仲の良い上司から教わった大切な事
葬儀社に勤めて居た頃のことです。当時、僕には上司が2人居ました。
1人は葬儀の部署を取りまとめる、いわば所属長です。そしてもう1人は、副長でした。
僕が退職するまでの4年間に、所属長は変わりましたが、副長は定年を経て再雇用されるまで、変わることはありませんでした。
僕が葬儀社を退職することになったのは、所属長と馬が合わなかったのが原因です。所属長は、はっきり申し上げて人の上に立つ資格のない上司として相応しくない人間でした。しかし、副長とは上手にやってこれました。
今回は、副長から教えていただいた、仕事をする上で僕が今も大切にしている「心構え」についてお話します。
副長はこの道20年の大ベテラン
副長はかつて別の葬儀社に勤めていて、それから僕が勤めていた葬儀社に転職して勤めていました。それぞれの葬儀社で10年以上のキャリアがあり、まさに「生き字引」と呼んでも過言ではありません。葬儀だけでなく、宗教についての知識も豊富で、寺社の対応も行っていました。本当に、宗教者クラスの知識の持ち主でした。
余談ですが、副長の見た目は「赤い霊柩車シリーズ」に登場する大村崑氏が演じる石原葬儀社の専務、秋山隆男に似ていました。(一級葬祭ディレクター資格を持っているところまでそっくり!)
僕はそんな副長から、仕事のイロハを教えていただきました。副長とは宗教のことなどで話すこともあり、所属長に比べたら上手に付き合っていけました。
もちろん、いつでも上手にやっていたわけではなく、厳しいことを何度も云われて辟易していた時期もあります。しかし、それでも辞めなかったのは「困った時は相談すれば、必ず力になってくれる」ためでした。さらに葬儀業20年で身についた豊富な知識と経験は本物なので、副長からの指導は理不尽なものではなく、納得がいくものでした。
僕が副長からいくら厳しいことを言われても、辞めなかったのに対し、所属長から言われたことで退職を決意したのは、そこに差がありました。
そんな副長から教えていただいた、今も大切にしていること。それは葬儀社に入社して最初の社内研修で、副長から言われた言葉です。
「ルトくん、この『正しい』という字は、どう書くか分かる?」
「えっ、どういうことですか?」
僕はそう言われた時、何を言っているのか全く分かりませんでした。そんなこと、一度も考えたことが無かったのです。
分からない僕に、副長はその理由を教えてくれました。
「『正しい』という字はね『一度止まって』と書くんだ。正しいという字を分解すると、漢数字の『一』と止まるの『止』になるよね? この仕事では間違いは許されない。だから少しでも疑問に思ったときは、そのまま進めるのではなくて、誰かに相談したり、確認することが大切なんだ。それで間違いを防げる。だから『一度止まって、正しくなる』んだよ」
僕は副長の言葉に深く感銘を受けました。とても分かりやすく、深い言葉でした。僕はその場でメモ帳に「一度止まって、正しくなる」という言葉を書き込みました。
しばらくの間、僕はこの言葉をメモ帳の余白に書き込み、常に目に入るようにしていました。
この言葉を教えてくれた副長には、今でも感謝しています。
どんな仕事でも大切な事
僕はこれを葬儀の仕事で覚えましたが、これは他の仕事でも同じく大切な事に、間違いは無いと思います。
仕様書に不審な点があった。行き先がよく分からなくなった。お客様からお願いされた内容に、あやふやなところがあった……。
こういったことは、どんな仕事でも起こりうることではないでしょうか?
少しでも不安になった時は「一度止まって」みることが大切です。
同僚や上司に相談したり、取引先やお客様に確認を取るなどして、あやふやなところを無くしてしまう。そうすることによって「一度止まって、正しくなる」と思います。
これと似た意味の言葉は「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」でしょうか?
かつて社会保険労務士事務所に勤めていた頃から「わからないことはどんどん、上司や同僚、先輩、役所、顧問先に聞いて処理すること」と言われていましたが、副長の言葉はそれを簡潔かつ分かりやすく表現してくれたものでした。
来年から就職する学生さん。
今も第一線で活躍している皆さん。
就活している皆さん。
僕が人生の先輩から教わったこの言葉を、どうか皆さんにも覚えていただき、そして自らの血肉としていただきたいと思います。
「一度止まって、正しくなる」
より良く、過ごしやすい社会になっていくために大切なことは、この言葉に籠っていると思います。
少しでも「なんかおかしいな…」と感じた時には、この言葉を思い出していただけましたら、私としても嬉しいです。
それではっ!
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