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【上山晃語録3】ゲームメーカーとしての中国

今日は中国のゲームメーカーとしての視点から、ちょっと解説したいんだけど、その前に昔の中国に対する見方がけっこう間違ってたっていうのがね、すごく多かったわけ。特に欧米の人たちは中国に対して全然間違ったイメージを持ってたんだよね。

日本や韓国、シンガポール、台湾などのアジアの国々は、もともとは軍事独裁だったり国の権力がすごく強かったりしてたけど、結局は民主主義に成功裡に移行した例があったから、欧米の人たちはかなり自信持ってたんだ。つまり民主主義がみんなに共通の価値だと思ってて、だから中国もいずれ同じように民主化すると思い込んでたわけ。でも、それが外れちゃったんだよね、中国では民主化が進まなかった。

韓国や台湾は、一人あたりの国内総生産(GDP)が1万ドルを超えるくらいから、軍事独裁から民主主義へ移行する例があったから、中国も一人あたりのGDPが1万ドル近くになれば自然に民主主義国家に変わると思ってたんだけど、それが外れちゃった。欧米の価値観であるリベラリズムがどこでも通用すると思って、中国を見てたから、まったく間違っちゃったってわけだね。

A. 中国の台頭を許したアメリカ

アメリカが中国を作り上げたという言われ方はよくあるけど、その通りなんだよ。アメリカがずっと中国を支援し続けたおかげで、中国の勢力が台頭することになったんだ。1972年にニクソンがピンポン外交って形で中国に行ったのは、当時の米ソ対立の中でアメリカが中国を味方に引き込む戦略だった。それがうまくいって、アメリカは冷戦の勝者として出てきた。アメリカはこの成功体験から、中国を自分たちの側に置こうと思い込んでたんだ。でも、それが後に間違ってたってこと。

アメリカがなぜ中国を支援し続けたかを考えると、「ヘゲモニー国家に対するチャレンジャーの存在」という観点が参考になると思うんだ。冷戦の時、1990年にソビエト連邦が崩壊して、米ソの対立が終わった。その後のアメリカにとっての新たなチャレンジャーは、当時世界第2の経済力を持つ日本だった。アメリカはグローバリゼーションのルールを日本に押し付け、日本の台頭を抑えようとした。1997-1998年のアジア通貨危機が日本経済に打撃を与え、アメリカ主導のルールに従う象徴である大蔵省も名前を変えることになった。これは日本がアメリカのルールに従うことを示す象徴だった。この間、アメリカは世界第2のGDPを持つ日本の台頭を抑えるため、中国を支援し続けた。

アメリカが中国を支援した大きなトリガーは、2001年の中国のWTO加盟。これにより、アメリカは世界第2の日本に対抗できる国として中国を経済的に支援する一方、安い人件費を利用できる環境を作った。アメリカはグローバリゼーションを普及させるために、中国の役割を重要視した。これに対して、日本はアメリカのルールに従わされ、経済的に低迷した。一方、中国はアメリカの支援を受けて急速に力をつけてきた。

2001年、中国WTO加盟

中国は鄧小平から江沢民、胡錦濤政権まで、外面では謙虚な態度を見せつつ、実際には人材や技術を盗み、力をつけるという戦略をとってきた。これが鄧小平路線と呼ばれるもので、アメリカや欧州も、中国はいずれ民主主義国家になると確信していた。

B. 自信をつけた中国

ここで注目すべきが、2018年に発生したリーマンショックの影響。この出来事が、中国の考え方を変える大きな転換点となったんだ。リーマンショック後、欧米経済は大混乱に陥り、その中で中国は2009年から2010年までの2年間で驚くほどの財政拡大政策を採用し、最初に復興に成功した国になった。その結果、2010年代初めからは世界経済をリードする存在となっていった。この出来事によって、中国の政策立案者たちは自信を持つようになったんだ。

それまで敬意を払っていた欧米勢が、自分たちの金融資本主義に基づくバブルが崩壊し、その後立ち直れなかったのをへて、中国の力を認めざるを得なくなった。一方で、中国はマクロ経済政策をしっかりと打ち出し、自国経済だけでなく世界経済をリードする存在になった。こうした状況から、中国のエリートたちのマインドセットも変わり始めた。特に重要だったのが、2013年に習近平政権が始まったこと。これまでの「韜光養晦」(光を隠し、実力をつける)の方針から一転して、中国は自信を持って自国の力をアピールし始めた。

こうした中国の変節を欧米勢は当初はあまり真剣に受け止めていなかった。しかし、2015年ごろには、共和党出身のマイケル・ピルズベリーが『China 2049』という本を出版。その中で、「中国共産党は1949年に中国を統一し、その100年後には世界のナンバーワンになる」という目標を掲げ、そのために欧米から技術や富を取り込んでいくと明言した。この本が出版されたことで、欧米は初めて中国の本当の意図に気付いた。

『China 2049』

同じころ、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げ、新たな国際金融スキームを提案。これは従来のIMFや世界銀行に代わるもので、アジア地域向けに新しい資金供給を行うものだった。これによって、アメリカ主導のドル基軸通貨システムに対する挑戦が浮き彫りになった。

しかしながら、当初はまだ中国の意図を理解しきれていなかった。特にEU諸国もAIIBに参加し、中国経済を取り込むことを優先していた。中国の脅威とはあまり考えられていなかった。

アメリカは、トランプ政権が始まると、通貨、貿易、技術などで米中の対立が次々と表面化。それでも当初、アメリカ内では中国への脅威感はそれほど高まらなかった。この間にも中国は、国家安全保障を中心に国を発展させる方針をしたたかに推進した。

C. 中国の夢

では、中国がなぜ欧米の経済発展やテクノロジー、お金を取り込もうとしたか、その理由について考えてみよう。そのヒントは、2013年の習近平のスピーチにある「中国の夢」というキーワード。毛沢東時代から国家主席などのトップ人物は、「夢」といった抽象的な言葉をあまり使わなかったんだけど、習近平は「中国の夢」という表現を使った。これが、中国国内や欧米のメディア、歴史家の一部によって注目されたんだよね。

習近平国家主席と中国

過去2000年間、中国はいわゆる王朝のdynastyモデルを長く持ってきた。しかし、1840年のアヘン戦争で敗北し、その後約170年間、欧米列強に支配される屈辱的な時期が続いた。産業革命後、欧米は経済的にも軍事的にも圧倒的な力を手に入れ、中国を制圧できたんだ。しかしこの170年というのは、中国の長い歴史に比べると極めて短い期間と中国は捉えている。

習近平が述べた「中国の夢」とは、アヘン戦争以前のdynasty時代の栄光を取り戻すことを指している。つまり、現代の民主主義やリベラリズムとは無関係で、古代の覇権国家のような地位を取り戻すことを目指しているわけ。こうした中国の意図が明らかになってくると、ピルズベリーの本がより注目を集めることとなった。

D. アメリカから逃げる中国

アメリカという国は、ときに裏切られた時に非常に激しい敵意を示すことがある。これはアメリカ人の性格的な一面かもしれない。一般的には友好的な人々も、一度 裏切られると、その怒りはかなりのものとなることがある。特に今回のように、アメリカの民主党や中国と親しい関係にあった議員たちは、自分たちが 裏切られたと感じ、深い憎しみを抱いてしまった。また、1990年代初頭に見られた日本へのバッシングのような傾向もあったんだよね。アメリカは、常に自分たちがナンバーワンでなければならないという思考が根底にあり、ナンバー2の国に対しては対抗心を持つ傾向がある。そのため、アメリカは中国に対して徹底的な対抗姿勢を取るようになったわけ。

アメリカは、さまざまな手段を駆使しながら、中国の経済成長やテクノロジー、軍事力を制約しようとしている。現在のアメリカは、中国に対して非常に攻撃的な姿勢を見せており、極端な言い方をすれば、中国を撃破しようとしているとも言える。

中国は、アメリカの自分たちに対する敵意を強く感じている。アメリカが中国を完全に破壊しようとしている可能性があるとすれば、中国はアメリカの作り上げたシステムに依存することは危険だと理解してるんだよね。この点が非常に重要。ドルの「武器化」もその一環ですが、現代の世界はアメリカがゲームメイカーとなり、貿易、金融、通貨などのシステムはアメリカに多大に依存している。私たちはほとんどアメリカの作り上げたシステムに頼っているわけ。

アメリカは、この事実を利用して敵対国に対する攻撃を仕掛けることがある。経済制裁という手段だね。最近ではロシア、以前はイラン、キューバ、スーダン、北朝鮮、ベネズエラなど、アメリカの意向に従わない国々には経済制裁が課せられる傾向がある。中国も、アメリカの行動から、同じような状況になる可能性が高いことを理解しているんだ。そのため、中国はアメリカのシステムに依存しない代替システムを構築する必要性をヒシヒシと感じている。このアメリカのシステムから回避する方向に中国は進んでいるんだよね。こうした視点が、国際情勢を見極める上で非常に重要な意味を持ってくる。

E. 中国の共同富裕

もうひとつ、重要なポイントがある。それは、2019年から2022年にかけて、習近平が「共同富裕」というキーワードを使用し始めたこと。この「共同富裕」の意味を深く掘り下げる必要があるよね。なぜなら、鄧小平時代は目的達成のためには手段を選ばないという方針だった。経済的に富ましい者が増えれば、経済格差があっても構わないという考え方が支配的だったんだよね。共産党は本来、共産主義のイデオロギーに基づき、結果的な平等を求める国であるにもかかわらず、この考え方を封印してきた経緯がある。

そして、2022年の党大会において習近平が述べたのは、以前は約5億人から6億人ほどの貧困層が存在していましたが、中国はほとんどそのような極度の貧困層がいなくなったということだった。これからは、富める者をますます富ませる方針よりも、格差を縮小しようと宣言したわけ。言い換えれば、今後は経済成長よりも格差是正に重点を置くことを意味してたんだ。

経済成長は、主に貧しい国を中間所得の国へと引き上げることを目指すのが主な目的だった。しかし、今やすでに貧困層が大きく減少しているとすれば、次は社会全体の平等性を追求し、経済成長は二の次、あるいは三の次になると言い出している。この方針のもとで、中国共産党は富の再分配を劇的に進めていくというメッセージを発信してるんだよね。

この富の再分配において、注目すべきは、従来中国のGDPの3割を占めていた不動産分野。中国政府は不動産市場に厳格な政策を導入し、恒大集団の問題をはじめとし、不動産分野に厳しくあたっている。これは、経済成長さえも厳しく制限する姿勢を示している。また、AIやITなどの中国が最も競争力のある分野でも、アリババやテンセントなどの代表的な企業に対して抑制的な措置を取るなど、中国政府は経済成長よりも他の目標に重点を置こうとしているんだよね。

これまでの欧米の視点では、経済成長やテクノロジーの発展が優先されてきた。しかし、中国はこれ以上に格差を是正し、社会的平等を実現しようとしている。この意向が、2020年から2021年にかけて明確に示されてきた。

2020年から2021年のコロナパンデミックの中でも、中国は「ゼロコロナ政策」と称される厳格な対策を取った。これは、14億人もの人口を抱える中国において、個人のビッグデータを集約し、SNSなどのコミュニケーションを監視して、共産党に批判的な内容が広がるのを未然に防ぐための手段でもあるわけ。また、これによって社会の安定化を図る狙いもあった。中国は年間約12兆~13兆円もの軍事費を投じているんだけど、実際には治安維持にさらに多くの資金を充てており、年間約13兆円と言われている。中国のdynastyモデルにおいては社会不安が大きなリスクであり、治安を維持することはとても重要なわけ。そのために、個々人のビッグデータを収集し、社会的不安を抑制することが有効な手段とされているんだよね。

中国はビッグデータの収集を通じて、理想的な共産党の国家像を具体化しようとしている。経済成長が今までの主要な焦点であったことが変わり、経済政策、政治政策、社会政策を統制しやすい体制を造ろうとしている。これは、これからの中国経済を理解する際に重要な視点となりうる。

今後の経済政策について、欧米型のマクロ経済政策や金融政策、財政政策がどの国にも当てはまるという見方は、危険な考え方かもしれないね。だからこそ、中国には独自の分析アプローチを持つべき。中国はすでに欧米とは異なる進化を遂げているので、その違いを理解することが重要。アヘン戦争以降の中国は、歴史的に見ても特殊な例外的な時期だったのかもしれない。中国はこれから「正常」な状態に戻ると主張するかもしれない。だからこそ、我々は欧米の枠組みとは異なるレンズで中国を見つめる必要があるんだよね。

F. 多極化社会

中国は現在、アメリカとの本格的な対決の道を歩んでいる。そのため、アメリカが作り上げたゲームのルールとは異なるプラットフォームやシステムの構築が進行中なんだ。重要なのは、今回の「グレートリセット」という大きなテーマ。これまでのグローバリゼーションや第二次世界大戦以降の世界秩序を前提としたシステムは、少しずつではあるけど、確実に変わりつつあり、中国を中心に新しい構造が形成され始めている。

この流れは、多極化へと向かっている。つまり、アメリカ中心の一極型社会システムから、多極的な構造へと移行していっているわけ。この多極化の中で、G7とBRICS、そしてグローバルサウス諸国がどのような位置づけをするかが重要。中国は着実に変化を遂げている。アメリカのシステムから離れ、新しい道を模索している。特に安全保障に関わる分野での影響が顕著になっている。

安全保障は今や非常に重要な焦点。中国は特にエネルギーと食糧の分野で、安全保障の視点を優先している。これにより、中国の動きは従来の市場主導型エネルギーのゲームのルールに大きな影響を与える可能性がある。中国のアプローチは、新たな展開をもたらし、国際的なエネルギー取引や供給のあり方に変革をもたらすかもしれない。これまでのシステムを見つめ直し、中国が主導する新たな方向性が世界の秩序を塑造していくことになるのかもしれないね。

G. 新しい通貨システム

ロシア制裁が一つの要因かもしれないけど、世界はTiered Marketと言って、分断が進んでいる。2nd tier marketでの決済通貨が、もうドル以外になりつつあるんだよ。この流れが今めちゃくちゃ早まってるんだ。

激化する米中貿易摩擦の背景にあるものは

今年2023年の3月10日、この日は本当に大事な日だった。まさに1979年のキャンプデービッド合意と似てるよ。キャンプデービッド合意から中東でアメリカの力がめちゃくちゃ強くなったじゃん。それと同じパターンなんだ。今回はね、サウジとイランの国交回復があったんだ。それを可能にしたのが、北京でね、習近平が取り持ったんだ。それで今OPECの国々やグローバルサウス、それにASEAN諸国が、米ドル以外の国内通貨での決済を進めようとか、そういう話がどんどん出てきてるんだよ。

もうね、今までの流れとは全然違って、どんどん加速してるんだよ。だからこそ、8月のBRICSミーティングでは、サウジとイランがどうなるか、そこが注目されている。もちろんわからないけど、資源を持つ国々がBRICSに参加する道があると考えておいた方がいいんだ。そうすると、ますますドル以外の通貨を使っていこうという意志がBRICSの中心になってくるわけ。だからこの資源市場は、おそらくドル以外の通貨での取引が増えていくんじゃないかな。それと、アメリカが築いた貿易システムね。イギリスもね。それに対して、ドルじゃない通貨やG7じゃない通貨で、自分たちの通貨での決済を進めていこうっていう風潮が強まってる。これはたぶん、今年の3月あたりから急速に進んでるから、こうした視点で世界を見るのが大事なんだよ。

この多極化の流れの中で、一番大きな要因は、おそらく中国のアメリカへの警戒感だと思うんだ。アメリカが色んな手段で中国に圧力をかけようとすることに、中国は警戒感を持ってる。そこで上手く回避する方法を探る流れが、大きな変革をもたらしてるんだよ。その中にはグレートリセット的なゲームチェンジも含まれる。だから、こうした視点で世界を見ることが重要なんだよね。

要するに今何が起きてるかを整理すると、中国がすごいってことじゃなくて、中国はDynastyモデルにback to normalすることを模索していて、同時にアメリカは相対的にパワーダウンしてる。今回のウクライナ紛争の結末も、おそらくアメリカのパワーダウンを示すことになると思うんだ。アメリカが築いたゲームのルールに対して、おそらくグローバルサウス諸国を中心に、もしかしたらユーロ諸国も、アメリカへの信頼が揺らぐ可能性があるんじゃないかな。

アメリカは今、中国を怖がってる。戦争が起きる最も大きな要因ってのは、実は「怖れ」なんだよね。アメリカは「ナンバーワンである」というポジションを中国に奪われるんじゃないかという「怖れ」と、「裏切られた、バカにされた」という反感があるんだ。

第一次世界大戦もそうだったよね。百年間続いたパックスブリタニカと呼ばれるイギリスの時代に、ドイツが一気にチャレンジャーとして力をつけてきた。それでイギリスは「ドイツを放っておいたらまずい!」と思ってドイツに立ち向かったんだ。つまり、これもイギリスの「怖れ」だったんだよ。

こういうパターンから見ると、もしかしたら今回のウクライナ紛争で中国が果たす役割次第で、第三次世界大戦が始まるかもしれない。今、そんな時代なんだよね。つまり、ヘゲモニー(覇権国)対チャレンジャー(挑戦国)の対立構造で、ヘゲモニー側は色々と不安で過剰反応してしまうと、当然チャレンジャー側も警戒感を持つから、アメリカのシステムに依存し続けたら、我々がやられるかもしれないと心配し、アメリカとは違うシステムを作って新しい経済圏を築こうという動きが出てくる。それによってアメリカの経済圏がどこかのタイミングで急激に崩れる可能性があるんだ。

だから、今回のグレートリセットの意味合いには、こうした可能性も含まれている。そういう意味で中国の役割は大きいね。これからは、経済至上主義よりも、ゲームメーカーとしての役割が中国に移行することになる。中国が新しいプラットフォームを築いて、そこで新しいゲームを進めていくってわけだ。

H. 失業問題を解決するための中国版グローバリゼーション

中国は実はいくつかの国内問題に直面している。特に大きな問題の一つは、若者の失業率が20%を超えていること。これに対処する必要があるんだよ。

だから、今は教育産業に関しても以前の方針に戻すことを検討しているし、テンセントやアリババのような企業に対しても、共産党のメンバーが監督に加わることで、以前のやり方で続けてもいいとしている。不動産市場についても少し緩和して、経済を支える方向に進むのかもしれない。

今の中国の国策の変化と並行して、もう一つ重要なのが、若年失業率を10%代前半にまで減少させること。共産党にとっては絶対的に取り組まなければならない課題なわけ。中国経済はこれまで重厚長大な産業を中心に成長してきたけど、これからは内需や消費のサポートによる成長も必要となってくる。経済成長を諦めたわけではなく、若者の雇用を支援する政策を導入していく予定なんだよね。

中国は教育に過度なエネルギーを注いで、大学卒業者が世界一多い国となった。しかし、高い教育レベルを持つ卒業生を適切に受け入れられる仕事が足りなくなってきている。ここは中国政府のネックとして注目すべきポイントなんだよね。

この問題を国内で解決できない場合、一帯一路イニシアティブと呼ばれる中国の新たな経済圏を強化し、ドル圏とは異なる地域で人民元経済を展開することで、中国の若者や労働者に雇用機会を提供するかもしれない。この戦略で、中国は自国の問題を解決しつつ、新しいグローバル経済圏を築く可能性がある。

今後、中国はゲームメーカーの役割を果たすことは間違いない。そして次に注目すべきは中東だろう。中東は過去、イギリスやアメリカの時代に紛争や対立が絶えなかった地域。だが、これからは中国の関与によって比較的安定した地域になる可能性がある。まだまだこれは展望の段階だが、中東が中国の影響下で安定する可能性は十分に考えられるよね。


要約

・アメリカは冷戦期に中国を支援し、日本の経済台頭を抑える目的で中国経済を後押しした。中国は外交上は謙虚だが、技術獲得を積極的に進め、力を増してきた。
・2018年のリーマンショック後、中国は迅速な財政拡大で経済回復し、世界経済をリード。欧米の金融危機は中国の力を浮き彫りにし、習近平政権は中国の力を強くアピール。
・習近平の「中国の夢」は、アヘン戦争以前の中国の栄光を取り戻す意味合いを持つ。習主席は、近代以前の覇権的地位復帰を目指す。
・アメリカは裏切られると激しい敵意を示す。中国はアメリカの敵意を感じ、アメリカ中心のシステム依存からの脱却を模索している。
・習近平は「共同富裕」を強調し、経済成長よりも格差是正に焦点を当てている。中国政府は不動産やテクノロジー分野に厳しく介入し、社会的平等を追求。また、ビッグデータと監視を用いて社会を統制。中国経済の理解には欧米とは異なる視点が必要である。
・中国はアメリカ中心のシステムからの脱却を試み、「グレートリセット」を通じて新しい世界秩序の構築を目指している。多極化が進む中、中国は特にエネルギーと食糧の安全保障に焦点を当て、国際的なエネルギー取引のルールに変革をもたらす可能性がある。
・米中の対立とロシア制裁を背景に、国際市場は分断し、ドル以外の決済が増加。中国のアメリカ警戒感やアメリカの中国への「怖れ」が存在し、アメリカの経済圏の崩壊リスクも。この中で中国が新しい経済プラットフォームを築く可能性が高まる。
・中国は若者の20%超の失業率問題を抱え、経済策を見直し中。これを解決するため、一帯一路イニシアティブで新しい経済圏を拡大する可能性があり、今後中国は中東の安定に影響を与えるかもしれない。


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