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【上山晃語録4】ゲームメーカーとしてのアメリカ

アメリカのこと話すと、アメリカの特徴ってね、1774年に生まれた時からもうユニークで、他の国とは全然違うんだよ。アメリカの政府制度や建国の精神を考える時、いくつか大事なポイントがあるんだよね。

A. 既存の否定から始まった国アメリカ

まず、ヨーロッパでの専制君主や王政を見て、それを全否定するような考え方から、アメリカは生まれた。ヨーロッパでの三権分立の考えを、アメリカが実際の政府として最初に取り入れたのは有名な話。つまり、権力を一カ所に集中させるのはダメだと思ったんだよ。だから、デモクラシーや三権分立という考え方が、アメリカの根本的な部分になっている。
 
でも、ヨーロッパの30年戦争での宗教問題と比べると、アメリカは宗教と政治の分離が完全じゃないんだ。アメリカの建国の背景には、プロテスタントの考え方と、連邦政府にはあまり権力を持たせちゃダメだという考えがあった。
 
実際、南北戦争までのアメリカは、連邦政府の力はほとんどなく、州政府が中心だった。だから、アメリカで言う「州政府」が、我々が考える国家に一番近いんだよね。そして、戦争のたびに連邦政府の権限が強まっていった。特に第一次、第二次世界大戦で、その傾向は明らかだったよね。
 
アメリカの建国の精神を語る時、銃の問題も避けられない。アメリカの人々は、政府や軍を最後には信用しない、という価値観を持ってる。だから、自分たちで自分を守るために銃を持つことが大切だと考えてる。
 
さらに、第二次世界大戦までのアメリカは、州政府中心だったけど、戦争を経て連邦政府が大きくなってきた。そして、アメリカはもともと、自分たちのテリトリーに外国が介入するのを防ぐという考え方を持っていた。しかし、第一世界大戦を経てそのスタンスは変わってきたわけ。
 
アメリカはもともと他国の戦争にはあまり関与しない国だった。でも、1867年の大陸横断鉄道の開通や、1898年のアメリカ・スペイン戦争などを通じ、アメリカは外の世界に関心を持ち始め、少し植民地的な動きも見せるようになったんだよね。
 
このような歴史的背景を踏まえて、アメリカの政府や国民の考え方を理解すると、今のアメリカがよりクリアに見えてくるんじゃないかな。

B. リベラリズムの国、アメリカ

第一世界大戦後、ウィルソン大統領がすごいことをやったんだよね。彼は「人権」とか「民族自決」っていう新しい考え方を、初めて国際的な取り決めに取り入れた。その頃のアメリカは、新しい考え方である民主主義をすごく大事にして、それまでの古い政治の中に、この新しい価値観を取り入れようとしたんだよ。

さて、リアリズムとリベラリズムって言葉があるんだけど、リアリズムが主流だったヨーロッパ中心の時代に、アメリカはリベラリズムって新しい考え方を取り入れたの。第一次世界大戦のきっかけとなって、イギリスが世界のトップから降りて、アメリカがその場所を取った。そのアメリカが大事にしていたのは、このリベラリズム的な考え方だったんだよね。

アメリカのリベラリズムは1845年ごろからじわじわと広がってきて、2022年にはピークを迎えたと言われてる。特に1990年から2020年の間、グローバリゼーションっていう大きな流れの中で、このリベラリズムはすごく影響力を持った。だから、アメリカはこの時期に世界のリーダーとなれたんだよ。

アメリカのリベラリズムって考え方は、国を作った時からずっと続いてる。そしてね、アメリカ人ってプロテスタントっていう宗教の考えが根付いていて、「民主主義」「人権」「自由」なんかの価値を、世界中に広めるのが彼らの使命だと信じてるんだ。だから、この考えとアメリカのリーダーシップってのがうまく合体して、1990年以降、アメリカの考え方がどんどん広まってった。

ジョセフ・ナイっていう有名な学者が「ソフトパワー」という言葉を使ってるんだけど、これがめちゃくちゃ重要なんだよ。強い経済や軍事力も大事だけど、ソフトパワーがないと世界のリーダーにはなれないんだ。アメリカが今のように繁栄してるのは、昔から続けてきた民主主義や自由という考え方が、ソフトパワーとして役立ってるからなんだよ。この視点を持つことが、アメリカを理解するためにすごく大事だと思う。

C. アメリカの経済

アメリカの経済に関する話は面白いよ。ちょっとヨーロッパの背景から入ると、中央銀行が誕生したのはオランダ。オランダが西欧の中で中央銀行を持ち出し、それがイギリスに伝わってBank of Englandが生まれたわけ。この中央銀行のおかげで、イギリスは覇権国家になったんだ。何故かって。彼らが中央銀行を通じて通貨の力を世界中に広めたからさ。

で、アメリカはどうだったかというと、中央集権を避けたいっていう思いが強かったから、中央銀行という制度は一時的にしか作らなかったんだ。で、結局、州レベルで金融を進める方が良いって結論になった。

その結果、アメリカでは政府よりも民間資本、例えばモルガンやロックフェラー、カーネギーなどの大財閥が力を持った。19世紀のアメリカでは、鉄道や鉄鋼産業が主要産業だったから、これらの資本家や金融機関がバックアップしたんだよね。

特に注目すべきは、1907年のマーケットクラッシュ。中央銀行がないアメリカで、モルガン財閥が大きな役割を果たした。この経験を元に、さすがに政府が対応すべきだといって、ついに1914年にアメリカ初の中央銀行であるFederal Reserve Bank(FRB)が設立されたわけ。

面白いのは、アメリカが中央銀行を持ってた期間は実は短い。でも、その少ない期間で第一次世界大戦に参戦し、FRBが大活躍。もしFRBがなかったら、アメリカの役割も変わってたかもしれない。

そして、アメリカの中央集権の成功体験は、第一、第二次世界大戦なんだよね。この経験を通じて、財務省やペンタゴン、国務省といった部門がアメリカの中核としての役割を果たしてきたんだ。だから、アメリカの歴史を考えるとき、これらの組織を外せない。

D. アメリカのパワーの源泉

アメリカが大国として君臨しているのは、なんでだと思いますか。昔の冷戦時代、アメリカは「西側の国々、安心してね、僕たちが守ってあげる」という約束をしたから、その位置をしっかり確立できたんだよ。冷戦は終わったけど、アメリカは今も世界中に180の軍事基地を持ってる。彼らが安定をもたらしてくれているから、他の国々は経済発展に集中できたわけ。

でも、最近、中国をはじめとする国々が力をつけてきて、このバランスが少しずつ崩れてきているように見える。でも、アメリカの軍事費が驚くほど大きいことを考えると、アメリカが衰退したとは言えない。彼らはまだ世界の警察としての役割を果たしている。でも、あちこちで問題が起きて、その優越性が少しずつ揺らいでいるのも事実。

ソフトパワー、つまり文化やイメージという面では、アメリカは昔から強かった。ハリウッド映画や音楽、最新技術、アメリカは世界をリードしてきた。民主主義や自由といった価値観がその背景にあったよね。しかし、最近、多くの国や人々が、アメリカの行動と理想が合致していないと指摘している。その最大の例が、2003年のイラク侵攻。アメリカが理由をつけてイラクを攻撃したけど、後にその理由が間違いだったことが分かり、信頼が失墜した。

実は、アメリカにとって戦争は、自分たちの強さを示す方法としての「成功体験」なんだよ。だから、敵がいなくても戦争を求めやすい。2001年の9月11日のテロ攻撃は、アメリカにとって新しい敵を見つけるきっかけとなり、テロとの戦いを強調するようになった。これがアメリカの軍事予算を増やす結果となり、一方で世界の警察としての役割も続けることができた。そして、グローバリゼーションはさらに進展したんだ。

このように、アメリカはまだ大国としての役割を果たしているけど、そのポジションが変わるかもしれない今の時代、我々はしっかりとその動きを見守る必要があるんだよね。

E. アメリカのソフトパワーの終焉?

アメリカの影響力、特にソフトパワーに対しての疑問と批判が増えているよね。以前はアメリカの強大な経済力や軍事力が背景にあったから、アメリカの言うことにはなんとなく従ってた。でも今、特にグローバルな視点から見ると、アメリカの言うこともかなり疑われている。

一番心配なのは、アメリカのソフトパワーがグローバルサウスの国々で信用を失ったらどうなるか。そこから「グレートリセット」という新しい動きが出てくるのかもしれない。その視点は大事にしないとね。

そして、通貨の問題も無視できない。アメリカの経済は世界の25%くらいを占めてるけど、ドル決済はより大きく、50%-60%もある。だからアメリカはドルを武器にしてる。でも、近年、ドルを利用したアメリカの行動、特に制裁が多すぎて、多くの国がドルに依存することのリスクを感じ始めているんだ。特に中国なんかは、ドルを離れたいって気持ちが強い。

軍事的にはアメリカがまだ強いけど、ソフトパワーやドルの問題で信用を失うと、アメリカの影響力そのものが揺らぐかもしれない。特にグローバルサウスの国々ではその傾向が強い。G7のような先進国ではまだそこまでじゃないけどね。

考えるべきは、これまでのアメリカ中心の世界が、少し変わりつつあること。今、中国なんかがアメリカスタイルとは違う新しいシステムを提案してる。まさに、これまでの一極体制から、複数の大国がリーダーシップをとる時代に変わりつつあるよ。

そして、アメリカのメディア、たとえばWashington JournalやBloombergなんかの影響力も減ってきている。今までそれらのメディアの意見は世界のスタンダードだったけど、今はもうそうじゃない。特に中国やロシア、中東なんかではほとんど無視されてる。

それと、アメリカの過去の行動、特にCIAやNGOの影響力についても問題になってきてる。これまで知られてなかった暗部が暴露されてきている。

権力を持ってる国や団体には、暗部やタブーが必ずある。権力が強固だと、その暗部は隠されがち。でも、権力が弱まると、その暗部が露わになる。それが今、イギリスでも起きてるし、アメリカでも起きるかもね。

こんな視点で国際情勢をみてると、これまでの西洋中心の時代が終わり、東洋中心の時代が来るかもしれない。東洋の国々は人口も多いし、その影響力が増してくるのは確実。これも大切な視点だよね。

F. どうやって国をまとめるか

アメリカという国は元々、様々な文化の移民たちで成り立っていたから、国を一つにまとめる普遍的な価値観が必要だったんだよね。それが「民主主義」や「自由」「人権」だったわけ。これって、アメリカを理解するための大事なポイントなんだよ。

経済の面も見逃せないよね。1950~60年代はアメリカ中産階級の全盛期で、ゴールデンエイジって感じだった。でもベトナム戦争からは下り坂で、レーガン政権時代にグローバリゼーションが進んで、アメリカの経済は製造業から金融資本主義にシフト。これで、今のラストベルトと言われるアメリカ中西部の地域が経済成長から取り残される形になった。

1950~60年代は中産階級がしっかりしてたけど、最近30年のグローバリゼーションの影響で中産階級がどんどん減って、貧富の格差が広がってるよね。これが問題なんだけど、中産階級って、政治的には穏健な勢力で、左も右も過激じゃなくて、みんなが意見を交換できる状態を保ってる。でも中産階級が減ると、過激な意見が増えて、話し合いすら難しくなる。

2009年のリーマンショック頃までは中産階級がアメリカの政治を動かしてたんだけど、その後、中産階級が減少し、極左と極右の意見が多くなってきて、アメリカ社会は分断してきた。この分断を解消するためには、中産階級を再び強化するしかないんだよ。

バイデン政権もそれを目指して、過去の政権とは違う経済政策を採用してる。2021年3月には8兆ドルのインフラ政策、2022年には4千億ドルのインフレ対策やチップ技術の振興など、アメリカの政府は積極的に動いてるよね。これって、安全保障や政府の役割を強化するためだけじゃなく、アメリカ社会を再び結びつけるために富の再分配をしっかりやる目的もあるんだ。

特に、選挙で注目される中西部の州、swing stateは政治的に動きやすいから、どの政党を支持するかで選挙結果が大きく変わる。この州をしっかり押さえるためにも、中産階級の強化と富の再分配は必要だね。バイデン政権も、そのために大きな政府として、積極的な財政政策を進めてるわけ。

こうしてみると、アメリカってだいぶ変わったね。前と比べて政府のやり方が全然違う。社会がどんどん分断されているし、中国との対立も熱を上げている。アメリカは中国を最大の競争相手と見なして、G7を主軸にサプライチェーンを構築して、できればそれを国内に持ち帰りたいって考えてる。目指すは、アメリカ製造業を盛り上げて、社会の分断を少なくすることなんだよね。

2024年のアメリカの大統領選挙も、この流れは変わらないと思う。アメリカが目指してるのは、1950年代や1960年代の中産階級が中心の社会。もし、このビジョンが上手くいかなかったら、富の再分配が進まず、社会がさらに分断するリスクがある。サミュエル・ハンチントンの『分断されるアメリカ』って本にもあるように、2040〜2045年に白人がマイノリティになると、アメリカは州レベルで分裂が起きる可能性が出てくる。

WASPって言われるアメリカのエリートたちは、これから少数派になるだろう。だからその前に、アメリカを再び統一された国として建て直す必要がある。そうしないと、アメリカの覇権国としての座が危なくなる。まさに、アメリカは今、ピンチとチャンスの両方を持ってる瞬間だよ。

AIやデジタルトランスフォーメーションを考えると、アメリカの企業はまだトップだけど、これがアメリカ本土の豊かさにつながるわけじゃない。デジタルの力で、昔からの大手企業、例えばフォードやGMが、テスラみたいな新しい企業に食われる危険がある。もしアメリカがEV車の分野でリーダーになったとしても、従来の製造業の人々は仕事を失う可能性が高い。デジタルの時代は、古きを壊して新しい時代をつくる。その中で、壊れていく産業をどう支えるかが、アメリカの大きな課題だよ。

日本も含め、すべての国が安全や経済のリセットを迎えて、社会の分断を避ける役割を果たさないといけない。国の役割は市場よりも重要だと思うんだ。その視点でアメリカの現状を見るべきだと思うよ。

G. 綻びが目立つアメリカ

アメリカ、最近ちょっと大変そうだよね。軍事的にはまだ強いけど、特に中東での影響力が微妙になってきたし、ドル通貨のシステムもガタがきてる感じ。

2023年8月のBRICS首脳ミーティングで、ロシアが新しいBRICS通貨の話を持ち出して、それを金か、リチウムみたいな資源に基づけようって言ってるよね。再生可能エネルギーの世界が拡大してるから、レアメタルや資源を基盤にした通貨を作る考えがBRICSにはある。要は、ただ印刷するだけのお札じゃなく、本物の価値がある通貨を作りたいんだろうね。もしこれが本当に進んだら、ドルの力が弱くなる可能性もあるよ。

アメリカの力がちょっとずつ下がってるけど、アメリカらしく、財政を使ってなんとか立て直そうとしてる。でも、今のインフレがなかなか下がらないのは気になる。政府がお金をたくさん使って強制的に需要を生み出すから、需要が落ちないんじゃないかな。そう考えると、中央銀行が簡単にインフレを止められるかは分からない。今後、金利を上げるような政策が続くかもしれないね。

今の時代、国の役割が大きく変わってる感じがする。権力が集中するわけじゃないけど、市場じゃなくて国がゲームを作ってるような雰囲気だよね。国はどんどん影響力を持ってきてるよ。だから、このゲームのルールをちゃんと理解することが、めちゃくちゃ大事だと思うんだ。

要約

・アメリカは、ヨーロッパの専制君主制など中央集権を否定し、三権分立の考えを採用した独自の国家であり、州政府の役割が強かった。外国との関与は限定的だったが、19世紀後半から国際的な舞台に出始めた。
・第一次世界大戦後、アメリカはリベラリズムという新しい考え方を国際的に広め、その影響は2022年にピークを迎えた。アメリカの影響力は、経済や軍事力だけでなく、ソフトパワーに起因する。
・アメリカは当初、中央銀行を避け、大財閥が金融をリード。しかし、1907年の経済危機後、1914年にFRBが設立。アメリカの中央集権は二度の世界大戦で強まっていく。
・アメリカは冷戦時に西側諸国の守護を約束し、現在も世界に多数の軍事基地を持つ。中国などの台頭にも関わらず、アメリカの軍事費は巨大で世界の警察役を続けている。しかし、行動と理想のギャップや過去の失策が信頼を損なっている。
・アメリカのソフトパワーとドルの信用が疑問視され、特にグローバルサウスの国々ではその影響力が減退しつつある。中国や他の国々はアメリカ中心のシステムから離れ、新しいシステムを提案。アメリカのメディアや過去の行動の信頼性が低下。国際情勢の観点から、東洋中心の時代が来る可能性がある。
・アメリカは多文化の移民国で、一つにまとめる価値観として「民主主義」や「自由」「人権」を使う。1950~60年代の中産階級全盛期からグローバリゼーションの影響で貧富の格差拡大。バイデン政権は中産階級強化と富の再分配を目指し、財政政策を推進。アメリカは中産階級中心の社会を再構築し、デジタル変革に適応しながら社会の分断を回避する挑戦中。
・アメリカの国際的影響力は減少傾向。BRICSが資源を基にした新通貨を検討し、ドルの地位に挑戦の兆し。近年、国が経済の主導権を強めているため、そのルール理解が重要。


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