久保 洋介

エネルギー情勢を「深く、おもしろく」。エネルギー問題や国際情勢になじみない方を念頭に、…

久保 洋介

エネルギー情勢を「深く、おもしろく」。エネルギー問題や国際情勢になじみない方を念頭に、基礎となる歴史的文脈を示しながら情報発信することを目指します。エネルギーリテラシーの健全な向上に少しでも貢献できればと思っています。 国際情勢については上山晃の語録も公開します。

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    ノンフィクション書評サイトHONZ(2011−2024)のアーカイブ

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【上山晃語録7】ゲームメーカーとしてのOPEC(石油輸出国機構)

じゃあ、今日はOPECの話をしましょうか。 A. 力をつけてきたOPEC ざっくり言うと、200~300年前は欧米の国々が植民地を支配してた時代。その中で、第一次世界大戦が起こった時、チャーチルって当時の英国海軍大臣(のちの首相)が船の燃料を石炭から石油に変えて、それから石油がすごく大事なものになったんだ。その頃から中東は石油がたくさんある場所として知られていた。 で、その中東を昔支配していたオスマントルコ帝国が崩れて、大手の石油会社「セブンシスターズ」が中東での石油の

    • 【上山晃語録6】ゲームメーカーとしての中央銀行

      さて、歴史の中で中央銀行がどう動いてきたか、ざっとお話しますね。 A. 中央銀行の誕生 始めは、宗教革命。カソリック中心のヨーロッパからプロテスタントが生まれました。カソリックはユダヤ人に寛容ではなかったけど、プロテスタントは受け入れた。そしてプロテスタントが知識層に広がっていった。文字が読めて自分で聖書が読めると、教会に行く必要なんてなくなるから、知識層にはウケたんだよね。こうして、知識を持った人々とユダヤ人のつながりができて、金融システムが生まれていく。 その最初の

      • 【上山晃語録5】ゲームメーカーとしてのイギリス

        さて、みんながよく知っているイギリス。実は、1688年の名誉革命以降、世界の「ゲームメーカー」として、かなりの影響を持っていたんだよ。でもその前の時代、プロテスタントとカトリックの間で宗教的な対立があった中、オランダが経済的なパワーハウスだったんだ。彼らは世界初の中央銀行を設立して、東インド会社を通じて、たとえばインドネシアで大きな取引をして儲けた。 1688年の名誉革命で、オランダの王、オレンジ王がイギリスに来て、それに伴い多くのプロテスタント商人もイギリスへと流れ込んだ

        • 【上山晃語録4】ゲームメーカーとしてのアメリカ

          アメリカのこと話すと、アメリカの特徴ってね、1774年に生まれた時からもうユニークで、他の国とは全然違うんだよ。アメリカの政府制度や建国の精神を考える時、いくつか大事なポイントがあるんだよね。 A. 既存の否定から始まった国アメリカ まず、ヨーロッパでの専制君主や王政を見て、それを全否定するような考え方から、アメリカは生まれた。ヨーロッパでの三権分立の考えを、アメリカが実際の政府として最初に取り入れたのは有名な話。つまり、権力を一カ所に集中させるのはダメだと思ったんだよ。

        【上山晃語録7】ゲームメーカーとしてのOPEC(石油輸出国機構)

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          【上山晃語録3】ゲームメーカーとしての中国

          今日は中国のゲームメーカーとしての視点から、ちょっと解説したいんだけど、その前に昔の中国に対する見方がけっこう間違ってたっていうのがね、すごく多かったわけ。特に欧米の人たちは中国に対して全然間違ったイメージを持ってたんだよね。 日本や韓国、シンガポール、台湾などのアジアの国々は、もともとは軍事独裁だったり国の権力がすごく強かったりしてたけど、結局は民主主義に成功裡に移行した例があったから、欧米の人たちはかなり自信持ってたんだ。つまり民主主義がみんなに共通の価値だと思ってて、

          【上山晃語録3】ゲームメーカーとしての中国

          【上山晃語録2】ゲームメーカーとしてのヨーロッパ

          さて、今日はお話ししたいのは、欧州のゲームメーカーとしてのパワー。欧州はそのパワーを歴史的な背景から蓄積してきて、今なお世界に影響与える能力を持ってるからね。 欧州の歴史的パワー:大航海時代からEU設立まで まず欧州は、大航海時代に始まる巨大なarbitrage貿易を通じて、富を蓄積してきた。そのピークが何かと言えば、間違いなく産業革命だった。この時、驚異的な生産性により、資本の蓄積が飛躍的に進んだわけよ。 さらに、神という絶対的な存在を宗教だけに限定し、世俗の世界と政

          【上山晃語録2】ゲームメーカーとしてのヨーロッパ

          【上山晃語録1】国際情勢におけるゲームのルールとは

          A. 19世紀のゲームのルールゲームメーカー イギリスによる金本位制 まずは基本的なとこから。1815年、ナポレオン戦争を終結させたワーテルローの戦いは、現代の世界を理解するための重要なキーポイントになるんだよ。この戦いでフランスは敗北し、賠償金をイギリスに対して金で支払った。ここから始まったのが、スターリング・ポンド金本位制。これがトリガーとなり、イギリスがゲームメーカーとして約100年間、世界に影響を与える「パックス・ブリタニカ」時代が開幕したわけよ。 この賠償金がき

          【上山晃語録1】国際情勢におけるゲームのルールとは

          【上山晃 Q&A】米中対立と第一次世界大戦の類似性

          【質問】 過去のパターンとの類似性という観点でいうと、現代の米中対立は、第一次世界大戦前にイギリスとドイツの対立に似ているってことですか? 【回答】 そのように捉えることは可能です。現在のウクライナ戦争は、第一次世界大戦のような歴史的な転換点となる可能性があります。その一つの影響が、ドル基軸通貨としての役割に現れています。ドルはこれまで各国にとって信頼性のある通貨でしたが、アメリカがドルを武器化し過ぎたことにより、世界中の国々がドル依存にリスクを感じるようになりました。

          【上山晃 Q&A】米中対立と第一次世界大戦の類似性

          【上山晃Q&A】金本位制から米ドル体制への移行:歴史的視点

          【質問】 金本位制から米ドル体制への移行はどういうプロセスを辿ったのか。 【回答】 金本位制から米ドル体制への移行は、幾つかの重要な歴史的瞬間を通じて進行しました。 まず、スターリング・ポンドの衰退は1930年代の大不況が大きな要因です。この大不況により、当時の覇権国家であったイギリスは自国の経済を保護するため、英連邦経済圏に絞ったブロック経済を採用、他国を排除しました。この結果、覇権国家としてのイギリスの地位は揺らぎ始めました。 次に、第二次世界大戦期に欧州から多

          【上山晃Q&A】金本位制から米ドル体制への移行:歴史的視点

          【上山晃Q&A】アメリカの将来とハンチントンの予測

          【質問】 アメリカの経済状況が良好な中、再び世界覇権を握る道を選ぶか、それとも国内問題に専念するのか。 【回答】 それについては、サミュエル・ハンチントンの2004年の著書『アメリカの分断』が示す一つの視点を考えると良いでしょう。彼は、2045年頃には所謂WASP(白人アングロ・サクソン・プロテスタント)がアメリカ国内のマイノリティになり、アメリカという国家が分断する可能性があると提唱しています。もしかすると、現在の「合衆国」ではなく、いくつかの州が独立する可能性もある

          【上山晃Q&A】アメリカの将来とハンチントンの予測

          【上山晃メモ】歴史を理解する上で重要な3冊

          ヘンリー・キッシンジャー、フランシス・フクヤマ、そしてサミュエル・ハンチントン。これらの人々は、我々が歴史を理解し、現在の世界事象を解釈する際に非常に重要な役割を果たしています。彼らの著作『国際秩序』、『歴史の終わり』、そして『文明の衝突』は、我々が歴史的な文脈を理解するための鍵となります。 キッシンジャーの『国際秩序』と『外交』は、歴史の認識や流れを理解するために必要不可欠です。彼の視点から見ると、我々は歴史的な事件や状況を、個々の孤立した点ではなく、広大な文脈の一部とし

          【上山晃メモ】歴史を理解する上で重要な3冊

          『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』

          21世紀を理解する上で読むべき経済書 本書は、軍事・経済・生活に欠かせない戦略物資、半導体をめぐる国家や企業の攻防をいきいきと描いたノンフィクションだ。半導体業界の興亡を、個人や企業のミクロなエピソードで紡ぎ、マクロな経済史・産業史へと昇華させる。『石油の世紀』でピューリッツァー賞を受賞したダニエル・ヤーギンをして、「21世紀を理解する上で読むべき一冊」と言わしめた。 著者であるクリス・ミラーは30代の新進気鋭の経済史家。国際関係学で有名なタフツ大学フレッチャースクールの

          『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』

          『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説

          日本でエネルギーがここまで話題になるのは2011年の東日本大震災以来だろうか。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した天然ガス価格高騰、エネルギー価格を中心とするインフレ懸念、カーボンニュートラル取組と、ほぼ毎日のようにエネルギー関連情報がニュースの見出しを飾る日々が続いている。 そうはいっても「そもそもエネルギー問題ってなんぞや」「みな、何を騒いでいるのか」と疑問に思われる人も多いのではないか。馴染み薄いテーマであるからこそ、誰かに分かりやすく解説してもらいたい。そんな願望

          『武器としてのエネルギー地政学』エネルギーの超基本を徹底解説

          『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社

          2021年に原著が発行されて以降、フィナンシャルタイムズ紙や英エコノミスト誌のブックオブザイヤーなど、数々の経済書賞を総ナメにしてきた一冊が翻訳され、遂に日本語でも読めるようなった。 私たちの生活を支えるエネルギーの物流面でなにが起きているのか。メディアではなかなか取り上げられず、業界人ですら知らないことの多いエネルギー物流マーケットの深層が本書では語られる。エネルギー問題がかつてないほどに取り沙汰される今だからこそ読む価値ある一冊である。 気候変動対策が声高に叫ばれる昨

          『THE WORLD FOR SALE 世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』国際政治経済を動かす商社

          『刑務所図書館の人びと』 アヴィスタインバーグ

          ハーバード大学を卒業したものの自分の進むべき方向を見失っていた青年が刑務所図書館で働いた2年間の奮闘記だ。受刑者が刑務所内の図書館をどのように活用しているかなど今まで考えたこともなかった。本ブログ読者のほとんどとは無縁な世界の話だろうが、エピソードが面白いだけでなく、刑罰のありかたについても考えさせられる内容なので読む価値ある本だ。 筆者はユダヤ系アメリカ人の青年。ユダヤ教のラビもしくは医者・弁護士になるべくハーバード大学を卒業した。しかし、本当に自分のやりたいことが分から

          『刑務所図書館の人びと』 アヴィスタインバーグ

          『ハウス・オブ・ヤマナカ』 朽木ゆり子

          黒船の圧力で日本が開港したのが1859年。当時の日本人貿易商は、外国銀行にたっぷりマージンをとられ、また外国海運会社に運賃を決められと甘い汁はほとんど外国に吸い取られていた。それではいかんと、大隈重信や松方正義たち明治政府が国策として日本人による貿易業務・金融業務・海運業務を推進。それに呼応するかたちで日本人の直貿易商が誕生し、生糸・茶・雑貨・陶器・古美術などを輸出し始めた。そんな直貿易商の一つで、欧米に古美術を売りまくったのが、本書が扱う山中商会だ。 第二次世界大戦前、山

          『ハウス・オブ・ヤマナカ』 朽木ゆり子