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『パン屋再襲撃』

『パン屋再襲撃』(短編集『パン屋再襲撃』より、表題タイトルの作品)
 
村上春樹著
 


物語は、新婚の夫婦が深夜に突然、耐え難い空腹を覚えるところから始まる。冷蔵庫にはビールと玉葱とバターとドレッシングと脱臭剤しか入っていなかった。妻は、夫がかつて親友と行ったパン屋襲撃の失敗が、夫婦に呪いとして降りかかっているせいだという。二人はかけられた呪いを解くために散弾銃で武装し、マクドナルドを襲うという話。
 
非常にわけのわからない話なので、キーワードを探ってみた。
 
「ワーグナー・呪い」「パン」は何を意味するのか?
 
「ワーグナー」・「呪い」
ワーグナーのライフワークでもある、オペラ「ニーベルングの指環」には、指輪に「死の呪い」がかけられる場面がある。 「ラインの黄金」から作られた指輪を手にした者は、"限りない力"を手にする。アルベリヒ(地底人)がライン川の底にある「ラインの黄金」を盗み、指輪を作る。ヴォータン(神)らは、アルベリヒから指輪を奪う。怒ったアルベリヒは、指輪に"死の呪い"をかけ、指輪を手にした者は、死の呪いで殺し合いをしてしまう。
 
「パン」
1. 生命の象徴
2. 共同体や結束の象徴
3. 豊かさや満足の象徴
4. 神聖な象徴
 
物語の「僕」は昔、相棒とパン屋の襲撃を試みた。パン屋の店長はワーグナーの曲を聞けばパンは無償で食べさせるという。この曲が呪いの曲だということ。
 
その他のキーフレーズ
 
①「何年も洗濯していないほこりだらけのカーテンが天井から垂れ下っているような気がする」(呪いの存在)
 
見落とされた状況や避けられてきた課題を指している。日々の生活で無視する、あるいは見て見ぬふりをする可能性のある問題を示唆。
 
②「冷蔵庫に入っていたもの:ビールと玉葱とバターとドレッシングと脱臭剤」
ビールは楽しい時間や友人との交流。玉葱は涙や辛さ。バターは濃厚さ、ドレッシングは健康を連想させる。脱臭剤は清潔さや爽やかさ。これらは、冷蔵庫に閉じ込められていたということ。
 
③「僕と妻は中古のトヨタ・カローラに乗って、午前二時半の東京の街を、パン屋の姿を求めて彷徨った。」
パン屋を探す行為は、生活の必需品や簡単な喜びを追求することを表しているかもしれません。全体として、夫婦として日常の生活や困難に向き合って努力をはじめたことを表している。
 
④「“パン屋のようなものよ”と妻は言って、車の中に戻った。“妥協というものもある場合には必要なのよ”とにかくマクドナルドの前につけて」
完璧な解決策は、なかなか見つからないという現実を受け入れる。全体的に、夫婦としての現実の受け入れや妥協の必要性を表現している。
 
⑤「三十個のビッグマック」
1. 快楽主義: 人々は快楽を求める存在であり、食欲を満たし、喜びや快楽をもたらす。
2. 消費主義批判:無節制な消費や物質主義の問題を浮き彫りにする。
3. 無常性と仮想的な意味: ビッグマックは一時的な快楽を提供するが、物質的なものや享楽的な経験に頼ることの限界や、より深い意味を追求する必要性を示唆している。
 
⑥「僕はボートの底に身を横たえて目を閉じ、満ち潮が僕をしかるべき場所に運んでいってくれるのを待った。」
個人の自己放棄や運命への信頼。現実を受け入れることや、自己の意志や欲望を超越することによって内的な平穏や目的を見出すことを示唆する。
 
これから見えてくるものは、"夫婦になる"ということはどういうことなのか?ということかなあと思った。相棒の真の姿を受け入れて、二人で力を合わせて食っていく(生きていく)ということ。そこには妥協もあり、消費の儚さもあるのだけど、究極的には二人の運命を信頼して、徐々に夫婦になっていくということなのだと理解したのだけど。。。
 
恐喝行為を夫婦でやっているわけだから、その先はどうなっていくのだろうか?この行為によって、夫婦になったのかもしれないが、、

ワグナーのオペラのように二人を待ち受けているのは死の呪いなのか?どうかはわからない。
 
私の勝手な解釈にすぎませんので。。。あしからず
さらに、細かく分析もできるはずだけど、、、あまりにも大変なので。。これくらいにします。

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