『好色』
『好色』
芥川龍之介著
平安時代を舞台にした物語。
原典は、宇治拾遺物語「平貞文、本院侍従の事」
主人公の平貞文(平中:へいちゅう)は、気に入った女には見境なく手を出して、ものにしていく、いわゆる、プレイボーイ。
平中が、女性を取っ替え引っ替えすることに対して彼の友人は、羨ましくもあり、女性に満足できない彼を哀れにも思っていたりもする。
そんな中、平中に振り向かない女性侍従が現れた。しだいに、侍従という女性に平中は、恋焦がれてしまう。何十通ものラブレターを出して、夜這いを試みるも、上手くかわされてしまう。
何を思ったか平中は、侍従の糞尿が入った箱を盗むという何とも変態的な行動をとる。そして、盗んだ箱を開けると、そこは、なんとも高級な香水の香りがしたのだという。平中にとっては、侍従の糞尿もエレガントに思えてしまう。
恋愛中は、相手の欠点は見えないもので、それが、恋愛中の幸福感に寄与しているのだろう。まあ、それが、楽しいことでもあるのだけど。
恋愛は、駆け引きなのだと改めて思わされた。
仕事も取っ掛かりは、同じだと思う。いかに魅力的であるかを相手に感じてもらえるようにアプローチすることは、大事なことだと思う。
ある意味、営業する人間の魅力が全てだと言っても良いかも。受注した仕事は、誠実に取り組むのだけどね。
本書に戻ると、侍従は、おそらく意図的に恋愛ゲームを仕組んでいたのだから、すごい恋愛強者だと思った。
最近は、何らかの闇を抱えたような恋愛物語が多くて、面白いのだけど、なかなか疲れる。
本書のような、まっすぐな恋愛物語は、楽しくて良いね。