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【読書ノート】『愛の夢とか』(『愛の夢』より同名タイトルの一編)

『愛の夢とか』(『愛の夢』より同名タイトルの一編)
川上未映子著


震災後、隣近所に住む2人の女性(テリーとビアンカ)の物語。テリーは、『愛の夢』という曲をピアノで、練習して、弾けるようになるという話。

①リストの『愛の夢』
3つの歌曲で、構成されていて、それぞれ異なる形の愛描いていると言われている。第1番(『高貴な愛』)
殉教者としての神への「愛」を題材にしている。
第2番(『私は死んだ』)
恋人、または想いを寄せる人への「愛」を題材にしている。
第3番(『おお、愛しうる限り愛せ』)
家族や友など身近な人に対する「愛」を題材にしている。

②バラ
バラは多くの文化で愛、美、尊敬、情熱を象徴している。色によっても意味が変わり、赤いバラは情熱的な愛、ピンクのバラは敬意や感謝、白いバラは純粋な愛や無垢を象徴する。また、バラは秘密や神秘を示すこともある。


死を意識して、家の周りに花を飾るようになったテリー。突然死んだ時、ご近所さんに、「あの人とは、特に近所付き合いがあったわけでは、なかったけど、家の周りは、いつも、花が飾られていて、綺麗だった」と言われることを思ったりする。

そんな折々、隣近所から、ピアノの音色が聞こえて来る。隣だけど、名前も忘れてしまっていた。ある日、言葉を交わす機会が訪れて、お隣さんに招待される。

そして、お隣さんは、テリーだという。「私」は、突差に「ビアンカ」と名乗る。テリーは、ピアノを聴いて欲しいのだという。
ところが、テリーは、上手く弾けない。

その後何度も、ビアンカは、どこかでつかえてしまうテリーの演奏を聴きにいくことになり、13回目の訪問の時、要約、演奏が、完成する。

二人は感動する。
ところが、それ以降、二人の行き来は無くなってしまう。


主題は何か、
いつ、死が訪れるのかは、神の領域。人にはどうすることもできない。人に与えられた限られた時間は、神への愛、家族への愛、隣人への愛を示すためのものだと考えた。
そして、愛がなければ、人生は、空しいだけのものになってしまう。

以前読んだ、古代ローマのセネカの哲学を思い出した。

●生まれた瞬間から人は「死」に向かっていく
● 満ち足りた人生かどうかは、生きた年月の長さではなく、自分の心の在り方によって決まる

愛の夢

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