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『人間失格』

『人間失格』
太宰治著

太宰治のほぼ自伝的な小説と言われているものなのだけど、裕福な家庭に生まれた素直で優しく、成績も優秀な少年が、ひたすらに堕落して、借金して、酒に溺れ、女に溺れ、麻薬にも手を出して、何度も無理心中を計ったり、、目を覆いたくなるような話が、淡々と進んでいく。

素直に生きているだけなのに、こうなってしまう事もあるのか?と思い恐怖を感じた。

太宰治は、聖書をよく読んでいたらしいのだけど、神を信じることができなかった。ということを知って、

別の読み方ができることがわかった。

本書では、主人公の葉蔵は、
神の愛は信じられず,神の罰だけを信じている。「信仰」というのは、ただ神の鞭を受けるため のもので、地獄は信じられても, 天国の存在は,どうしても信じられなかった。
ようは、神様って、ただただ怖いだけの存在という理解なのかな?

これは、救いようのない悲惨な状況だと思った。

自分の父親を「怖しい神」とみたてて、父親の教えを守らなかった。そして、父親の怒りを買ってしまった。ゆえに逃げ回るという様子は、聖書の創世記のアダムとエヴァの話を彷彿させる。これは食べてはいけないよと言われていた木の実を巡る話で、
そこに、蛇がやってきて、食べるように唆かす。すると、女のエヴァが、神様の教えを守らずに、木の実を食べてしまう。さらに、アダムにも、食べることを勧める。そして、アダムまでもが木の実を食べてしまったことから、人間の原罪がはじまるというもの。

本書にもどると、葉蔵は、父親に堕落した時間のことを手紙に書いて送って、、許して欲しいと思ったのだろう。でも、許されることは、なく、ひたすら、堕落していく。

父親が、亡くなったことを知ると腑抜けのようになってしまったり、、

神様を恐れる事は、大事なのことなのだけど、神様は、許してくれる。

「怖しい神」しかいない世界では、人間は止めどなく落ちて行く。というか、神様から、逃げ回ってしまう。

太宰治の人生も、壮絶なものだったのだろうなあと思った。

『糸』中島みゆき
『lemon』米津玄師

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