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【通信制高校事例】「先生と生徒」の関係性が強固になり、信頼関係や心理的安全性が育まれた

こちらの記事はSELによる成果、変容の事例紹介です。

全国津々浦々にキャンパスがあり、エリアに紐づいてキャンパスに通うという通信制高校の第一学院高等学校。今日の記事では、「PBL&SELを活用した学びへのシフト」し、先生と生徒の信頼関係が醸成されるまでをご紹介します。

第一学院高等学校は「1/1教育」を理念に掲げ、全国に54キャンパスを構える通信制高校です。
「PBL&SELを活用した学びへのシフト」に取り組み始めたのは4年前。
当時はたった2つの校舎がこの先進的なチャレンジを行なっていましたが、今では半分以上のキャンパスが導入するまでに輪が広がりました。さらに、生徒のご家族が我が子の成長実感の声を届けてくれるなど、家庭にまで広がる取り組みとなっています。
本記事では、導入1キャンパス目である秋葉原キャンパスから頂いた現場の声や、実際の出来事をもとに執筆しました。

■「先生と生徒」の関係性が強固になり、信頼関係や心理的安全性が育まれたと感じる出来事

ある生徒さんが父親の転勤により、第一学院高等学校・秋葉原キャンパスの通学圏内から離れなければならなくなりました。
その子は、「秋葉原キャンパスには信頼できる先生もいるし、心の内を打ち明けることができる友だちもいる。だからこそ、転校ではなく、現在通っているキャンパスに、オンラインでこれからも通いたい」と話をしてくれたそうです。

このように、生徒と先生、生徒同士の信頼関係が厚い秋葉原キャンパスですが、実は以前は少し状況が異なっていたといいます。
どのように信頼関係が育まれたのでしょうか?キャンパス内の変容プロセスをご紹介します。

■変容はどのように起こったのか

(ステップ1)先生方自身がSEL×PBLを体感する
(ステップ2)SEL×PBLを活用し実践する

SELの導入研修

秋葉原キャンパスは、第一学院高等学校の中で「PBL&SELを活用した学び」を最初に導入した2キャンパスのうちの1つです。

スタート時はまず教員研修を実施しました。キャンパス長と現場の先生方3名の計4名でSELに取り組んでいきました。心理的安全性とは何かを学び、SELとは何かを掘り下げ、そして、PBLとSELをセットにすることで学びが深まるといったことを実感していきました。

先生の変容

研修が終わると、次は先生が生徒に向けて「PBL&SELを活用した学び」の場をつくりました。印象に残っているのは、グランドルールの策定を行った時のことです。

グランドルールの設定はとても難しく、最初は「対立を生まないようにうまく自分が自分がまとめないと...…!」と先生が主導権を握ってしまう関わり方が散見されました。
しかし次第に、意見の違いや立場の違いなどを表明してもらいつつ、否定はしないという関わり方に変わっていきました。
つまり、他の生徒のことを意図せず否定してしまう生徒がいたときの先生の関わり方、あり方が大きく変化したのです。

その他の場面でも、先生が関わり方やあり方の試行錯誤を重ね、SELをベースに PBLを進めていく中で生徒との関係性が育まれていきました。

生徒の変容

先生方たちが、「すごく良い安心安全の場ができてきている」という実感を持つようになると、生徒たちの様子も変わっていきました。
具体的には、生徒がキャンパスや地域フィールド(地域のご近所さんの感じている課題など)を "自分ごと化" して地域活動を行うようになりました。また、文化祭・体育祭を生徒が自主運営する体験を通じて身近な課題解決に向けて生徒が中心となって取り組むようになりました。
こうした生徒の主体性を目の当たりにした現場の先生たちは、さらに一人ひとりの子どもたちの気持ちを重んじて、フォローする姿勢で、伴走するようになりました。

学校全体としての変容

キャンパス長を中心に、生徒自身の「自由」と生徒たちを受け入れる「受容」をとても重視してきました。実際に、一人ひとりがありのままでいることができる雰囲気が学校全体で育まれてできていました。
一人ひとりの子どもたちの個性を尊重する中で、先生方の中にも"自分がやる" と自ら生徒個々人と向き合う姿勢が育まれていきました。
また、「ないものを見て指摘や期待をするのではなく、その子たちにあるものを見て応援する」という空気感が生徒に伝わり、関係性やキャンパスに対する安心安全を感じ、結果的に秋葉原キャンパスへ思い入れを感じるようになっていきました。

■【背景】なぜこのアプローチを行ったのか

【背景】
SELを導入する前までは "自分たちでやる" という意識が低かったり、生徒への関わり方や先生方の業務に関しても、どこまで手を出していいのかヒヤヒヤしながら見守っている状況でした。(当時のキャンパス長)

SEL導入するまでの様子や導入後の取り組みの詳細を下記にまとめていますのでぜひご覧ください。

生徒が心理的安全性を感じる前に、まずは先生自身が心理的に安全であると感じられるような環境整備を行う必要性があったといえそうです。

【図】教員マインド変容ステップ

■【取り組み】PBL×SELを実現する2つのステップ


学びの場をつくられる現場の先生方が、最終的に生徒に対して「PBL×SELに基づいた学びの場」を届けられるようになるまでには、
「先生方自身がPBL×SELを体感する」
「PBL×SELを活用し、実践する」
という2つのステップが重要です。
そのため、まずはSELを先生方に導入し、体感していただくことを大切にしました。

特にエッセンシャルな要素である「先生方自身がPBL×SELを体感する」について、下記の記事でお話ししていますのでこちらもあわせてご覧ください。

現在は秋葉原キャンパスでは挑戦しやすい雰囲気ができており、先生がやりたいと思ったことを生徒と一緒に取り組むことができているそうです。生徒と向き合って対話し、それを実践する環境をキャンパスの全員でつくる雰囲気が育まれています。

■【振り返り】roku youの関わり

<rokuyouのアプローチ>
・先生方に向けた研修
・定期的な相談会
・ラポール形成/心理的安全性の場づくりの情報キットの共有

1.先生方に向けた研修

SELに関して「こういうものなんだ!」という体感値や、「普段生徒に接する上で、自分たちが大切にしていることと大きく変わるらないんだ!」という実感値をキャンパスの先生全員で共有しました。

2.定期的な相談会

PBL×SELの取り組みの導入が落ち着く2年ほどの間、roku youが少なくても月1回の頻度でキャンパスの現状やあゆみ、課題、方向性などをヒアリングし、フィードバックやコメントを行うプロセスを続けてきました。
現場の意志を尊重し、発展を祝福しながら必要な助言を提供することで、PBL×SELがキャンパス全体に浸透するプロセスに伴走することができました。

3.ラポール形成に向けた「心理的安全性の場づくり情報キット」の共有

SELが土台となっている場づくりや安心安全の雰囲気をキャンパス全体でつくっていく際の「心理的安全性の場づくり情報キット」っというガイドラインを共有し、各種のSELワークショップにトライできるような仕組みを構築していきました。SELからPBLへの挑戦(マイプロジェクト化)の過程においては、応用編をご覧頂きながら調べ学習で終わらずに、身近な課題から問いを持ち、実践的な学びへとつなげることができるよう機会を設けていきました。

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「心理的安全性の場づくり情報キット」

SELやPBLを頭で理解する、必要性をそれらしく定義づけるよりも、先生方一人ひとりが自分らしさを充分に発揮できるような機会を設けていくことが重要です。
先生と生徒の信頼関係は "先生のあり方" で決まります。
生徒の変容を起こすためには、先生の意欲、動機、根っこと繋がった取り組みとなっているということが大きなポイントであるといえます。

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