今昔バス物語(3)

昔は、ICカードなんてなかったものだから、運賃箱は、いつも硬貨の投入音が聞こえてきたものである。

また、通勤定期や通学定期を持っている会社員や学生は、運転手に券面を提示して乗っていた。

今では、硬貨の投入音より、圧倒的にICカードのタッチによる電子音が鳴り響く。

運賃後払いのバスでは、バス停で降りる前に、信号で止まるタイミングを見計らって、両替をする人も多かった。そのときは、両替によって出てくる硬貨のジャラララという音がよく車内に響き渡った。

ときどき、自分も経験があるが、バスの走行中に両替する人がいた。

昔は、今のように超安全運転で運転するバスの運転手はいなくて、荒っぽい運転をする運転手もいた。そういう運転手にあたったときは、バスがカーブを曲がるときなど、思わずよろけそうになって、片手に硬貨を握りながら、もう片方の手であわてて手すりにつかまったりしたものだ。

さて、今はICカードで便利になったとはいえ、ときどき決済方法が分かっていない人が乗っていることがある。

例えば、デビッドカードで買い物するのと同じ要領で、ピッとまさにそのデビッドカードを当てる人がいる。

いや、そのデビッドカードに交通系ICカードが一体化していれば使えるが、それ使えないでしょというパターンである。

同様に、高齢の方だと、クレジットカードを当たり前のようにピッと当てる人がいる。さすがに、開いた口がふさがらなかった。

また、スマホタッチで支払うケースでは、ときどきエラー音が聞こえてくる。

チャージ残高が不足している、そもそもおサイフケータイ機能がない、SuicaもしくはPASMOが入っていないというのが、エラーの主な原因である。

現金ではなく、電子決済となると、カードもしくはスマホひとつで何でもできるものだと勘違いしている人が、私の世代より上の方にはまだまだいるようだ。

設定をしていないのに、機械が反応するわけがないということは、少し考えれば分かりそうなものだが、まずはバスに乗る習慣を身につけたいものである。

ふだん車を使うことがほとんどだという人が、たまにバスに乗るとこういうことが起こるのである。






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