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マイルストーンで今の活動を明確にする

[要旨]

株式を上場させる前のファーストリテイリングでは、社長の柳井さんが、マイルストーンを掲げ、それを目指して活動してきたことが、同社を発展させた大きな要因になっていると考えられます。具体的には、1991年に、「標準的な店舗を、毎年、30店舗ずつ出店し、3年経てば90店舗以上となり、上場できる規模になる」というマイルストーンを掲げ、1994年に、株式上場を遂げることができました。

[本文]

今回も、公認会計士の安本隆晴さんのご著書、「ユニクロ監査役が書いた強い会社をつくる会計の教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、パナソニック創業者の松下幸之助さんは、「経理というものは、単に、会社の会計係ではなく、企業経営全体の羅針盤の役割を果たす、いわゆる、経営管理、経営経理でなければならない」と考え、経理を重視した結果、業績を安定的に発展させてきたということを説明しました。

これに続いて、安本さんは、ファーストリテイリングについて、著しい発展をしてきた要因は、マイルストーンを明確にしたことであるということを述べておられます。「企業を継続的に成長させるためには、創業時に、経営者が掲げた高い志を持ち続けることが必要です。それと同時に、常に高い目標を掲げ、その目標に向かって全社員で努力するような組織をつくることです。単に、『安定成長』を目指すとして、低い目標を掲げていても、前期比100%に達することすらできないことが、よくあります。(中略)

彼(柳井正さん)は、1991年9月1日に、『いつか世界中の資源、設備、才能、情報を利用し、顧客の欲する商品をどこよりも早く、安く、大量に販売する』と、全社員の前で宣言し、そのコンセプトを現した、ファーストリテイリングを社名にすることにしました。(中略)当時、『標準的なユニクロ店舗を、毎年、30店舗ずつ出店し、3年経てば90店舗以上となり、上場できる規模になる』と、マイルストーン(道標)を、具体的に掲げたことも、成功要因の1つだったと思います。1994年7月14日に、広島証券取引所に上場したのちは、増収増益を重ね、1999年、2000年のフリースブームを頂点に、減収減益となったものの、2003年を底として、徐々に業績は回復して行きました。

そして、売上高が3,839億円だった、2005年8月期に、柳井社長が掲げた目標が、『2010年売上高1兆円、経常利益率15%』でした。その結果はどうだったでしょうか?2011年8月期は、『売上高8,203億円、経常利益率13.1%』ですから、目標には達しませんでした。しかし、もし、こうした高い目標がなかったら、はるかに低い売上高実績になっていたことと思います。(中略)大事なのは、目標値から逆算して、今、何をしていなければいけないか、ということです」(32ページ)

事業規模が拡大していくと、それに従って事業のやり方も変えていかなければならないということは、多くの方が理解すると思います。ところが、ファーストリテイリングのように、明確なマイルストーンがないと、事業のやり方を変えていかなければならないという意識が低くなってしまい、その結果、同じ方法で事業を続け、事業規模も、同じ規模か、または、それよりも縮小することになるでしょう。確かに、「マイルストーン」は、進むべき地点を示すものに過ぎませんが、それが不明確なままだと、日々、漠然と活動を続けるだけになってしまい、非効率な活動になりかねません。

そこで、柳井さんは、マイルストーンを明確にすることで、役職員の足並みを揃え、自社の事業が最短で目指すべき方向に進めるようにしたのでしょう。時々、経営者の方の中には、「将来は不明確なことも多いので、目標を掲げることに意義を見出せない」と考えている方もいるようです。でも、将来を正確に予想するという観点ではなく、自らの目指すところを明確にして、役職員の足並みを揃え、事業活動を効率的にするという観点で、マイルストーンを掲げることが望ましいと言えます。

2024/1/4 No.2577

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