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美術せんにんの記録

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言われてみればセザンヌらしさも~山種美術館「奥村土牛」

言われてみればセザンヌらしさも~山種美術館「奥村土牛」



山種美術館ファンであれば誰もがその作品を目にしたことのある奥村土牛。
今回彼の個展であったが、改めてみるととても新鮮な発見があった。

彼は若いころ当時の師匠に買い与えられたセザンヌの画集を見て、強く影響を受けたという。
そう言われてみると、特に若いころの作品に色濃く表れているように見えた。

「雨趣」(1928年・39歳)
建物と緑とが、とても堅牢に画面を構築している。雨を主題としていること

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電線は景観のジャマものか~練馬区立美術館「電線絵画展」

電線は景観のジャマものか~練馬区立美術館「電線絵画展」



山手線などの大きい駅周辺はそうでもないが、今でも少し住宅街に入ったりすると電柱や電線が多いことに気がつく。狭い路地などでは歩行者や車の通行の妨げにもなって、早く”地中化”しないものかと思ったりもする。

このように電柱はたいそう忌み嫌われている。
進んでいないものの、日本では国を挙げて地中化を推進すべく、2016年には「無電柱化の推進に関する法律」まで制定されているのだ。この法律の目的が第一条

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喧騒を離れ”パリ”へ~Bunkamuraザ・ミュージアム「写真家ドアノー/音楽/パリ」

喧騒を離れ”パリ”へ~Bunkamuraザ・ミュージアム「写真家ドアノー/音楽/パリ」

ロベール・ドアノーの写真展に行ってきた。
ドアノーと言えばやはりパリ。第二次大戦時のナチス占領下ら解放された歓喜に湧く時代から現代に至るまで、市井の人々の様々な表情を撮り続けてきた。

会場は1940年代のパリの空気ひとたび足を踏み入れると往年のパリに来たかのよう。
戦前戦後芸術家たちに変らず愛されたパリであったが、戦火を潜り抜けた花の都は、「狂乱のパリ」のようなはじけるようなエネルギーは影を潜め

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筆さばき、まさに融通無碍~東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」

筆さばき、まさに融通無碍~東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」

もはや異端の絵師とは言い難いほど、近年展覧会の機会が増えた河鍋暁斎。
今回はなんとその下絵のみの展覧会という。
「え、完成品じゃないの?」
そんな声も聞こえてきそうだが。。
東京ステーションギャラリーで開催の「河鍋暁斎の底力」

幕末から明治にかけての絵師であるが、そのバックボーンは日本画にある暁斎。しかしこれらの下絵を見てまず感嘆したのは、そのデッサン力の高さである。洋画の教育がまだ確立していな

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