マガジンのカバー画像

さようなら、外脛骨

30
左有痛性外脛骨の手術をし、コロナ禍の中1ヶ月入院しました。 それを小説にしました。
運営しているクリエイター

#日記

第24話 リハビリ16 2021年8月17日 さようなら、外脛骨

第24話 リハビリ16 2021年8月17日 さようなら、外脛骨

 脂肪肝のため入院前から定期的に行っていた肝臓のエコー検査の予約が急遽今日となったため朝食抜きでリハビリ。
 リハビリも話すことがなくなる。無言が続くが、無言がちょうどよいのかもしれない。手のひらの痛み軽減のためグリップ部分に包帯を巻いてくれたが、その際トレーナーが眼前で屈み視界いっぱいに真っ白なナースパンツに浮かぶ下着の線が映る。あまりの刺激で頭がぼうっとする。
 病室に戻るとすぐに検査に行けと

もっとみる
第25話 リハビリ17 2021年8月18日 さようなら、外脛骨

第25話 リハビリ17 2021年8月18日 さようなら、外脛骨

 35歳の誕生日。誕生日を人に祝われなくなったのはいつからか、思い出せない。自分で祝うということもない。しかし今日は祝われる可能性がある。トレーナーは言った。
「ここでお祝いしますよ」

 ただの社交辞令だ!
 わざわざそれを言うか?
 もう自分に期待するのはやめなさい!
 担当する患者全員に言うのか?
 話のネタにしただけ、そんなもの本気にするな!
 連絡先ぐらいは交換できるんじゃないか?
 仕

もっとみる
第26話 リハビリ18 2021年8月19日 さようなら、外脛骨

第26話 リハビリ18 2021年8月19日 さようなら、外脛骨

 昼食前にリハビリ。右肩にエコバッグを抱え左手は松葉杖の状態で階段を登る。ちなみにこのエコバッグはユニクロで買ったアンディー・ウォーホルのバナナがプリントされたもの。アンディー・ウォーホルもヴェルヴェット・アンダーグラウンドも特別好きというわけではないが、デザインがよいので買った。
 左足を一つ上の段に載せ、次に左手の松葉杖を載せ右足を持ってくる。松葉杖に体重をかけることで左足のサポートになるとい

もっとみる
第27話 退院前日 2021年8月20日 さようなら、外脛骨

第27話 退院前日 2021年8月20日 さようなら、外脛骨

 朝、担当医とサブ医がやってくる。片手松葉杖の状態で一週間リハビリを続ける予定だったと言われる。来週ギプスを外した後も松葉杖生活。痛みが完全になくなるのは3から6ヶ月後。完全になくならない人もいるとのこと。
 5分10分歩いたり内側に体重をかけると痛みが走るが、階段昇降も移動も松葉杖がなくても問題はない。

 昼食後に久しぶりに深田えいみが来る。
「もう退院なの? 早いねぇ」
「25日、あっという

もっとみる
第28話 退院 2021年8月21日 さようなら、外脛骨

第28話 退院 2021年8月21日 さようなら、外脛骨

 朝10時に退院。25日ぶりに病院の外に出る。ずっと冷房の効いた場所にいたためか、外に出て少し歩いただけで汗が流れる。

 25日ぶりの我が家は今まで何度も見た我が家だった。もちろん僕以外に誰もいない。話す相手もいない。なんの音もしない。誰もやってこない。面倒だと思っていた看護師や介護士、トレーナーに清掃員とのやり取りが懐かしく感じる。もうあの人達に会うことはないだろう。もっとコミュニケーションを

もっとみる
最終話 左足を取り戻した日 2021年8月25日 さようなら、外脛骨

最終話 左足を取り戻した日 2021年8月25日 さようなら、外脛骨

 朝、バスに乗って大学病院へ。思ったよりも時間がかかり予約時間ちょうどに到着。一歩歩くたびに痛みが走る。
 整形外科で1時間ほど読書をして待つ。診察室ではなく処置室に呼ばれベッドに横になるよう言われる。サブ医と研修医に囲まれて例のギプスカッターでギプスを真っ二つに。
 サブ医がギプスを持って別室へ行ったので傷口をスマホで撮影する。傷口は赤黒いが血もなく思ったよりも綺麗で、触ってみるが感覚は薄い。

もっとみる