なんて無駄のない面白さ~「激突!」
さて、今はスピルバーグ強化期間に入りまして。
その原点である作品から。1973年公開、と言っても最初はテレビドラマだったらしい。「激突!」である。
シンプルで無駄がない構成で、十二分の怖さと面白さを表現していると思う。
いわゆる「煽り」モノということは観る前から知っていたのだが、果たしてそれで90分もどうやって持たせるのだろうと思っていた。実は単に追いかけっこだけをしているわけではなく、途中で食堂やガソリンスタンドに立ち寄ったり、他のドライバーと関わったりと、その恐怖を増幅させるような(まさしく煽るような)小話が差し込まれているのだ。
いろいろなレビュをみると、これは○○を暗喩している、という見方をしている人も少なからずあった。時代的にはアメリカンニューシネマの最後の方なので、そう見えなくもない。
事実、最後には主人公が煽りトラックを撃退するのだが、そこには安堵や歓喜はつかの間で、なぜか黄昏の場面で終わるのである。そこで表現しているのは悔恨?
こういう筋肉質な映画を若き頃に作ったというのが、後の成功につながっていくのだろう。同時期の「ジョーズ」でもそれは同じく言えることでもある。
でもこのころの作品群のおかげで、特撮・SFもの専門、というイメージがついて回って、いわゆる賞レースには無縁な時期が続いてしまうのは、本人としては悔しかったことだろう。それで後期には歴史ものにも多く挑戦していくことになるのかな。それはそれで楽しみではあるけど。