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さようなら、外脛骨

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左有痛性外脛骨の手術をし、コロナ禍の中1ヶ月入院しました。 それを小説にしました。
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#ノンフィクション

読まなくていい序文 さようなら、外脛骨

 序文は読む必要性はないが、書いておく必要性はあるので残しておく。

 さくらももこの「なんでも経験してやろう」精神を見習い、手術も経験しておいて損はない。手術中の状況を楽しもう。ということで全身麻酔ではなく頚椎麻酔を選ぶ予定だった。しかし、人生初の手術が不安で不安で不安で仕方なく、整形外科医の「全身麻酔でいいですね」という問いに「はい」と返事をしてしまった。つまり僕は手術中全身麻酔で熟睡していた

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第1話 ファースト・インパクト さようなら、外脛骨

 初めて痛くなった日は定かではない。5年以上10年以下の間だろう。精神病院で電気けいれん療法という全身麻酔をして頭に電気を流す治療をしたせいで過去の記憶がほとんどのこっていないからだ。その顛末は恋する閉鎖病棟を参照されたい。

 が、初めての痛みは記憶している。深夜トイレに行こうとして左足を床について力を入れると、脳みそにショットガンをぶっ放されたような痛みが走った。もちろん僕はカート・コバーンで

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第2話 手術前 さようなら、外脛骨

第2話 手術前 さようなら、外脛骨

 整形外科に通わなくなって三年、定期的に激痛は走るが立ち上がれないほどではない。週に三回軽作業をしに施設に通い始めて三年、通う場所ができて運動して筋肉がついたから激痛にはならないのだろうか。それともインソールとダイエットのおかげだろうかと思っていると久しぶりにアイスピックの刑がやってきた。運良く金曜日だったので翌日土曜日の午前中に大学病院へ行った。一歩一歩歩くたびに痛みが走り脂汗が流れる。
 痛風

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第3話 手術前日 2021年7月28日 さようなら、外脛骨

第3話 手術前日 2021年7月28日 さようなら、外脛骨

 朝、荷物を持って病院へ。窓には上下にねじ式の鍵をつけてカーテンを閉め、PCはラジオを録音するため電源はオンのまま。予定より早く着いたためコーヒーを飲んで時間を潰す。
 入院受付へ行く。これから入院予定の人が数人。皆キャリーケースを持っている。エレベーターに乗り入院病棟へ行く。
 中央にスタッフルームとシャワールーム大小にトイレがあり、それを中心にして廊下が一周している。廊下に病棟が並んでいる。イ

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第4話 手術当日 2021年7月29日 さようなら、外脛骨

第4話 手術当日 2021年7月29日 さようなら、外脛骨

 6時起床。喉がからから。担当看護師の前で喘息の吸入をする。12時手術とのこと。起きていると喉が乾き腹も減るので寝ようと思うが緊張しているせいか10分に一度目が覚める。
 爺さんが「引き出しに入れてた名刺入れがなくなった。家族に連絡が取れない」と騒いでいる。相手する看護師も大変そうだ。フットポンプというものを右足につける。空気を入れると右足がぎちぎちになる。血栓ができるのを防ぐためだという。
 朝

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第5話 手術後 2021年7月29日 さようなら、外脛骨

第5話 手術後 2021年7月29日 さようなら、外脛骨

 人工呼吸器をつけている。視界がぼやけている。看護師が二人話をしている。「聞こえますか」頷く。「自動で痛み止めを流しています。痛みが強くなったら左手で持ってるボタンを押すと痛み止めが出ます」頷く。
「……はどうなってるの?」
「……さんが……って言ってました」
「自分で確認しなきゃ駄目じゃない。……」

 足が切り開かれ骨が抜き取られたわりには痛みはとても少ない。ほとんどないといってもいいだろう。

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第6話 手術後2 2021年7月30日 さようなら、外脛骨

第6話 手術後2 2021年7月30日 さようなら、外脛骨

 痛み止めが再開されたといっても痛みが0になるわけではない。10段階で8前後が続く。我慢できるかできないかで言えば我慢できない。入院用に電子書籍や本をたくさん用意してきたがそんなもの楽しめる余裕はない。スマホで現状を記録するだけで精一杯だ。朝食がやってきたが味わう余裕もない。深夜の痛みよりはましだと自分に言い聞かせる。何度言い聞かせたところで痛みが収まるわけではない。歯を食いしばって耐える。この間

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第7話 手術後3 2021年7月31日 さようなら、外脛骨

第7話 手術後3 2021年7月31日 さようなら、外脛骨

 朝食を食べて寝て昼食を食べて起きる。朝食の内容はまったく覚えていない。深田えいみが現れて「私のこと覚えてます?」と訊くのでもちろんですと答えると「よかった」と笑ったので胸がときめく。担当看護師が現れて「朝のこと覚えてます?」と訊くので「まったく覚えてませんと答えると「眠ったまま朝ごはん食べてましたよ」と笑ったので胸がときめく。
 昼食後に抗生剤の点滴を打つ。片足立ちでテレビ台の上の引き出しから本

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第8話 手術後4 2021年8月1日 さようなら、外脛骨

第8話 手術後4 2021年8月1日 さようなら、外脛骨

 朝の検温で36.6度に下がったためPCR検査はなしとなる。初老への若い女性看護師の対応が子どもに言い聞かせているように聞こえる。たまにやってくる深田えいみの低音ヴォイスに癒やされる。片足立ちでトイレに行くのも慣れてきたが、看護師に見つかると「看護師を呼んで車椅子でトイレに行くように」と叱られてしまうのでタイミングを見計らわねばならない。転んだり左足を床についてしまう危険性があるから注意をする。と

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第9話 リハビリ1 2021年8月2日 さようなら、外脛骨

第9話 リハビリ1 2021年8月2日 さようなら、外脛骨

 10時過ぎに起きる。朝食の記憶はないがスマホに写真が残っていたのでちゃんと食べたようだ。
 担当医がやってきて「痛いところはありませんか」と訊かれる。親指の先が痛いなと感じたためそう伝えるが、考えてみれば別に痛くない気がしてきたので「やっぱり痛くなかったです」と答えると担当医がふふっと笑った。痛いかと訊かれると痛い気がするし、痺れるかと訊かれると痺れる気がするし、でも考えてみれば痛くも痺れもない

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第10話 リハビリ2 2021年8月3日 さようなら、外脛骨

第10話 リハビリ2 2021年8月3日 さようなら、外脛骨

 気がつけば入院7日目。小銭をポケットに入れ車椅子でデイルームに行く。展望台になっておりごみごみとした街を一望できる。給茶機と自販機と本棚がある。面会用に椅子とテーブルが並んでいるが新型コロナウイルスの影響で面会は謝絶。のはずが若い男女が本とノートを開いて勉強をしている。自販機に小銭を入れなにを飲むか悩んでいると若い男性が「押しましょうか?」と声をかけてきた。自販機は車椅子用に下部にもボタンがある

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第11話 リハビリ3 2021年8月4日 さようなら、外脛骨

第11話 リハビリ3 2021年8月4日 さようなら、外脛骨

 朝に担当医がやってきて足の状況を訊かれたので「右足も痛くなってきた」と答えると苦笑いをされる。「左足が使えるようになったら痛みも治まるでしょう」とのこと。そのすぐ後に担当看護師がやってきて「病棟で2人コロナ陽性が出たので明日PCR検査をしましょう」とのこと。
 昼前にリハビリ。足の上げ下げが1セット増える。相変わらず終盤は地獄。
 トレーナーが僕が右手薬指にはめている指輪に注目した。数年前暇だっ

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第12話 リハビリ4 2021年8月5日 さようなら、外脛骨

第12話 リハビリ4 2021年8月5日 さようなら、外脛骨

 朝、寝ぼけた状態で採血とPCR検査を受ける。以前受けた時と違いとても痛い。鼻の奥のまたその奥までぐりぐりとされる。イケメンがやってきて「2週間後にギプスを巻き直す」とのこと。理由を訊くと「足の経過を見たり、ギプスを小さくしたり、歩きやすいように裏にゴムをつけたりするみたいですよ」と。
 だらだらとしているとイケメンが担当看護師を連れてやってきた。
「ギプスの端に保護入ってないんだけど大丈夫なの?

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第13話 リハビリ5 2021年8月6日 さようなら、外脛骨

第13話 リハビリ5 2021年8月6日 さようなら、外脛骨

 朝、担当看護師に売店で欲しいものがあると伝えると「車椅子で行っていいですよ」と言われる。驚いたので「一人で行っていいんですか?」と返すと「一人が心配ならヘルパーさんについて行って貰いますか」と言われたので慌てて一人で行くと返す。もっと早くに言っておけばよかった。
 エレベーターで降りて連絡通路を通りまたエレベーターで降りる。一般用のエレベーターでは中で一回転出来ずバックして降りることになってしま

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