
車窓から見える風景だけ見れば、不死者なる化物はこの世にいないように見える。しかし、ビル群の奥にはまるで外敵からの侵入を防ぐように大きな大きな壁が延々と果てしなく続く。
霧崎は朝陽に照らされ白く輝くレイの横顔をぼぅと見つめる。
レイは視線を感じたのか車窓から顔を離し、霧崎に顔を向ける。
レイ「何かな?」
霧崎「いや別になんでもないっす」
レイは明らかに動揺する霧崎を見てくすりと笑う。
レイ「霧崎君は嘘が下手なタイプだね」
霧崎「そーすっかね。そ、そうだ。そう言えば、国家不死対策局の給料ってどれくらい貰えるんすか?」
照れてとっさに話題を逸らす霧崎。
レイは下顎に手をおいて少し考えるそぶりを見せる。
レイ「んーまずは一番等級が低い十等狩猟官から始まるから……霧崎君、耳を貸して」
霧崎「はい」
レイに片耳を傾ける霧崎。耳元にレイの息づかいを感じて頬を赤らめる。
レイは運転手を一瞥してから霧崎の耳元で囁く。
レイ「〇×△□」
霧崎「えっ!? そんなに貰えるんすか……」
レイ「狩猟官は警察官よりも軍人よりも殉職しやすい仕事だからね」
霧崎「俺、がんばります!」
レイ「頼もしいことだね。もっとも霧崎君は不死身だから死ににくいと思うけど」
霧崎「でも、敵も不死身なんすよね。そんな相手をどうやってぶっ殺すんすか?」
レイ「不死者を殺す方法は二つあるんだ」
霧崎の顔の前に二本の指を立てるレイ。
霧崎は首をかしげる。
霧崎「二つ?」
レイ「一つは体内から全ての血を奪うこと。不死者が不死たる由縁はその血にあるんだ。だから完全に失血させれば、不死者は死ぬ。ちょうど霧崎君がさっき不死者にしたようにね」
霧崎「え? じゃあ、俺も血を流し過ぎたら死ぬんすか」
レイ「霧崎君は死なないよ」
霧崎「なんでそう言いきれるんすか?」
レイ「私はもの知りだから」
霧崎「答えになってないすよ」
レイ「きっとすぐに分かるよ」 
霧崎の心臓に片手を置くレイ。
霧崎は自分の胸に伸ばされた小さい白い手に動揺する。
霧崎「それで不死者を殺すもう一つの方法って?」
レイ「不死者を殺すもう一つの方法はね──いや、この話はまた後にしようか。さぁ、着いたよ」
二人を乗せた車は立派な門を抜け、オフィスビルがひしめく港区の中でもひときわ高い高層ビルの横にゆっくり停車する。
レイは後部座席が出ると、慣れたように高層ビルの中に入っていく。
霧崎もまたレイの後ろを追いかけながら高層ビルの中へ入る。
霧崎は興味津々にビル内を見まわす。
霧崎「ここが……」
レイ「ようこそ。国家不死対策局へ」




翌朝、霧崎はレイに新調してもらった四つどめカフスボタンの黒スーツとガラス加工が施された光沢感が美しい革靴を身につけ、さっそく国家不死対策局に出勤していた。
ビル内の間取と部署については前日に説明を受けていたので、出社するにあたってさほど道に迷うことはなかった。
霧崎はエレベーターから降り、ひとつの部屋の扉の前に立つ。
霧崎「たしか、第三強襲課の執務室はここだよな」
少し緊張しながら木目調が美しい執務室の扉をノックする霧崎。
レイ「どうぞ」
扉を開けると、部屋の奥には朝陽を背にしてチェアに腰かける黒スーツ姿のレイがいくつかの書類に押印しているところだった。
執務机の上にはクリアカップに入ったアイスコーヒーと書類が置かれている。
霧崎「おはようございます」
レイ「おはよう、霧崎君。スーツ、似合ってるね」
霧崎は少しはにかみながら自分のスーツに目を落とす。
霧崎「何から何までレイさんのおかげっす」
レイ「そっか。それはよかった」
霧崎は執務机の上に置かれているクリアカップに入った飲みかけのアイスコーヒーを見つめる。
霧崎「レイさんもアイスコーヒー好きなんすか?」
レイ「うん。昔は苦くて嫌いだったんだけど、近くにいる人がいつも美味しそうに飲むものだから私も飲むようになったんだ」
霧崎「へーそうなんすね」
レイ「……」
レイは何か気になることがあるのか静かにチェアから腰を上げ、神妙なおももちで霧崎ににじり寄る。
霧崎「どうしたんすか?」
じっと見つめながらにじり寄るレイの姿に思わずドキドキする霧崎。
レイは霧崎の前で立ち止まり、唐突に霧崎の首元に手を添わせる。
レイ「じっとして」
霧崎「ちょっ、こんなところじゃマズいっすよ」
レイ「ネクタイ、ズレてるよ」
霧崎「え?」
レイは慣れた手つきで霧崎のネクタイを整える。
レイ「はい。できたよ」
霧崎「あ、ありがとうございます」
レイ「なんか少し残念そうだね」
霧崎「いや、そんなことは。それより用って?」
レイは執務机の前に戻り、チェアに腰を下ろし、いくつかの資料を手にする。
レイ「実はここ数カ月、赤坂で猟奇殺人事件が続いているの。死者は十名以上。死体は全て両腕が欠損した状態で見つかってるんだ」
霧崎「不死者の仕業ですか?」
レイ「おそらく。そこで霧崎君にはこの不死者を探し出して殺して欲しいんだ」
霧崎「それって、つまり初任務ってことですよね?」
レイ「そういうことになるね」
霧崎「任せてください!」
意気揚々と頷く霧崎。
レイは初任務に気をよくする霧崎を見てくすりと笑う。
レイ「いい意気ごみだね。でも、初任務だから霧崎君ひとりでは行かせられないよ」
霧崎「じゃあ、レイさんと一緒に?」
レイ「ううん。実は今日はもうひとり狩猟官を呼んでるんだ。もうすぐこの部屋に来るはずだよ」
ちょうどその時だ。二人がいる執務室にノック音が響く。



執務室の扉を開けて中に入ってきたのは黒スーツがよく似あう白髪まじりの黒髪オールバックに片目に眼帯をつけた中年男性。
レイはチェアに腰かけたまま眼帯の男を見上げる。
レイ「遅かったね。相良君」
相良「急に呼ばれたんだ。文句を言われる筋合いはねえだろ。それから年上には敬語を使え」
レイ「あいわらず堅いね。相良君は」
霧崎は旧来の仲のように親しげにレイに話す相良を見てやや不機嫌になる。
霧崎「あのー、もしかして今回の任務ってこのオッサンとすか?」
相良「あ?」
鋭い目つきで霧崎を睨む相良。
レイは霧崎の問いにこくりと頷く。
レイ「そうだよ。彼は第三強襲課 二等狩猟官の相良惣介君。ベテランだから頼りになるはずだよ」
相良「待て、どういうことだ」
レイ「そう言えば、相良君にはまだ紹介してなかったね。彼は昨日から第三強襲課で預かることになった新人狩猟官の霧崎君だよ」
相良「まさか俺にガキの面倒を見ろと」
レイ「頼めるかな?」
相良は不機嫌そうに腕を組む。
相良「言ったはずだ。俺は新人の面倒はもう見ねえと」
レイ「……」
レイは執務机の上で手を組み、静かに相良を見つめる。
相良はレイの青い目を見て、これ以上の問答に意味がないと悟ったのだろう。
相良「たくっ。俺は先に外に出てるぞ。それから新人、口の利き方には気をつけろ」
執務机から資料を手に取って不機嫌そうに執務室から去る相良。
霧崎「もしかしてオッサン、キレてます?」
レイ「ううん。相良君はああ見えても優しい人だよ。ただ、不器用なだけ」
霧崎「なら、いいすけど。そんじゃあ、俺も急ぎます」
レイに背を向けて、執務室を後にしようとする霧崎。
レイ「待って」
霧崎「え?」
ドアノブから手を離し、レイに向き直る霧崎。
レイ「任務に行く前に霧崎君に渡したい物があるんだ」
レイはそう言って、チェアから腰を上げ、事務所の片隅に置いてある金庫の前に行く。
霧崎「俺に渡したいもの……?」
まじまじと金庫を見つめる霧崎。
レイは金庫の中から風呂敷に包まれた一本の竿状の物体を取り出すと、風呂敷を広げ、霧崎の前にあるものを差し出す。
レイ「霧崎君にこれを預けるよ」
霧崎「刀……?」
レイから一本の刀を受け取る霧崎。
レイは自分の腰にそっと両手を回し、霧崎の顔を見上げる。
レイ「前に不死者を殺す方法が二つあるって言ったこと、覚えてるかな?」
霧崎「えーと、たしか一つは体内から全ての血液を奪うことっすよね」
レイ「うん。でもね、極一部の不死者は本当に不死身だから頭を潰しても心臓を刺しても殺せないんだ」
霧崎「そんなバケモンとどう戦うんすか」
レイ「だからその刀があるの」
不死殺しの刀を見つめるレイ。
霧崎は眉をひそめながらレイの顔を覗く。
霧崎「どういう意味すか?」
レイ「その刀はね、不死殺しの刀って言うんだ。斬れば、どんな不死の者でさえ殺せる。でもね、不死殺しの刀を抜いた者は抜いた瞬間に死んでしまう呪いがかけられているの」
霧崎「……不死身の俺なら使いこなせるかもしれないってことすか?」
レイ「そう。その刀は霧崎君にしか使えないんだ」
霧崎「俺にしか使えない、か」
手にした不死殺しの刀をまじまじと見つめる霧崎。
レイは霧崎の唇に当たるすれすれまで顔を近づけ、霧崎を見つめる。
レイ「だから霧崎君にお願いがあるの」
霧崎「は、はい」
レイ「私のために不死身の敵を殺して欲しいんだ」
霧崎「もちろん。俺はレイさんのために不死者を斬りますよ」
照れながらレイの青い瞳を見つめて答える霧崎。
レイはその答えに不敵な笑みを浮かべ、執務机の前に戻る。そして、チェアに腰かけた後、今度は神妙なおももちを見せる。
レイ「それから任務に行く前にひとつだけ覚えておいて欲しいことがあるんだ」
霧崎「へ?」
レイ「仲間を見捨てるヤツはクズだよ」
霧崎「はい。覚えておきます」
霧崎はレイに一礼すると、不死殺しの刀を片手に執務室を後にした。

不死の狩猟官 第1話「クソったれな人生」-完-

第2話「仲間を見捨てる奴はクズ」

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!