読んだ小説を褒めながら紹介するnote ~『放課後の図書館でお淑やかな彼女の譲れないラブコメ』篇~
お淑やかとは。
まずは、恒例の書影から。
著者は九曜《くよう》先生。
Webをメインとした活動をしていますが、本作は出版物としてのリリース前提での新作ラブコメとなっています。
イラストはフライ先生です。
タイトルの「譲れない」が一体何にかかってくるのか、というのが結構重要なところかもしれないお話だったように思います。
あと、「お淑やか」って何だっけ?
『放課後の図書館でお淑やかな彼女の譲れないラブコメ』#とは
物語の主人公は、高校2年生の図書委員の男の子・真壁静流《まかべ・しずる》。
母子家庭で育つ彼は、不慮の事故でその母親を亡くしてしまうところからストーリーが始まります。
重いです。わりと、ではなく。しっかりと重いです。
しばらくの間諸々の処理などで学校を休んでいた静流。
その矢先、静流のところにひとりの中年男性が現れます。
誰だと訝しめば、何と「静流の父親」だと言う。
しかも「お前は愛人との子だ」なんていうカミングアウトまで添えて。
さらには「実の娘といっしょに3人で暮らそう」などと言う始末。
当然、静流は拒むわけですよ。
それでも贖罪の意識なのか知らないが(随分と身勝手ではあるが)、「せめて1ヶ月だけでも」となかなか折れない。
実際のところ、現時点でのプランが無い状態(強いて言えば、社交辞令のように祖父母が言った「ウチに来ればいい」を当てにする程度)だったのもあり、「1ヶ月ならば」と彼の家へと向かえば――。
待ち受けていたのは、静流が通う学校におけるアイドル的存在の双璧、その片方である蓮見紫苑《はすみ・しおん》その人。ブラウンのショートヘアがその活発な印象を強くさせる明るい性格の彼女。
いきなり「愛人との間に出来た子がウチに来る」なんて言われて、納得できるはずもなく、普段は快活な印象しかないこともあり、しっかりと紫苑から負の感情をぶつけられる静流。まぁ、それも当然。
そしてしばらくぶりに登校すれば、彼には図書委員の仕事が待っている。
開室作業を済ませると、久しぶりに見る女子生徒の姿。
静流が通う学校におけるアイドル的存在の双璧、そのもう片方である瀧浪泪華《たきなみ・るいか》。
こちらは紫苑とは正反対――と書けば語弊があるかもしれないが――黒髪ロングの清楚系美少女。人気を二分するのも理解できよう。
――ただし、外面《そとづら》だけならば。
その実、静流だけしかいない場であれば、彼女は本性を現す。
対象を静かに俯瞰するように観察して、その時の最適解を見つけて動く――。
自身も持っているそんな特性を静流に見出した泪華は、妙に静流を構う。
――っていうか、めっちゃアピールしてくる。
だって、静流のことが好きだから。
そんな双璧が、図書館で相見えたとき――――。
――――妙な人間関係が化学反応を起こしはじめる。
これは、そんな物語です。
化学反応と言いましたが、異母姉弟である紫苑は徐々に静流への対応が変わってくるのですが、そこら辺がまた良いのです。
あ、実は静流には人間関係の相談役であるもうひとりの先輩がいるんですけども。
この人の存在、結構大事です。
感想。
若干、上の行で漏れ出してますが。
良いです。
静流が、静かにお淑やかに振り回される様が。
いやさ。
静流がぶきっちょなんだけど、根が優しいからほっとけない感じなんですよ。典型的弟感あって。
先輩たちもしっかり姐御な雰囲気なので、各所に刺さります。
基本的に素を隠して過ごしている泪華が素をさらけ出せる存在なのが静流。その素が静流と同じ性格ゆえ、薄らとは泪華の恋心に気付いてはいるけれど静かにあしらう。
それでへこたれる泪華ではないので、懲りずにアプローチを続けて――エンドレスですよね。
紫苑の方は複雑ですね。
愛人との間の息子と同居することになるとか、年頃の娘のことをまるっきり考えていないような自分の父親に対する怒りを、静流にぶつけかけるんですけど、あるとき気付くんですよね。
紫苑自身も母親を亡くしているんですが、病気での療養を経ての別離でした。それに対して、静流は母子家庭だったところで不慮の事故での別れだった――そこに思い至った際に、ぎゅっと胸が締め付けられたんでしょうね。
で、そこでこのふたりが、激突するわけですから。
ふたりの「譲れない想い」も交錯しますよね。
――ということで、続巻も出ているので、要チェックです。
ちなみに私は早いうちに九曜先生の過去作を探しに行くことにします。
※後日談
買ってきました。
通販ですが。
リリースから日が経ってしまったライトノベルって、一般文芸より明らかに購入難易度上がるよね……。仕方ないのかもしれないんだろうけど。
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