法の下に生きる人間〈第96日〉

いよいよ本シリーズも、今週でラストである。

最後は、つい昨年に話題になったインボイス制度と絡めて、「消費税法」について取り上げることにしよう。

消費税の歴史は「まだ35年」と捉えるか、「もう35年」と捉えるか、人によってさまざまだろう。

昭和天皇が亡くなり、平成元年4月1日に「消費税」は導入された。つまり、平成生まれの人にとっては、生まれたときから消費税があったことになる(昭和天皇が亡くなったのが1月7日なので、早生まれの人の一部は当てはまらないが、ただし、消費税法が施行されたのは昭和天皇が亡くなる8日前の12月30日だった)。

今では、消費税法能力検定まで実施されている。最難関の1級から3級まであるので、興味がある方はテキストを買って受験してみるのも良いだろう。直近だと5月に実施されるが、申込受付は来週4月1日から始まる。

さて、本シリーズでは、インボイス制度については具体的には触れない。

むしろ、消費税の仕組みや法的定義のほうにウエイトを置きたい。

私たちは、今、政府が消費税の税収をどれだけ得ているか知っているだろうか。

毎年7月の頭に、財務省が前年度の決算概要を発表するのだが、令和4年度の消費税収は約23兆円、所得税収は約22兆円、法人税収は約14兆円だった。

かつては、所得税収のほうが消費税収よりも多かったのだが、消費税率が令和元年10月に10%に引き上げられてからは、逆転したのである。

当初、平成元年に消費税が導入されたときは、消費税率は3%だった。この税率のままだと、今でもおそらく法人税よりも少なく、8〜10兆円程度だと見込まれる。

今年7月の決算発表では、さらに消費税収は増えるだろう。なぜなら物価が上がっているし、コロナ禍も完全に明けて、私たちの消費行動がV字回復しているからである。

国はこれだけ消費税収を得て、私たちの暮らしはギリギリだと憤る人もいると思うが、平成26年度から消費税収は、社会保障4経費(年金、介護、医療、子ども・子育て支援)に充てられている。

ただ、それでも足りないくらい、日本の福祉行政は財政的に厳しいのである。

先ほどの社会保障4経費の令和5年度予算は、32兆円を計上していた。つまり、まだ10兆円必要なのだが、近年の災害支援にかかる予算増や、防衛費の増額をみると、どこからお金を引っ張ってこればよいのか、自治体も悩んでいるのが実情である。

例えば、私たち国民の中には、子育て支援政策を充実してくれと要望する人も少なくないが、一方で能登半島地震の被災地支援のことも考えなければならない。

さらには、後期高齢者になる団塊の世代の人たち(=働きざかりの中年世代の親にあたる)の介護や福祉サービスもこれから優先度が高くなってくる。

消費税をゼロにしろとか、3%に戻せという人がいるが、今の行政サービスがさまざまな分野である程度充実しているのはなぜなのかを考える必要がある。

消費税は、今や主要3税(=あと2つは所得税と法人税)の税収トップの税目である。

明日も引き続き解説をしていくので、お楽しみいただけるとありがたい。


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