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【書評】武器としての「資本論」
こんにちは。ろんどん。です。
今回は、白井聡著 " 武器としての「資本論」" を紹介していきたいと思います。
なぜ格差社会が生まれるのか
なぜ上司がイヤな態度をとるのか
なぜ自己啓発書を何冊読んでも救われないのか
本書は、こういった疑問が、『資本論』を読み解いていくことで、絡まったヒモがほどけるように、一気に解決していきます。
筆者はこのように語ります。
資本主義というのは、
生産力を指数関数的に上昇させ、かつての人類にはなかった物質的豊かさを我々に与えつつも、そこに貧しさを生むものである。
ここは、私たちもうんうんと頷けそうですね。
私は、今は仕事がありませんが、某大手学習塾で、個別指導のアルバイトをしています。
当然ながら、私は労働者ですから、「もうお前来なくていいよ、クビ。」と言われてしまえば、お金を得ることはできなくなってしまいます。
一方、会社側は、「お前じゃなくていい。代わりはいくらでもいるんだ。」と言うことが、容易にできてしまう。
このことから、資本家と労働者の間には、言いようもない主従関係、上下関係が存在することが分かるでしょう。
しかしながら、『資本論』によると、
資本主義は、
① 貨幣・生産手段・生活手段の所有者
② 労働力を持った自由な労働者
が出会うことによって始まる。
と、あります。
本来、建前上では、資本家と労働者は、対等であるはずなのです。
しかしながら、現実はそうはなっていない。
ここに、資本主義の『終わりなき包摂』という特性が、見えてきます。
当然、市場競争が存在しますから、資本家は、より利潤を上げるため、業務方式の決定権を握ることになります。また、機械化によって、労働過程を労働者に委ねる必要がなくなり、これに拍車がかかりました。
すると、どのような業務時間で、どんな持ち場で、どんなことをやらされるか、といった肉体の動きが、完全に資本に包摂されてしまうわけです。
「何もスキルがなくて、他の人と違いがないんじゃ、賃金を引き下げられて当たり前でしょ。もっと頑張らなきゃ」
あなたは、どう思いましたか。
私を含め、多くの人が、「確かに。そりゃそうだよな。」と納得したのではないでしょうか。
このように、筆者は、資本家は肉体だけでなく、魂までも包摂するのだと主張します。
感覚や価値観を含めた『魂』が希薄になっていくこと、これこそが資本主義が生む『貧しさ』なのだと、私は解釈しました。
じゃあ、どうすればいいのか。
そのヒントは、
マルクスが、労働力の価値を
「労働力の再生産に必要な労働時間によって規定されている。」
「労働力の所持者の維持のために必要な生活手段の価値である。」
と規定していることにあると、筆者は語ります。
この『必要な』という曖昧な語句こそが、労働者が立ち上がるためのトリガーとなり得る、というわけです。
最終章においては、この話から、私たちが今何をすべきか、という指針が、力強く示されます。
それを知ったとき、きっと、
一人一人が『個』としての自信を取り戻すことが、できるはずです。
***
ここまで、資本主義の包摂を取り上げつつ、あらすじを簡単にまとめました。
長かったですが、少しでも、本書の面白さ、分かっていただけたでしょうか。
本書を読んだ私の感想としては、
『ありがたすぎる』
でした。
『資本論』を読む勇気がないから、手に取った本書。
ページをめくってみると、
分かりやすい具体例、そしてスムーズな論理展開。
はっとさせられることもあれば、うんうんと納得できることも。
何度も読んで、解釈しなおした箇所もありますが、
総じてとてもおもしろく、勉強になる良書だったと、私は思います。
100年以上前に、マルクスが執筆した『資本論』。
原書をそのまま読むのは、あまりにも難解で、時間がかかり過ぎる。
ですが、本書では、『資本論』のエッセンスをおさえ、今の現状と照らし合わせながら、捉え直しており、大変読みやすいものになっています。
資本論、読みたいけど、なかなか手が出ない...
と思っている方、
筆者は、かの名刀『資本論』を、誰でも使いやすいように、改良してくれています。
後は、皆さんが、その武器を手に取るだけです。
それでは。また次回。
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