『稲盛和夫一日一言』 7月16日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7月16日(火)は、「善き思いをベースとする文明へ」です。
ポイント:物質文明の巨大さに匹敵するだけの精神文明を築かなければならない。その精神文明の根幹にあるのは、人間の善き思い。
2003年発刊の『新しい哲学を語る』(梅原 猛/稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、今後の人類のあるべき姿について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
創造という面では、人類は二十世紀、科学技術に立脚した高度な文明を築きました。これによって、人類は豊かな生活を享受できた半面、いま地球環境の破壊という問題に直面しています。
それは、フロンガスによるオゾン層の破壊、農薬や肥料などによる河川や海、土壌の汚染、さらには化石燃料の燃焼によって生じる二酸化炭素がもたらす地球温暖化などの問題です。
また最近では、科学技術のさらなる進展が、人類を含め地球上に生きとし生けるものすべてに、大きな影響を与えようとしています。
例えば、ダイオキシンなどの発ガン性物質、環境ホルモンによる生体への影響、さらにはDNAの操作や細胞の核移植によるクローン技術の発達などで、このような急激な科学技術の発達が、生命の存在そのものに大きな脅威を与えているのです。
私はこのことを、次のように表現してもいいのではないかと思います。
「人類は、神業(かみわざ)を手に入れ、自由に使いはじめた」
つまり人類は、今まで神のみが関与していたような高度な技術を手に入れ、自由に駆使しはじめたと考えられるのではないか。そして、神業を手に入れた我々、もしくは神業を駆使しはじめた科学者や技術者であるからこそ、ここで改めて考えなければならない、大切な問題があると思うのです。
それは「神業」を手に入れた者が、改めて心の持ち方、心のあり方、つまり「哲学」を問われなければならないということです。もし「神業」を駆使する科学者が、誤った哲学を持つならば、人類の破滅につながりかねない、と私はたいへん危惧しています。
たしかに、さまざまな哲学があってもいいと思います。しかし、その哲学には、ただ一つ絶対に外してはならないキーワードがある、と私は考えています。それは、「世のため人のため」ということです。どんな高度な技術を持とうとも、「世のため人のために尽くす」ということだけは、人類共通の精神的基盤として、絶対に失ってはならないと思うのです。
とくに、科学技術に携わる者は、自分の「哲学」のなかに、世のため人のため、いやこの地球、宇宙のために貢献しようという考え方を持つことが、今後強く求められるのではないかと思います。
なぜなら、「世のため人のために尽くす」ということが、この世界のあり方そのものだからです。
宇宙には、森羅万象すべてのものを生成発展させてやまない流れが存在していて、それは「宇宙の意志」とも呼べるものではないでしょうか。
そうした宇宙の流れと調和し、進化発展していくような考え方や生き方をとるならば、人生や事業も素晴らしい成果を残すと、私は信じています。
ですから、個々の人間が持つ考え方は自由ですが、その根底には宇宙が本来持っている摂理と同調する、すなわち「世のため人のため」という「愛」に満ちた考え方を持たなければならないと思うのです。
人類が「神業」を手に入れてしまった現在、その「神業」を行使する人間の「哲学」また「人生観」というものが厳しく問われてくると思います。
科学技術に立脚した文明を生きる人類は、そのことを胸に刻み、「世のため人のため」という「愛」に満ちた考え方、哲学を基軸に置いて生きていかなければならないと強く思っています。(要約)
今日の一言には、「(精神文化の根幹として)『善き思い』を開花させることで、人類は物質的に豊かで、便利で生活しやすい、互いに思いやり愛し合う『楽園』を実現することができる」とあります。
物質的な豊かさを追求する物質文明から、心の豊かさを追求する精神文明へのシフトが議論されていることは知っていても、現実としてそれを物心両面ともに実感できているという人は、ごく少数派ではないでしょうか。
この夏、新型コロナの五類移行後初めての再流行が懸念されています。私の周囲でも、身近な人が罹患したり、あちこちで発熱外来が込み合ってきたという話を耳にするようになりました。
新型コロナウイルスの発生源については、未だ中国武漢ウイルス研究所からの流出説が根強く残っています。その根拠は、この研究所が元々コロナウイルスを取り扱っており、各種ウイルスのヒト細胞への感染性を評価する機能獲得に関する研究機関で、その安全性や管理に問題があるとの指摘がなされていたことによります。
この先も、その真偽が明らかにされることはないだろうとは思っていますが、科学技術が進展するなかで、この災難が人類が普遍的に持つべき「哲学」「倫理感」といったものに関する大きな問題提起になったことだけは間違いないところです。
現代を生きる人間の一人として、「善き思い」「世のため人のため」といったキーワードが頻繁に出てくるような、心豊かな社会の一日も早い実現を祈念しています。
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