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SELによる成果、変容の全体像見せます!

私たちは、Social Emotional Learning を(社会的能力と人の気持ちに関わる能力を伸ばす学び)ベースに学びの仕掛けづくりを行っています。
様々な学校でSELを導入する中で大きな変化がありましたが、どの学校でも、共通して見られる変化、変容のための要素があることが分かってきました。また、ぼんやりとSELによる変容にはあるパターンがあることが見えてきました。

SELによる成果、変容の全体像を整理する意味

SELによる成果、変容を整理することは、SELのアプローチをする際に今ここの状態にいて、次はここのフェーズにいきたいよねという道標にもなると考えています。私たちとしても1つの判断基準になりますし、成熟度合いと、その成熟度合いに合わせてどのようなアプローチを私たちが取るべきか、ある意味ロジカルに分かりやすく伝えるためのものになると思います。

SELについては以下をご覧ください。

生徒の成長に欠かせないもの

現在の教育システムを見たときに、安心感を持って自分の内側にあるものを分かち合ったり、内側にあるものから社会を自分ごと化していくことは難易度が高く、挑戦することを諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。
いきなりこんなことはあまり言いたくありませんが、学校や社会生活の中にはドリームクラッシャーと呼ばれる、頑張っている/頑張ろうとしている人の足を引っ張る人がいます。思い当たる節がある方もいると思いますが、自分の夢や本当の意志をどこか抑圧せざるを得ない環境や関係がありますよね。

多くの学校と協働してSELを実装していますが、生徒が変化するためには生徒に向けた支援のみでは難しいと感じています。そこに欠けているのは、教室内や学校全体の安心できるコミュニティです。生徒が自由に表現したり、自分らしく過ごすためには、誰からもジャッジされることはないという心理的な安全を感じていることが必須です。そのため、教室内や学校全体を安心できるコミュニティにしていくためには、教員もとても重要な存在になります。

SELによる変容

SELによる変容のパターンとは、まずはじめに教員のマインドセット変容が起き、その後に生徒が変化するというものです。つまり、教員のマインドセットの変容がなければ、それに伴って生徒も変わることが難しくなるとも言えます。
そう言ってしまうほどに生徒の変容には教員がポイントになります。しかし、教育現場では生徒のみにスポットが当たりがちです。教員に対しては自分で頑張る/どうにかするというように、サポートを得づらい印象があります。生徒を第一に考え準備することは教員という立場からすると当然のことなのかもしれません。しかしそれ以上に、自分(教員)たちの心理的安全性を担保することが「生徒のため」の第一歩になります(以下、教員マインドセット変容の図を参照)。
つまり、生徒のためにと思っていることを自分(教員)たちに置き換えるということです。まずは自分の環境を整えることが大切だと考えています。

教員のマインドセット変容

教員マインドセット変容

教員の変容は、次のようなステップで起きていきます。

①ジャッジされない職場環境が作られる
②心理的な安全性が生まれる
③ギスギス感から抜け出し、自分の中の感情や思考に気づく余裕が生まれる
④これまで伝えてこなかった、自分の感情や思考を表現するようになる
⑤個々人の「らしさ」の発揮が思考、行動を通して促進される
⑥他者(生徒)に対してジャッジしない、感情や思考を受容する

rokuyou

現実はこのようにスムーズにはいかないことがほとんどです。うまく進んだと思ったら戻ったり、同じところを繰り返したり、うまくいかないなと思っていたのにある時急に次のステップに進むといったことが起きます。
このようにすぐに期待するほどの効果が出ないこともありますが、この教員のマインドセットの変容で基盤が整うと、教室内や学校全体が安全できるコミュニティへとなっていきます。

印象に残っている、探究学習を導入した公立高校での出来事をご紹介します。

当時、先生の授業中の生徒への関わり方は、ふざけている生徒を注意することだけだったのですが、そこには先生方の様々な葛藤(もう少し生徒に寄り添って自分たちができることをやりたいけど・・・できないとか、そもそもやり方が分からないなど)があることが見受けられました。

これを教員マインドセット変容図で言い換えると、③の「自分の中の感情や思考に気づいてはいた」ものの、他者に伝えることはできない状態にあったと考えられます。そのため、④の「これまで伝えてこなかった、自分の感情や思考を表現するようになる」ためのアプローチを行いました。

そこで私たちは先生方に寄り添い、関係性を築くことを大切にしました。授業で生徒との関わり方を体現したり、助けてと言い合える関係性を築く中で、だんだんと「ふざけている生徒を注意するだけ」の関わり方から「積極的に介入する(対話する)」関わり方へと変容していきました。

変容ステップをぐるぐると回りながら、少しずつ教員一人ひとりの「もう少し生徒に寄り添って自分たちができることをやりたい」が行動として表れ始めました。

生徒の変容

生徒/学校の変容

⑥他者(生徒)に対してジャッジしない、感情や思考を受容する
⑦生徒と教員の間にラポール(信頼関係)が形成される
⑧学校全体での心理的安全性が高まる
⑨生徒の「らしさ」が発揮される(主体性、ワクワク感の向上)

rokuyou

探究学習を導入した公立高校では、上記のような先生方の変容により、生徒が取り組むマイプロジェクトの進み具合が明らかに変わっていきました。

教員が生徒の感情や思考を受容するようになると、生徒は自分の意志を表現するようになっていきます。その意志を受容することを繰り返すと、信頼関係がうまれ、そこでやっと心理的に安全な場であると体感覚的に理解することができます。心理的安全性のある環境では、より生徒の「らしさ」が発揮され、私たちが想像もしないようなことまで成し遂げてしまうこともあるのです。

ベースに、ジャッジされずに感情や思考を受容してもらうこと、心理的安全性があって初めて、生徒一人ひとりの主体性が発揮されていきます。
この環境をつくるためには、教員の準備ができている必要があるのです。

SELによる成果、変容

おわりに

今日の記事は、SELによる成果、変容の全体像についてでした。
大切なのは安心できるコミュニティにしていくことです。そのためにも、自分から変わろうとすること(ジャッジしないなど、小さな一歩を踏み出すこと)がポイントかもしれませんね。今自分/コミュニティがどの状態にいるのかを判断する際に、SELによる変容の全体図をぜひ参考にしてみてください。
SELによる変容事例についても公開していく予定ですのでどうぞ楽しみにお待ちください!

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