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会社を立て直すのはミドルマネジメント

[要旨]

冨山和彦さんによれば、中間管理職のうちから、社長の視点に立って判断をしたり、行動をしたりすることが大切だそうです。もちろん、実際にリーダーシップを発揮できるチャンスは低いものの、日々、全体最適の視点を持って行動をしていけば、そうでない人との能力に大きな差がつくということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、冨山和彦さんのご著書、「結果を出すリーダーはみな非情である」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、冨山さんによれば、会社のフロントラインに立つ人たちは権力構造の外に置かれており、基本的には野党的立場をとるので、現場が権力を握ったら会社は潰れることになるので、会社を経営する人も、会社で働く人も、会社全体が最大の成果をあげるための全体最適の立場に立って問題の優先順位づけをすることが大切ということについて説明しました。

これに続いて、冨山さんは、ビジネスパーソンは、ミドルマネジメントのうちから、将来、経営者になるときに備えて、社長になったつもりで判断したり、行動したりすることが大切ということを述べておられます。「自分が権力を行使する側になると、さまざまな話が上がってくるようになる。そのときに、耳を傾けるべき話なのか、ただの愚痴として聞き流しておけばよい話なのか、判断しなければならない。

そういうときに、かつて養った現場観察眼が役に立つものなのだ。ミドルマネジメントになったら、社長になったつもりで判断し、行動しておかないと、将来、社長になったときに何も決められなくなってしまう。もっと言うと、新入社員で、まわりが野党だらけのときからそう思っていないと、いいトップマネジメントにはなれない。企業を取り巻く経営環境が厳しい時代だけに、若い人もそのぐらいの気構えが必要だ。

自分がいつか経営者になるつもりで20代を過ごした人と、野党気分丸出しで愚痴ばかり言っていた人とでは、30歳になるころには、どれだけ力の差が表れることか。野党気分のまま課長になって、相変わらず文句ばかり言っている課長も(下手をするとヒラ取締役も!)、右肩上がりの時代には結構いたが、これからの時代、その手の課長は余剰人員の最たるものである。そういう人は上に行けば行くほど、力を発揮できないことが、本人にも周囲の人間にもわかってきて、次第に輝きを失っていく。

漫然とミドルマネジメント、いわゆる中間管理職の役割だけをこなしていた人間と、トップを目指してミドルリーダーとして、日々、研鑽を続けた人間では、時間経過とともに決定的な差がついてしまうのだ。課長レベルが経営上の本当に重大な問題解決を担う局面は、頻度としては非常に少ないし、その場面で課長が何十人も必要とされるわけではない。ほんの数人が動くだけなので、自分がそういう立場に置かれる可能性もかなり低い。

しかし、会社の立て直しや、変革を進めるときというのは、必ずミドルマネジメントの活躍が必要になる。自分にその大役が回ってきたときに、十分な準備ができているかどうかが問題で、チャンスが来ても活躍できない人もいる。むしろ、そういう人の方が多いだろう。差を生むのは、やはり、マインドセットの違いだ。例えば、オペラであれば、最初はその他大勢の合唱のひとりかもしれないし、舞台美術のうちのひとりかもしれない。

修行時代には、舞台装置にペイントを塗るだけかもしれないし、カナヅチでトンカン、チンカンつくっている立場かもしれない。しかし、その時点から、『自分が、もし、この舞台全体を演出する立場だったらどうか』と考えながらやっているか、ただひたすらトンカンやって、『ああ、今日も1日終わったな』と満足しているだけかでは、数年後に大きな違いとなって現れてしまうものだ。だから、かなり早い段階からそのつもりで行動していないと、指揮者や舞台監督にはなれないのである」(37ページ)

冨山さんは、中間管理職であっても、「自分が、もし、この舞台全体を演出する立場だったらどうかと考えながら仕事をする」ことをお薦めしておられますが、これは、組織の中に、シェアドリーダーシップが発揮されている状態です。シェアドリーダーシップとは、会社の従業員全員が、業績を高めるために、必要なリーダーシップを発揮することで、このような状態の組織は、当然、業績も高くなります。

とはいえ、冨山さんが本に書いておられることのご主旨は、中間管理職が経営者層に就くことになったり、または中間管理職のままでリーダーシップを発揮する機会が得られたときに、きちんとリーダーシップが発揮できるようにしたりするために、普段から全体最適の視点で思考するようにしておくことをお薦めしておられるものです。

もちろん、冨山さんのお考えは正しいのですが、ミドルだけでなく、ロワーであっても、トップの視点でリーダーシップが発揮できるようになれば、業績は高くなるし、将来のトップマネジメントの有力な候補がたくさん育成できることになります。現在、経営者の方の多くは、どうやって会社の業績を高めればよいか、また、なかなか幹部が育成できないという課題で頭を抱えていると思います。

しかし、それらの課題は、ロワーマネジメントからリーダーシップを発揮してもらうという取り組みで解決することができます。もちろん、従業員の方に対して、リーダーシップを備えてもらうようにすることは、難易度が高い取り組みです。ただ、現在は、これらができなければ、会社の競争力を高めることはできなくなっています。したがって、1日でも早く、経営者自身が、部下たちの育成に向き合い、自分自身の育成スキルを高めることが重要と言えます。

2024/7/23 No.2778

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